第152回 境港(鳥取県境港市)→松江(島根県松江市)

平成28年7月13日 曇りのち雨 26.1q 6時間20分

島があるのに「しまねぇ」県

 40歳は「不惑」と言いますが、今回のウォーキングは本当に迷いました。とにかく「行くか?退くか?」。朝の天気図で確認すると「中国地方はおおむね大雨」とのこと。しかし! 天気レーダーを見ると、僕が歩く予定の地域(赤い丸印)だけ降ってない! 晴れ男降臨か!?

      

 ということで、とりあえず、宿泊地の米子から、出発予定地の境港まで電車で行きました。ダメならダメで境港で妖怪たちと遊ぼう…。

 …で、境港駅はやっぱり降っていない。それどころか、軽く晴れ間がのぞくほどの状態。いつもなら何の迷いもなくゴーサイン! のはずです。少々の雨や風なんてこわくないさ、と。しかし、今回は…。

 鳥取県と島根県の県境に江島大橋という大きな橋があります。CMで有名になった、通称「ベタ踏み坂」。ここ、ものすごい高いうえに、ものすごい風にあおられる。天気のいい日でも超コワいのに、ここで悪天候にはばまれ、雨&風&雷、ってなったら…。もうしゃがみこんで110番に助けを呼ぶしかないかも。

 でも、そこまではスタートの境港から約3q。1時間もかからないはずだし、それまでは天気はもつだろう…。という予測のもと、結局歩き出すことになりました。水木しげる先生と鬼太郎たち(写真左)、そして河童の三平たち(写真右)に見送られながら、第152回の旅、とにかくスタート!

    

 予想に違わず、30分ほどで、江島大橋の鳥取県側に到着しました(写真左)。第148回の旅で兵庫県から踏み込んだ鳥取県ともこれでお別れです。橋の向こうには大根島。そしてそこを経由して島根県の県庁所在地、松江が待っています(写真右)。

    

 大丈夫、雨も降らないし、風もまったくない。もちろん雷も。こんな危険な橋の上で、高所恐怖症の僕が、傘さしながら、よろめきながら、おへそを隠しながら歩くなんて、考えただけでも恐ろしいです。歩道はあるんですが、結構狭いし、欄干も低い。足元を見下ろすことはとてもじゃないけどできませんでした。なるべく遠くを見て歩こう。我ながら、こんなコースを選択したことを後悔してきました。鳥取県から島根県に入るなんて、他にも選択肢はいくらでもあったのに…。

 それでも橋のもっとも高い地点で、何とかスマホを取り出し、正面に見える中海と島根県を撮りました(写真左)。そして調子に乗って、振り返って、今まで歩いてきた鳥取県側も。こんな手も足も震えた状態で、帽子をかぶった伯耆大山の姿がうまく撮影できたことは奇跡です(写真右)。

    

 ほどなく橋を渡り切ると、ここは島根県。47番目に知名度が高い県です(笑)。これで僕の徒歩旅では21個目の都府県を踏んだことになりました。もう少しで半分だ!

          

 標識には松江市、と書いてありますが、実はここは「本土」ではありません。中海に浮かぶ大根島という島です。「島根(しまねぇ)県」と言うわりには、いきなり島じゃん(笑)! ま、「山梨(山無し)県」にも山はあるし…。苗字を先に呼んでも「長崎(名が先)県」って言うし…。

 火山によりできたこの島は玄武岩質でできており、道路のあちこちにも玄武岩が露出しています。僕はこの島をぐるりと半周するように歩くつもりで(下の地図の線参照)、ずっと右の写真のような素敵な海岸線を歩けるはずでした。しかし…

    

 急に冷たい風が吹き出してきたかと思うと、あっという間に霧が立ち込め、殴りつけるような雨。傘をさすも、一生懸命に押さえないと傘ごとパラシュートのように舞い上がってしまいそうなほどの強風。ズボンの裾はずぶ濡れで変色(下の写真)。しかもさっきまで優しく微笑んでいた中海は急に荒れだし、水位が上がり…。写真を撮る余裕すらない!

     

 そうだ! ここは本土じゃなくて島じゃん! やばいんじゃないの? 沈んじゃうことはないとしても、早く脱出しなきゃ!! 先ほどのマップで見ると、左端の方、これが下の写真の堤防になります。ここ、大丈夫かな? 歩道はないし、大型トラック来るし、海面は道路ギリギリまで来てるし。もしかして僕って今、命の危険にさらされてる!?

     

 まぁ、今こうして旅日記を更新してるわけだから、命を落としてはないんだけど、このコースだけはもう二度と歩きません。ベタ踏み坂といい、この大根島は僕の旅の中ではもっとも怖い島になりました。島から脱出した後、全身ぐっしょり濡れていたのは、雨と海水と、そして普通の汗と冷汗と、さらに涙と、なんだかいろんな液体が混じり合っていた気がします…。

 さて、「本土」に入ると、急に雨がやみ、今度は太陽が顔を出す。当然ものすごい湿気。この日の松江市内は気温31℃、湿度92%くらいだったそうで、こんな中で6時間以上も歩き続けても平気な僕は、本当に強い男なのかもしれません。あるいはただの「向こう見ず」か? 「前厄」なんてはね飛ばしてしまえ!

 島を脱出して1時間。ようやく街並みが目に入るようになってきました。相変わらず川が並走していて水面も足元にあるのですが、「島じゃない」ってだけで安心感があります(本当は注意しなきゃいけないんですがね)。向こうに見えるのは「松江だんだん道路」という道路の「縁結び大橋」だそうです。出雲大社にあやかった命名でしょうかね!?

 そしてこの水田が広がる大橋川のほとりが、スタートからの3750km地点となりました。

    

 ここで晴れてきたのをいいことに、また久々に目にしたコンビニ(ベタ踏み坂を渡り切った所にあったコンビニ以来ですから4時間ぶり)が嬉しくて、スーパーカップバニラを調達。ようやく体が本当に生き返りました。

 さぁあとひと踏ん張り。予定通り、松江駅に午後3時50分、到着しました。晴れたり、曇ったり、雨に濡れたり。また海あり、橋あり、島あり、川あり、水田あり。楽しくて、怖くて、中身の濃い6時間20分でした。

          

 歩き出した鳥取県境港市は、妖怪たちの生みの親、水木しげる先生の出身の町でしたが、ゴールとなった島根県松江市は、「怪談」で有名な小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が若き日を過ごした町です。妖怪の町から幽霊の町へ、となった今回の旅。まぁ命を落とさなかっただけでも良かったとしましょう(笑)←本当は笑い事じゃないんですけどね。

 次回は松江を発ってさらに西へ。宍道湖を眺めながら出雲大社へ向かいます。島根県は鳥取県よりもさらに横に長い県です。山口県に入れるのはいつになるのやら…。  


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