第113回 黒姫(長野県上水内郡信濃町)→長野(長野県長野市)
平成20年8月11日 晴れ時々曇り 29.8㎞ 7時間10分
天狗だ!!
「黒姫」なんて何だか気持ち悪い名前だなぁ、と思っていたのですが、よく調べてみると非常に有名な高原なんだということが分かりました。ただ、「黒姫」という名前の由来は今のところ分かっていません。分かり次第、ここに掲載しますね(図書館とかで勉強中なのです)。
黒姫駅のある信濃町については前回野尻湖を紹介しましたが、ここの町は江戸時代の俳人、小林一茶の生誕地でもあります。ここ信濃町柏原に貧農の長男として本名、小林弥太郎は生まれました。幸せとは言えない自分の人生を自虐的によんだ句風が多い彼ですが、晩年は農家の息子らしい素朴な自然をよんだ句も多くつくりました。芭蕉や蕪村とは少し違って、「お馬」「やせがえる」など町人達の使う言葉をそのまま使っているところが一茶の句の特徴です。駅から数分のところに一茶記念館もあります。
8月、真夏の早朝。帽子をかぶり、首にタオルを巻いて完全防備で黒姫駅を出発。駅自体は視界のひらけた所にあるのですが、国道18号線に戻るとすぐにまた両側を高い木立に挟まれます。店がほとんど見えなくなってしまったので、1時間ほど歩いたところで「このまま行くと朝ご飯を食いっぱぐれそうだ」という思いにかられ、たまたまひょっこりと顔を出したトラック野郎たち御用達の定食屋に入りました。朝からアツ~い豚汁定食を食し、汗だくだくになりながら再び真夏の信州ウォークを再開しました。
いったん信越本線は左手の方に遠ざかり、国道は山深い様相になります。右手には飯綱山がそびえ立ち、黒姫山も見えなくなってしまいました。国道も時々は車が通るものの、結構交通量は少なめです。
飯綱山は天狗が生息しています。…と言ってもまぁもちろん「伝説」なんですが、確かにここなら天狗がいてもおかしくないなぁ。しばし右手の山々を見つめながらどこかの木の上に天狗が座っていないか探してみましたが、とりあえずこの日は天狗は見かけませんでした。あまりに暑い日なので冷房の効いた部屋で涼んでいるんですかね…。
右手の飯綱山が途切れると、国道の眺望もパッとひらけます。高いところを走っている国道なので、はるか眼下に牟礼町の田園風景がきれいに広がります。北国街道の中でも隠れた景勝地かも知れません。真夏であるだけに、余計に緑濃く、実りの田園を堪能できました。
下り坂がず~っと続くと、ようやく久しぶりに集落のにおいがしてきます。いったん国道18号線から離れ、右手へ折れる。長い長い商店街を抜けると、JR信越本線の牟礼駅です。ホームには天狗が仁王立ちし(もちろん造り物ですよ)、駅前にはタクシーも常駐しているようです。天狗は上り・下り両方のホームに造られていたそうですが、かつての大雪で一方が倒壊してしまったそうで、現在は直江津方面に向かう下りホームにしか立っていません。
直江津から付かず離れず走ってきた信越本線も、山越えを感じられる区間はこの牟礼駅までです。次の豊野駅からは野沢温泉方面から走ってくる飯山線を合流し、長野市街の善光寺平へ入ってしまいます。そこで僕のウォーキングはここから国道18号線・信越本線から少し離れ、高台を歩くことにしました。国道からはずれるとは言っても新興の団地があるので、交通量はこちらの方があるかも知れません。
高台の上は、太陽に近い分だけ(!?)さらに暑く、それでもこれまでの両側を木々に覆われたコースと比べると何だか明るい感じがします。途中「ここから長野市」という標識を見ながら、500ミリリットルの冷茶を飲み干しました。汗として水分が出ているからかお腹にどんどん水分が入っていきます。普段こんなことしたら絶対にお腹ピーですけどね…。上り坂から下り坂に差しかかると十字路に当たり、道は大きく分かれます。選択するべき道は左折か直進。下見段階では左折して豊野駅を目指すつもりでした。坂道を下りきるとすぐそこに駅があるはずです。
しかし、前方の道も目に入ってきます。こちらはまっすぐに長野駅へ向かいます。豊野駅へ向かうより少し距離は長くなりますが、あとはこの暑い夏に僕の体力が続くかどうかだけ…。正直、かなり汗もかききって疲れ始めてもいたのですが、はるか向こうに長野市街の高いビルディングが目に入ってきます。たとえ距離があっても、目的地が目に見えているのは心強い! よし、直進して長野駅に向かおう!
意外にも早く市街地に入ってきました。ファミレスやチェーンのスーパーが道ばたに登場してきて、人通りも急に増えてきました。なんだ、意外に近いじゃん。標識を見るともうすぐそこに北長野駅があるようです。長野駅まではもう1駅。あとちょっと。
しかし下見をしていない道を選んだツケはやはり出てきてしまいました。どちらが長野駅だろう…。善光寺の方に向かっていけばいいのかなと思いましたが、どうもだんだんと人の数が減っていく…。これはおかしいぞ!?
道ばたの小学生に聞くと「たぶんこっち」と、自分の思っていた方角とは全然違う方向を指さされました。愕然としながら、それでも来た道をそのまま引き返していくのも悔しいので、脇道から長野駅と「思われる」方へ入っていきました。それでもなかなか長野駅の雰囲気は感じられず…。
道路で工事している人たちにもう一度尋ねてみると「うん、方角は君の歩いている方向で間違ってはないよ。でも長野駅まで歩くの?? まだかなりあるぞ!!」という衝撃的な返事をいただきました。本当にあとどれくらいなんだろう??
すぐ先に何だか電車が走っているようで、長野電鉄長野線「桐原駅」と書いてありました。そして「長野駅まで6分。通学・通勤は長野電鉄で」とも書いてありました。電車で6分!? 歩いたらどれくらいなんだろう?? 町中なんだから電車の時速が約40㎞として、分速は40÷60で約0.66㎞(約660m)くらいかな。それで6分かかるということは660m×6分=3960m。4㎞ということは1時間弱か…。なんだ、僕にとっては何ともない距離じゃん!! よし、行ける!! いや~、計算が得意で良かった!!
まだ10㎞近くあるようなら今回はこの長野電鉄の駅を終着にしてしまおうかと思いましたが、あと4㎞、意気揚々とまた歩き始めました。JRの線路沿いに出てからはもうアッという間! この日は長野駅から徒歩1分のホテルに宿泊予定していたこともあり、最後は長野駅のコンビニに立ち寄り麦茶1リットルを買って帰るほどの余裕もありました。
長野市は長野県の県庁所在地。かなり北部にあるので愛知県民にとっては遠い存在ですが、一応隣県の県庁所在地ということになります。冬になると積雪の多い長野市も、夏は盆地のためにとても蒸し暑くなります。本当に空気が動かないなぁと感じる一日でした。こりゃ、脱水症状で天狗も出てこられないわなぁ…。
次回は千曲川に沿って、北国街道上田城下に到着します。