学問の道しるべ(高校生英語)
はっきり言って、中学までの英語がただの「お遊び」だったんじゃないかと思えるほど、高校の英語は内容が膨大です。覚えることも、理解することも、両方とも。ただ、決して「難しい」とは言いません。単に「量が膨大」なのです。
高校の英語が中学校までの英語と一番異なる点は、ただ教科書だけを丁寧に丁寧にこなしていれば充分というわけではない、ということでしょうか。公立高校の入試問題には、教科書に載っていない事項(単語・熟語・文法を含めて)は絶対に出題されません。しかし大学入試は、まったく違います。単語数・熟語数・文法・構文、すべてにおいて自分でどんどん参考書を買って身につけていかないと、入試どころか模擬試験にも対応できません。
もちろんこれは「教科書をおざなりにしていい」ということでは決してありません。教科書はさすが教科書。内容はしっかりと吟味され、系統立てて編集されているなぁと、私も高校教諭時代に感心したことがあります。だから定期試験で範囲になった単元は、しっかりと勉強する必要はあります。やり方は簡単。新出単語・熟語を覚え、英文を見て全文が和訳できれば充分です。和訳暗記になってしまっても一向に構いませんが、必ず英文の構造を理解した上で和訳を暗記してください。日本語の暗誦大会になってしまっては意味はありません。
さてでは、もっとも重要な「大学入試に向けた英語の実力の付け方」の話に移ります。まず、英語力には大きく分けて次の5つがあるということを覚えてください。1つずつ説明しますから。
@ 英単語力
A 英熟語力
B 文法力
C 構文力
D 読解テクニック
順番にいきましょう。。まず@の英単語力。要は語彙数をいかにして増やすかということです。英語に自信がある人は別ですが、まず普通の人は「英語→日本語」の勉強をしてほしいです。いきなり「日本語→英語」の問題や、派生語、反意語まで大量に手を出すとなかなか先に進まずイヤになってしまいます。私もそうでしたから分かります。まずは英単語を見て意味を言えればいい、そう考えればかなり負担が減り、学習も先に進んでいきます(もちろん一通りそれが終わった後には、単語のスペルを書けるようにするという学習も待ちかまえていますが…)。その際に使う教材は、市販の(または学校で購入した)単語専用教材がいいでしょう。見出し語は3,000くらいが妥当かな。本来は例文がたくさん載っている物を買って暗誦までしたいところですが、そこまでは欲張りというもの。単語が羅列してあるだけのものでも構いません(ここが次に話す熟語との違いです)。ただし、その配列がABC順になっているものはお薦めしません。そのうちに飽きてしまいます。そして残るのは「aで始まる単語力だけ身に付いている」という事実のみです。やはり配列はテーマ別(建物・心理・動物、など)にしてあるものを買いましょう!
次にAの熟語力。これも市販の熟語教材を使いたいものですが、経験的に言って見出し語が1,000くらいあれば充分でしょう。そして配列はできれば「形」でシリーズになっている物がいい。例えば「be
+ 形容詞 + of」ばかりでまとめてあったり、「動詞+副詞」ばかりでまとめてあったりするような。形が似ている熟語は意味やテーマが似ていることも多いですから、かなり覚えやすいはずです。さらに(ここが単語力とは違う点なのですが)熟語は絶対に例文で覚えましょう(そのためにもいい例文が付いている教材を買いましょう)。1,000くらいの英文なら頑張れば何とか暗誦できるはずです。熟語は使えなければ意味がありません。例えばlook
forward to(楽しみにしている)という熟語を覚えても、後ろに動詞の原形が来るのか〜ingが来るのか分からなければ使えないのです。この例文を
I'm looking forward to hearing from you soon.
と覚えておけば(実際私も「熟語ターゲット1,000」という教材に載っているこの例文で覚えています)、toの後に〜ingが来ることも分かるし、hear
from (〜から便りがある)という別の熟語まで確認できます。今の私の英語力は、かつて暗誦したたくさんの英文に支えられています。そして今現在も、毎日10文ずつ暗誦例文を増やしています。ま、今は老化防止の意味合いもあるんですけど。
Bの文法力はまさに英文法のこと。不定詞・動名詞・分詞・比較といった中学校で習ったものも高校ではさらに深い内容まで学習しますし、仮定法・話法など、高校で初めて学ぶ内容もいっぱいあります。しかしこの「文法」というのはどちらかというと「英語学」という研究対象であって、実用英語力にはあまりなじまないというのが現実のようです。英検でもセンター試験でも、文法の力を見る問題は年々減ってきています(一部、難関私立大と言われる大学入試では今でも些末な文法事項が問われているようですが…)。文法好きな私としては残念ですが、確かに些末な文法事項をたくさん身につけてもそれは自己満足に終わってしまい、結局英語の成績が伸び悩むということになるようです。それでも、論理的に考えることが大好きな理系の生徒は(私もですが)、文法を極めてみるのも面白いでしょう。
Cの構文力。これは言い換えると「英作文力」とも言えます。Aで紹介した英文暗誦の続編と言うことになるのでしょうが、例えば次の日本語を英語に直すことを考えてみて下さい。
『彼女の発言から判断すると、彼は非常に残酷なやつということになるね。』
さぁどうしますか。主語はもちろんheですか? 「〜から判断すると」と言う熟語「Judging from 〜」を使いますか? それとも「彼女の発言」を主語にしますか? いや私ならこうするかも知れません。
It follows from what she said that he is very cruel.
つまりこのようにいろいろな英語構文がたくさん頭に思い浮かぶかどうか、ということです。結局は頭にストックしてある例文を引っ張り出してきて、それをつなぎ合わせたり、単語だけ取り替えたりすることになります。このCについては、さまざまな構造の英文をたくさん暗誦することによりクリアできるものと思ってください。
最後にDの読解テクニック。何だかんだと言っても、英語の試験は長文が読めるかどうかで得点力が決まります。単語も熟語も、このために身につけるようなものです。ただし、複雑な構造の長い長い英文は修飾語がいっぱい付いていますから、単語・熟語力だけでフィーリング読みしていてもなかなか文意がつかめません。そこで登場するのがこの「読解テクニック」です。またまた手前味噌になりますが、この読解テクニック(我流ですけどね)を私以上に分かりやすく、実用的に教えている英語教師は世の中にそれほど多くはないのではないかと思います。それは私自身が高校生時代に英文を読みとるのに苦労した経験があるから、そしてそれを何とかして克服したいと思って必死で研究してきたからだと思っているのですが(私が得意な数学ではなく英語の教員になろうと決意した理由はここにあります)、要は突き詰めていけば、一文を長く長くしてしまっている修飾語句をどのようにして見分けてカットしていくか、ということに尽きます。このテクニックはなかなか市販の教材には載っていないはずです。本来は皆さんも自分自身で試行錯誤しながらそのテクニックを発見してほしいと思いますが、そんな時間もとれないと言う方は、ぜひ私の前期講座「納得型に捧げる英文読解(60分×10回)」を聞きに来て下さい。宣伝のようになってしまいましたが、必ずや受講料以上のものを授けられる講座だと思いますので…。
大学受験の英語は@〜Dまでのどの要素が欠けても厳しいものとなります。最初に私が「量が膨大」と言った理由が分かっていただけたと思いますが、英語は大学受験の命とも言える教科です。諦めずに、投げ出さずに頑張ってほしいものです。