第104回 杉原(岐阜県飛騨市)→楡原(富山県富山市)

平成17年11月1日 晴れ 16.2q 4時間20分

山が燃え、川面も燃える神通峡

 ず〜〜っと歩いてきた岐阜県も、今回のウォーキングで最後になります。南北に長い岐阜県のほぼ最南端から始まり、最北端まで10回かけてやって来ました。久しぶりの県境越えを体験します。

 今回も杉原駅に車を停め、駅で「小」をして出発。…と思ったのですが、まだこの駅は列車不通のため使われておらず、したがってトイレも閉鎖されておりました。仕方なく野外で用事を済まさせてもらいました…。

 歩き始めて1時間弱で長いトンネルに入ります。これが岐阜県と富山県の県境をなす飛越トンネルです。近年新しく作られたバイパストンネルで、歩道もしっかりしていて非常に歩きやすいのですが、やはりと言うべきか歩いている人は皆無です。まぁ山深い県境のトンネルですから当たり前ですね。

 ほんのちょっとだけトンネルから出ると、地形の関係で一瞬、岐阜県飛騨市に戻ります。しかしそれも束の間、すぐにまた越路トンネルが口を開け、これで本当の本当に岐阜県とはお別れ。富山県富山市に突入します。これで踏破した都道府県は愛知・岐阜・三重・滋賀・静岡・山梨・長野・奈良・京都についで10県目となりました。ようやく全国の5分の1を越えました。

 こちらのトンネルも先ほどのトンネルと同様に、非常に歩きやすい。距離はそこそこありますが、トンネルを抜ける頃になってもまだ全然疲れてはいませんでした。そしてトンネルの先には小さな小さな集落があり、富山県に入っての「第一村人」に出会いました。農作業にいそしんでいたその老婆は僕を見ると「あれ? ☆※さんかぇ? ☆※さんだよねぇ? あれ、まぁ、珍しい!!」と言いながらこちらに近付いてきました。

 「人違いですよ」と言って顔を見せると、「な〜〜んだ、そうだったのかぁ。そうだよねぇ」とつぶやきながら、また農作業に戻って行かれました。僕は一体誰に(どんな人に)間違えられたんでしょう??

 この集落から急な坂道を一気に下りきると、第102回の旅でいったんお別れした国道41号線と再合流します。この間ずっと大型車両はほとんど国道41号線に回っていましたから、ここまでは結構安全に歩いてこられました。ここからはまたトラックと共存しながらのウォーキングとなります。しかもしばらくは歩道もありません…。

 この合流点にはJR高山本線の猪谷(いのたに)駅があります。前年の台風被害で列車が不通になっていた区間もこの猪谷駅までとなり、ここから先の富山駅まではちゃんと列車が走っています。そしてこの駅は閑散とした雰囲気の中にたたずむ小駅であるのにも関わらず、JR東海とJR西日本との境界駅になっています(駅自体はJR西日本が管理しています)。よって特急列車を除いて、すべての列車がこの駅で乗換となります。しかし列車自体が非常に少ないため、時刻表はこんな感じ。特に高山方面へ走るJR東海の普通列車は本当に少ないことが分かってもらえると思います。最終列車は夜8時台ですからね…。

   

 かつてはこの猪谷駅から飛騨神岡を経由して奥飛騨温泉口までまで、神岡鉄道というローカル私鉄が走っていました。秘境駅にランクインされるような駅も抱える(僕にとっては)素敵な路線だったのですが、残念ながら平成18年限りで廃止されてしまいました。まぁもともと神岡鉱山からの硫酸を輸送するというのが目的の路線でしたから時代に合わなくなっていたのかも知れませんが、誠に惜しい限りです。猪谷駅も時間帯によってはJR西日本、JR東海、神岡鉄道と3社の列車がそろって停車するにぎわいを見せていましたが、それも今は昔の話。現在はひっそりとしています。JR両社の境界駅であるため乗務員の待機室はありますが、旅客上は無人駅という扱いになっています。

   

 実はこの駅は僕の大好きな駅ベスト3に入ります。それはこの駅を包み込む周辺のすべての要素が大好きだから。西側には緑に染まる高い高い山々。南には「ここから飛騨路が始まるぞ」と言わんばかりの雰囲気がにじみ出たトンネルが口を開けています。東側にはひなびた小さな商店街があり、一家で経営しているような小さな酒屋さんが並んでいます(いつも乗換時間にここでお酒を調達します)。その酒屋さんの前の道を下っていくと右手に小さな猪谷関所資料館があり、正面には神通峡谷。かつて昭和の高度経済成長期には流域にイタイイタイ病が発生し、公害病の発生地として有名になってしまった神通川ですが、今ではそのような汚名も返上し(認定患者さんは現在でも百名以上みえます)、素晴らしい峡谷美を見せてくれます。この日も11月、晩秋の紅葉真っ盛りの季節で、思わず歩くのを忘れてうっとりと眺めてしまいました。川面も静かで山々の燃える「赤」が水面にも生え、しばらくここでたたずんでいたい気持ちになりました。

 そんな風景美とは関係なく、傍らをトラックがビュンビュン走り去っていきます。国土交通省に物申します。この道路は絶対に歩道が必要です。早急に対応して下さい(って民衆の一意見が国に届く訳ないか…)。それにしてもトラック多いなぁ…。

 歩きながらでも神通峡はしばらく楽しめます。この辺りは旧細入(ほそいり)町(現在は富山市)と呼ばれる町で、国道沿いには「道の駅、細入」があります。ここは結構にぎわっている道の駅で、売店等も充実しており、飛騨路を運転してきたドライバー達の休息の場になっています。僕のウォーキングもここで飲み物を補給し、あと少し、次の楡原駅まで頑張りました。

 猪谷駅からは、神通峡とは反対側の進行方向左手にずっとJR高山本線の線路が併走しています。前述の通りもうこの区間は台風の被害はなく、列車は「不通」ではなく「普通」に運行されているはずなのですが、さっきから列車の姿をまったく見かけない。「本線」とは言ってもローカル線だから本数が少ないとは思うけれども、かれこれもう2時間くらい列車が走っていないとなると「本当に運行されているのか?」と疑いたくなってしまいます。

 結局一本も列車を見かけることなく楡原駅に到着。大丈夫、列車はちゃんと運行されていました。時刻表を見ると、次の猪谷行き列車は40分後、この3時間近く列車はないのです。やはり日本のローカル線は本当に偉大だ!

 楡原駅は旧細入町役場の隣にあり、猪谷駅よりも町の中心部にあることをうかがわせます。駅自体は細い階段を結構上っていった所にあるのですが、駅の入り口にはちょっとした広場と、鯉の泳ぐきれいな池があり庭園風になっていて、待ち時間もそれほど長く感じさせませんでした。秘境駅ではありませんが、隠れた「素敵な駅」だと思います。この日は楡原駅から猪谷駅まで1区間だけ列車に揺られ、猪谷駅から車の置いてある杉原駅までやはり1区間だけ列車代行バスのお世話になって、無事に旅を終了しました。

 次回は雪まだ残る北アルプスをバックに、富山平野を進んで富山市に到着します。



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