学問の道しるべ(小学生英語)

 帰国子女でない限り、大半の子供にとって初めて英語を学び始めるのは小学生時代だと思います。私が小学生だった頃は、まったく英語という物に触れることなく小学6年間を過ごそうと思えばそれも可能でしたが、現在は小学校でも公に英語の授業が組み込まれていますから、英語という物をまったく知らずに中学生になるというのは不可能です。

 …で、小学校での英語の授業というのは何をやっているかというと、基本的には「英語に慣れる」「英語に楽しむ」というのが目標とされていますから、本格的な文法(多少はやる学校もあるようですが)はやらないはずです。発音、簡単な会話、ゲームを中心とした内容が実施され、おそらくこれは今後もそう大きくは変わらないでしょう。文部科学省からのテキストも配られていますから、学校の裁量でそれほど大きく逸脱していくこともないはずです。

           

 まぁそれはそれでいいのですが、この時期にもし保護者の方が「将来(中学入学後)のために」英語を学ばせておきたいと思うのであれば、やはり座学もやらせておかなくてはなりません。「習うより慣れよ」ということわざは、常時英語に触れている状態にある子供にはあてはまりますが、週に何時間かの学習環境であれば実際に「慣れる」というのは無理な話です。かと言って、じゃぁ常時英語を使うような環境に入れようなんて思わないで下さいよ。この時期にそんなことをすれば、逆に日本語を操れなくなってしまいますから。現実には、「外国語に慣れる」というのは大学生くらいになってから留学しても充分できます。

 言語を学ぶことには、何だかんだと言っても絶対に「暗記」がついてきます。「小学生のうちから単語の勉強させて英語が嫌いになったらどうしよう」という懸念がよく話されますが、教育現場の人間から言わせてもらえば、小学生時代にまったく英語学習をせずに(つまり楽しい英語だけを経験して)中学校に入学すれば、確実に英語の授業にはついていけないこと請け合いです。「ゼロ」の状態から中学校に入学して、テストで8割以上をキープしたまま中学2年生になれるのは、経験的に言って10人に1人いるかいないかです。理由は簡単、「ゼロから教える」といくらうたっていても、「まったく英語を学んでいない子」を念頭に置いた授業の進め方をしている中学校の先生は非常に少ないからです。「来週、このページの単語を15個書けるようにしてきてね」と言われても、先生(大人)には簡単でしょうが初めての生徒には絶対無理です。私たちが3日でロシア語の単語を15個覚えられるかどうかを考えてみて下さい。

           

 はっきり言います。小学校6年生までに、中学校の教科書で言えば1年生2学期の途中(10月)に学ぶくらいまでの内容は学習しておきたいところです。それも中途半端ではなく完璧に。それ以上はやらなくてもいいと思います。逆に中学3年生や高校生の内容まで小学校の段階で完璧に理解できるはずがありません(私が言うのだから間違いないです)。それだったら中学校での英語のスタートをまず気分良く切らせてあげることを考えてあげたいものです。ここで「できる」と思えることができれば、あとは中学1年生の後半以降の内容は、家であれ学校であれ塾であれ、正しい環境に置いてやれば絶対にしっかりと学習するようになります。

 中学1年生の前半に学ぶ基本単語、基本文法、基本表現、これらを「話す」「聞く」偏重ではなくて、「書く」ことも含めて小学生のうちにきっちりやらせて下さい。覚えることの苦手な子供でも、この時期はまだ「速く覚える」ことを気にしなくてもいいから焦りを感じなくてすみます。また焦りを感じさせる必要もありません。覚えるのが遅い子であれば、最初は2日に1個ずつ、1ヶ月で15個でもいいんです。だんだんと必ず速く覚えられるようになりますから。中学校に入ってからではどうしても定期試験を意識することになるので「焦る→パンクする→不全感→英語が嫌い(もちろんできない)」という悪循環にはまってしまいます。それを感じないうちに、とにかく英語の基本を学ばせてあげて下さい。

 ちなみに中学校の教科書は(改定期を除いて)、書店で尋ねれば一般の方でも取り寄せてもらえます。それほど高価でもありません(1000円以下で手に入ります)。

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