学問の道しるべ(小学生国語)
いきなり妙な事を言うようですが、私は小学校での国語のテストの点数(成績)はあまり「国語力」を示していないと思っています。これは中学校も同じです。小学校や中学校の国語で扱う文章は、すべて常識的(または感動的)な題材ばかりです。少しでもゆがんだ、あるいは妙なイデオロギーを含んだ文章は出てこないはずだし、だから健全な知識・常識を持ってさえいれば、文章なんか多少読めなくても正答が導けてしまうわけです。例えば「文章の内容とあうものを選びなさい」という設問があったとして、「戦争に賛成」とか「努力なんて無駄」とか、あるいは「家族の死なんて悲しくない」「いじめ礼賛」なんていう内容は絶対に解答にはならないわけです。ちなみに高校の国語の題材はそう簡単にはいきません。突拍子もないことが書かれている文章も登場するので、丹念に論旨をたどっていかないと点数がとれない仕組みになっているのです(詳しくは高校生国語のページで)。
よって小学校での国語の成績がいいということは、とにかく常識的な考え方や知識を持っている(または、持っていると見せかけることができる)ということにはなります。小学校の国語の成績がいい子はおそらく先生へのウケもいい子でしょう。これはこれで国語力とは別に「世渡り」としては大事な事だと思いますが、でもそれだけでご家族の方は「うちの子には国語力(読解力)がある」と判断してしまわないようにして下さい。
それでは本物の読解力を育てるにはどうしたらいいか? これには3つの勉強法が必要だと思います。
まず1つ目は本を読ませること。これは絶対に必要です。題材としてはストーリーのはっきりとした小説か(子供が嫌がらないようであれば)ちょっとした説明文がいいでしょう(私は小学生の頃、「マガーク探偵団」「怪人二十面相」といった推理物を好んで読んでいました)。そしてここがポイントなのですが、読み終わった後でご家族の方が「どのような話だったか」を必ず聞いてあげてください。「誰々が何々した」という事実だけを答えさせれば充分です。学校のテストのように「この人の心情は?」なんて質問は必要ありません(前段落で述べたようにこのタイプの質問には常識力だけで答えが出てしまうからです)。またこれは「聞くだけ」にとどめておいて下さい。文章の練習だとか言って「書かせて」しまうと、段々と負担になってしまい続かなくなります。
読書の次は漢字です。これはもう、泣くまでやらせて下さい。近頃の学校の先生には温度差があります。本当に厳しく丁寧にやってくれる先生もいますが、やる気のない先生は本当にやってくれません。また最近は、追試や居残りをさせると「体罰だ」とか言って怒鳴り込んできたり訴えたりするバカ親もいるので、先生としてもあまり徹底できないという現実もあるようです。でも漢字力は語彙力にも関わってきます。例えば「朱書」と言ったら、仮にその言葉を知らなくても「赤い字で書く」ということが想像できますよね。これがすなわち、漢字による語彙力、英語にはない日本語特有の語彙力でもあります。
くり返します。漢字は99%ではダメです。完璧になるまでやらせて下さい。そのためには、ご家族の方も一緒に勉強してあげてほしいです。
もう1つ、これは小学校の授業内では正式には扱いませんが、「ことばのきまり」、つまり「口語文法」をぜひ小学生のうちにマスターさせてあげておいて下さい。動詞の活用とか、品詞の種類や識別、あるいは敬語表現などです。これらは小学校5〜6年生くらいになれば十分理解できるはずです。中学校に入ると教科数が増え、部活動も始まり、なかなかゆっくりと系統立てて学ぶ時間がとれません。口語文法はイッキに学ばないと全体像がつかめなくなって挫折してしまうものです。そんなわけで、口語文法は小学校高学年でマスターさせておきたいということになります。
ちなみに「口語文法なんて何のために学ばせるの?」とお思いの方も見えるかも知れません。確かに日本語が母国語である子供にとっては学習する意味がないように思われがちですが、これは高校生になって英語や古文を学ぶ時に絶対に必要となります。日本語ができるからといって日本語の口語文法を学ばなくてすむということにはならないのです。
算数・英語に比べてやや軽視されがちな国語という教科。小学校のうちにまず上の3つだけはしっかり完成させておくといいでしょう。