第114回 長野(長野県長野市)→上田(長野県上田市)
平成20年12月18日 晴れ 35.6q 8時間50分
霧の善光寺平と千曲川旅情
前回歩いたのは夏、8月。そして今回は冬、12月。この間、4ヶ月ありますが、実は一度歩きかけたことがあります。それは9月、少し涼しくなってきた初秋のことでした。曇り空の中で長野駅を出発したのですが、1時間ほど歩いたところで雨がポツポツ。どんどん本降りになってきてしまい、結局2駅目の川中島駅でストップすることになりました。これではいくらなんでも消化不良、ということで(「川中島」という地名は好きなのですが)、前回のウォーキングはなかったことにしてもう一度長野駅から歩き直すことになりました。
今回は前日に電車で長野入り。初冬の伊那路を飯田線から眺めつつ、夜に長野市に到着してウォーキングに備えました。
そして翌朝出発! 長野駅にある「すき屋」で朝食としてカレーを食べ、まだ陽の昇らない朝7時に歩き出しました。県庁所在地のビル街を出て善光寺平をのぞむ頃には太陽も出てくるだろうと期待していたのですが…なんと山の上の方から白い霧が急速に下りてきて、辺り一面を真っ白に染め上げました。橋の上から遠く眺めても、だだっ広いはずの善光寺平がもうまったく見えない。これは雪が降る兆候かな…!?
信号待ちしているときに空をフッと見上げると、すぐ目の前の空気にすら小さな水滴が浮いているのが見え(妙な言い方ですが本当に水分の動きが見えるのです)、大自然を自分の目で感じることができました。「空気中の水蒸気が飽和水蒸気量に達する」とはこういうことなのでしょう。
さて、9月に途中断念した川中島を過ぎ、交通の要所である篠ノ井に到着します。ここはかつては東京と長野・直江津を結ぶJR信越本線から、松本・塩尻方面に向かう篠ノ井線が分岐する駅だったのですが、東京方面に向かう信越本線が第三セクターの「しなの鉄道」としてJRから分離されてしまったため、今では逆にJRからしなの鉄道が分岐していくようなイメージになります。まぁいずれにせよ、松本方面と軽井沢方面との分岐点であることには変わりはありませんが。
僕のウォーキングもここからどちらに進もうかずっと迷っていました。松本方面に行くには冠着山・聖高原という山間部を越えていくことになります。これに対して軽井沢方面に向かうとなると、しばらくの間(軽井沢まで)は千曲川(ちくまがわ)沿いに盆地を歩くことができますが、軽井沢の向こうには群馬県に抜ける有名な碓氷峠(うすいとうげ)が待ちかまえています。う〜〜ん、どちらにしても険しい峠越えかぁ…。
で、どちらのルートも車で下見をした結果、軽井沢方面に進むことにしました(決めたのは前回歩いた8月頃です)。やはり最大の理由は「ずっと鉄道が併走している」ということでしょうか。もちろん碓氷峠には今は鉄道は走っていませんが、碓氷峠と言っても距離にすれば15q程度。これくらいだったら余裕で歩けるだろうと考えたわけです。
篠ノ井では1つおもしろい物を見つけました。道端にあった学習塾(チェーン店らしいです)でその名は「時習館ゼミナール」。一瞬「愛知県にある高校名のパクリか(僕の母校でもあるので)!?」と思いましたが、考えてみれば時習館という名前は孔子の論語「学びて時に之を習う…」に由来するわけですから、別にどちらがどちらをパクったも何もないんですね。
篠ノ井橋でいったん千曲川を渡ると、更埴(こうしょく)市に入ります。信越自動車道と長野自動車道が合流する更埴インター・ジャンクションを過ぎると、急に国道は狭くなり軽井沢へ向かう雰囲気が出てきます。両側を山に挟まれ、盆地とはいうものの結構閉塞感があります。千曲川は右手をゆったりと流れ続けています。そして更埴市から千曲市へ。
千曲川は、その名の通り善光寺平でぐねぐねと曲がります。だから「千曲」川。そして長野県から新潟県に入った途端にその名を「信濃川」に変えることになります。ご存じの通り、日本ではもっとも長い川です。「信濃川がもっとも長い」というより正確には「千曲川+信濃川がもっとも長い」というべきであるような気もしますが、信濃の国である長野県内で信濃川とは呼ばれていないことは何だか不思議です。調べてみると、新潟県側は「信濃の国から流れてくる川」ということで信濃川と命名したそうですが、この原理で行くと木曽川だって天竜川だって「信濃川」になる可能性があったわけで、愛知県民・静岡県民の考え方が新潟県民の考え方とかぶらなくて良かったなぁと思ってしまいます。同名の大河が何本もあったら紛らわしいですからね。
しばらく同じような風景が続き、坂城町でちょっと遅めの昼食をとり(ラーメンにしました)、道は上田市に入ります。そろそろ歩行距離も30qを超え、足にマメができ始めました。とは言ってもこのマメは、ウォーキングの時にはいつも同じ場所(足の親指の付け根)にできるので何にも気にすることなく歩き続けていたのですが、今回は歩き方がどこかおかしかったのか、気が付くといつもはできないはずの場所(中指の付け根)にもマメができてしまっていました。そして上田市街に入り始めた頃、ついにそのマメが破れて…。
マメ自体は別に痛くはないのですが、破れるとさすがに痛い! あと少し、あと少しと自分を励ましながら、ようやく上田駅に到着しました。上田はかつて上田藩があった都市で、駅近くには上田城趾もあり、夕方の時間ともあいまって素敵な静けさを醸し出していました。長野新幹線で旅をすると、上田駅の次の駅が長野駅(現時点での長野新幹線の終着駅です)ということで、今回のウォーキングは新幹線駅を1駅分歩いたということになるわけですね。
余談ですが、この日は到着するとすぐに帰りの電車がやって来て、クールダウンもしないまま乗り込んでしまいました。そして長野駅まで電車に心地よく揺れること約50分。立ち上がろうとすると「あっ、足が…!!」ということで、関節だか筋肉だかが座った形のまま固まってしまっていて、宿泊するホテルまで戻るのに自分の手で自分の足を持ち上げながら必死に歩きました。やはりやるべきことはしっかりやらなきゃね、と反省しました…。
次回は小諸・軽井沢方面に向かって、さらに千曲川とともに歩き続けます。