第107回 滑川(富山県滑川市)→黒部(富山県黒部市)
平成19年3月19日 晴れ時々曇り 18.4q 4時間50分
ウミネコは「ニャー」と鳴く!?
北陸日本海は、季節によって見せる姿をまったく変えてしまいます。暑い夏は海水浴客でにぎわう「アツい海」となり、寒い冬には恋に破れた女性を包み込む「キビしい海」になり変わります。そして3月の日本海は、寒い冬を越えて暖かくなり始める「雪どけ」の優しい表情をしています。
今回も前回に続いて日本海の景色を堪能すべく、県道から一本はずれて日本海に面したサイクリングロードを歩きました。海岸沿いではすでに梅が咲き、春の息吹を感じさせてくれます。そして陸の方に目をやると、それとは対照的に雪をかぶったままの立山がモノクロな「冬」を醸し出しています。本当に素晴らしいこのコントラスト!!
早月川を渡ると、滑川市から魚津市に入ります。前回の旅日記で蜃気楼を観測できたことを紹介しましたが、本来もっとも有名な蜃気楼の街はこちら魚津市です。市内のあちこちでも「蜃気楼の見える街、魚津」と書かれた看板を目にします。
魚津市には、知る人ぞ知る「三大奇観」があります。そのうちの1つはもちろん蜃気楼。雪どけ水の冷たい海水と、春になって暖まってきた空気との境目で起こる光の屈折が、もっとも適した角度で起こるのがこの魚津市だということらしいです。地元の人には「蜃気楼なんて別にな〜んも珍しくない」って言う人もいるくらいです。
余談ですが、魚津水族館の横に「ミラージュランド(ミラージュとは英語で蜃気楼のこと)」という遊園地があり、観覧車が回っていました。…が、ほとんど人はいない。ただただ寂しく観覧車が回り続け、園内には犬を散歩させる近所の老人のみ。園内にはテーマパークらしく何だか音楽も流れていましたが、それすらとても寂しげに聞こえてきました…。
そして魚津の奇観の2つ目はホタルイカ。夜に日本海の海岸に立つと、その瞬間、全身に鳥肌が立ちます。最初に見たときは漁に出ている船の漁り火かと思いましたよ…。海の中に光る無数のたくさんの光は、まさに「海の中のホタル」です!
3つ目は埋没林。これは聞いたことがない人も多いかと思いますが、魚津港改修の際に見つかった海底のスギ林です。付近を流れる片貝川の氾濫によって海の底に沈んでしまったと言われていますが、深海に大木の幹が眠っている様子は「すごい」という領域を通り越して何だか「薄気味悪い」。今はその一部が魚津埋没林資料館という展示館に飾られていて間近で観察することもできますから、こちらに行った時はぜひ訪ねてみて下さい。庭園には鯉の泳ぐ池もあってしばらく遊べるし、資料館の横には「蜃気楼の丘」という蜃気楼観測の場所も併設されています。
この日は海岸沿いに大量のウミネコが日光浴をしていて、それを左手に眺めながらのウォーキングとなりました。それにしても初めて知ったことですが、ウミネコって本当に「ニャー」と鳴くんですね。鳥が「ニャー」って鳴いていると、とても不思議です。でも海岸で遊ぶウミネコは本当にかわいかった…。
先述の埋没林資料館の池で鯉に餌をやりながら、僕も昼食のコンビニおにぎりをかじり、ウォーキングも後半に突入。この辺りから風が急に強くなり、前半ののどかなウォーキングとは違って寒さに震える旅となりました。
片貝川を落合橋で渡ると、魚津市からさらに黒部市に入ります。「黒部」というと多くの人は「黒部ダム」を思い浮かべると思いますが(僕もかつてはそうでした)、黒部市は海沿いの街であって、ダムはここにはありません(実際は立山町にあります)。やはり間違える人が多いようで、観光シーズンになると黒部インターチェンジの出口に「黒部ダムへは黒部インターで下りないでください」という看板も立てられるらしいです(実際は立山インターチェンジで下りると便利です)。
黒部市ではJR北陸本線は海から少し離れた所を走っているので、黒部市に入った所から県道を内陸の方に離れ、JR黒部駅を今回のウォーキングの終着地とすべくそちらを目指しました。しかし、やはりと言うべきか、道に迷った…。
道を歩く地元のおばちゃんに道を尋ねながら、ようやく黒部駅が見えてきた時には、心身ともに疲れ果ててしまっており、寒さすら感じないほどになっていました。とにかく無事に到着できて良かった!!
この日の夜は車でこの先のコースの下見をしながら新潟県の新井市まで移動し、「道の駅あらい」に併設されているスーパーホテルに宿泊したのですが、夜のうちに大雪になり、翌朝は車に約15pほどの雪が積もってしまいました。ウォーキングを始めた時はあんなに暖かくゆったりと梅を眺めていたのに、春先の北陸の天気は怖いですね(ちなみに僕はタイヤチェーンを持っていないので、翌日は慎重に慎重に愛知県まで運転して戻って来ました)。
次回は朝日町の泊駅まで、富山平野も東端に到着し、天険親不知を控えた新潟県との県境に近付きます。