第108回 黒部(富山県黒部市)→泊(富山県下新川郡朝日町)
平成19年5月3日 快晴 16.4q 4時間10分
行き「止まり」の風泊(かざとまり)
越中富山に広がる富山平野。太平洋側に比べて平野部が少ないと言われる日本海側において、比較的大きめの平野です。それでも関東平野や濃尾平野などに比べればそれほどの広さはなく、日本海と立山連峰に挟まれた「平らな部分」といった感じです。
富山市からずっと歩いてきたこの「富山の平野部」も今回の区間でいったん区切りをつけます。いわば、「最後の平野部ウォーキング」ということになるでしょう。
出発地の黒部駅はそれほど大きな駅ではありませんが、駅前通には市役所もあり、黒部電鉄も走っていて、朝方には通学・通勤の人々でにぎわっています。ジャージ姿で闊歩する僕は何だか場違いな気がしますが、まぁこれはいつものこと。気にしていても仕方がない。
今回は海沿いではなく、国道8号線にすぐに合流し、海ににおいのしない平野の真ん中を大型トラックとともに歩きます。先述のようにこの辺りは平野部の最東端に近くなり、はるか右手に横たわっていた立山連峰・北アルプスも徐々に日本海に迫ってきています。つまり平野の幅がだんだんと狭くなってきているということです。よって枝分かれしていた県道・市道も、次々と国道に合流・吸収されていきます(最終的には富山・新潟県境辺りで、この国道8号線一本だけになってしまいます)。
黒部大橋で黒部川を渡ると、黒部市から下新川郡入善(にゅうぜん)町に入ります。この黒部川の上流に黒部ダムがあるのです。第100回の旅で岐阜県大野郡清見村から高山市に入って以来、飛騨市・富山市・滑川市・魚津市・黒部市とずっと続いてきた「市」部もここで途切れ、久しぶりに「郡」部に入ります。
入善町では再び国道もにぎわいを見せ、入善高等学校・入善警察署なども国道沿いにあります。巡回中のパトカー、部活帰りの高校生もウロウロしており、山が迫ってきていることを除けばまずまずの都市部です。大きなスーパーもちゃんとあります。
しかしこの中心部を過ぎると途端に風景は田園の広がる田舎のものとなり、右手の山は前方に回り込んできて、イメージとしては「平野が閉ざされる」感じがします。ここら辺りからが下新川郡朝日町。富山県の東の端に位置し、新潟県と接する自治体です。
米原から走ってきていた北陸自動車道も、長らくこの朝日インターチェンジが終点でした。また同じく米原から走ってきたJR北陸本線も、長いことここ朝日町にある泊(とまり)駅が終着でした。駅名も朝日駅ではなく、終点(行き止まり)を表す「止まり=泊」という名称になりました。現在もこの駅を終点として再び富山方面に折り返していく列車も何本か運行していて、ここから先の新潟県境を走る列車はかなり本数が少なくなっています。
ちなみにこの泊駅をモデルとした「風泊(かざとまり)」という駅が、藤子不二雄先生の漫画「笑うせぇるすまん」に登場します。都会の生活に疲れた主人公が夜行列車に乗り込みやって来た駅が、風泊駅という海辺の小さな駅。そこで街の居酒屋さんのおかみと懇意になり…、と話の続きはご自分でお読みいただくとして、イメージとしてはこの駅はそんなストーリーにまさにピッタリの駅です。
今回はこの泊駅を終着地としました。富山平野のゆったりとした旅もこれで終了。次回は北陸道最大の難所、天険親不知を越えて新潟県糸魚川に到着します。