第124回 越谷(埼玉県越谷市)→東京日本橋(東京都中央区)
平成23年8月14日 晴れ 25.0q 6時間50分
日本の道路の基点、日本橋!
長らく続いてきた「日本海を見て江戸へ向かう旅」もとうとう完結が近づいて来ました。今から7年以上も前の日本海を見るために岐阜県から北上し始めた頃を懐かしく思い起こしながら、長旅の最後の1区間を歩き通しました。
今回は電車の時間の都合もあり出発は朝9時。真夏の太陽はすでに活発に活動を開始しており、スタートから汗だくになるのを覚悟しながら歩き出すことになりました。やっぱりというか、当たり前というか、1時間ほど歩くともうバテ気味…。越谷宿から草加宿への石標が何だか重たく見えます(ちなみに写真の「石清」とはこの前にある石屋さんの名前です)。
最初の給水を終えしばらく進むと草加市に入ります。ここの街道は「草加松原」と呼ばれ、かつての日光街道が再現されて歴史を感じさせるものになっています。ここで空が曇り始め、体感気温も少し涼しくなってきました。左手には涼しげな川が流れ、石畳にはマラソンをする地元住民の姿も見えています。
所々に交差点もあるのですが、ジョギングする人たちが信号機で足を止めなくても済むようにという配慮なのか、その度ごとに風情のある陸橋が建設されています。あまりにも風情のあるものなので僕も渡ってみました。遠くまで眺望がいいわけではないのですが、目の前に続く松原は眼下に見え、体力を余分に使ってでも上ってみて良かったなぁと思えました。
草加松原の終点に松尾芭蕉翁の像があります。草加は芭蕉が最初に泊まったと記している(ように思われる)宿場ですが、実際には芭蕉の一行はこの先の(僕の旅では前回通過してきた)春日部(旧字では粕壁)宿に泊まっています。それでも芭蕉はこの草加の松原には目を奪われたことは間違いないでしょう。現代に生きる僕でさえ、この松原のきれいに整備された様子には感動してしまったくらいですからね。
草加駅を過ぎてすぐの交差点が、スタートからの2800qポストとなりました。またまたバテてきたので2度目の給水をしました。ここではしばし腰を下ろして休息し、再び歩き出すとすぐに東京都足立区へ。これで17個目の都道府県を踏破したことになります。そして東京都に入ると…何だか急に風が吹き始めてきました。これはウォーキングには追い風だ…!
東京都は交通量が多く、恐らく車の動きによって空気が動き、ちょっとした風が起きているように感じられるのかも知れません。そしてさらにビルが多い関係もあってか日陰も多い。田園を歩くのも目を楽しませてくれますが、涼しさという点においては都心の方が歩きやすいのかも知れません。去年の今頃は群馬県の高崎市・伊勢崎市を歩いていましたが、景色は良かったものの暑くて耐えられなかったですからね…。
千住に到着すると大きな川を渡ります。ここにも芭蕉の足跡があります。「奥の細道」矢立初めの地と言われ、見送りに来た知人たちの別れに対し「行春や鳥啼魚の目は泪」と詠んだ一句が有名です。スカイツリーも目に入り始めたこの千住新橋、いよいよゴールも近くなってきました。うれしい反面、長旅が終わってしまう寂しさもひしひしとわき上がってきます。
千住で昼食をとり、日本橋まで残りは約8q。真夏の日差しは再び復活し、都内のあちこちには「氷」とかかれた風鈴がちらほらと見られるようになってきました。喫茶店に入ることはしませんでしたが、交差点のパチンコ屋の前に置いてあった涼をとるための氷に手をかざして、ほんの少し暑さをしのぎました。
ここからは「東京」といった空気も濃くなり、ジャージ姿で帽子をかぶり、首にタオルを巻いて歩いている僕の姿がだんだんと周囲から浮き上がって見えるようになってきました…。上野あたりではそれはさらに強く感じられるようになりましたが、秋葉原ではいったん浮かなくなり(理由は想像してください…!?)、首都高速による日陰に守られながらようやくこの長旅の終着地、日本橋へ到着しました。
江戸時代の五街道(東海道・中山道・甲州街道・奥州街道・日光街道)の基点となり、今も昔も7本の幹線国道の基点となっている日本橋には、道路元標が埋められています。本当はその道路元標を撮影したかったのですが、交通量の多い道路のど真ん中に埋め込んであり、近くの交番ではお巡りさんが「不審者がいないか!?」と目を光らせていましたから、残念ながらそれはできませんでした。よくよく考えてみると、ここが日本の道路の中心となっているのは徳川家康が江戸に幕府を開いたからなんですね。
ちなみに現在ここ日本橋を基点とする国道7本とは、国道1号(終点大阪)、国道4号(終点青森)、国道6号(終点仙台)、国道14号(終点千葉)、国道15号(終点横浜)、国道17号(終点新潟)、国道20号(終点塩尻)の7本です。今回までは国道4号を歩いてここまで到着し、これからは国道1号を歩くことになりそうです。
7年以上かけて日本海を眺めて江戸を目指した旅はこれで終了。次回からは東海道五十三次を忠実にたどって古都京都へ再び向かいます。こちらも長旅になるでしょう。ゴールしたばかりなのに早くも気分は弥次喜多道中。そぞろ神に取り付かれてしまいました。お楽しみに!!