第141回 三条大橋(京都府京都市)→亀岡(京都府亀岡市)
平成25年11月8日 快晴 27.6q 7時間10分
花より団子、紅葉より八ッ橋
7月に東海道の旅を終えて京都へ到着しましたが、台風や大雨の影響でその次の旅の続きがなかなかできずにいました。しかしその分いい気候になり、今回のウォーキングは当初の予定コースから少し遠回りをして、嵐山・渡月橋をまわって行くことにしました。
豊橋から始発の新幹線で京都へ着いたのが朝8時前。そこから地下鉄で三条大橋(駅名は京阪三条)まで行き、軽く朝食をとっていよいよ新たな旅の出発です。目指すは天橋立経由で鳥取へ。何回くらい、そして何年くらいかかるか分かりませんが、西へ向かってまた一歩目を踏み出していこうと思います。
まずは目の前の三条大橋を渡って鴨川の西側へ。厳密に言うとこの三条大橋が東海道の西の端なのですが、駅がその手前にあったため前回の旅では三条大橋まであと5mくらい届いていませんでした。よってこれで初めて「東海道の旅完結」となります。この擬宝珠を見るために東京日本橋からはるばる歩いてきたわけです。
地図を見るとこの三条通を西へ西へひたすら向かっていけば嵐山に行くはずなのですが、鴨川を渡るとすぐに道は歩行者天国に突入してしまいます。ウォーキングとしてはまったく問題ない(というか歩くには歩行者天国の方が楽なんですが)、マイルール「自動車の通れない道は避ける」に従って道を変更しなければなりません。そこで道を一筋北側へ移し、二条通を歩くことにしました。こういうときに平安京のように碁盤の目になっている街は分かりやすいですよね。二条通は交通量こそ多いものの歩道が広くてしっかりしているので大変歩きやすいです。この広い二条通の「間之町通」交差点が、スタートからの3,350q地点となりました。
JR二条駅で再び回り道をしましたが、それ以外は特に支障もなく、天神川から嵐電と合流します。山が眼前に迫ってきて、嵐山が近くなってきていることを実感します。太秦広隆寺の正面を過ぎ、生活道路をブラブラと歩いている秋晴れの快適な朝の京都、ここまでのウォーキングは非常に快適でした。
桂川沿いの県道に出るとはるか遠くに渡月橋が眺められ、先々月の台風による渡月橋冠水の映像が思い浮かばれてきます。大学1年生の頃に当時付き合っていた彼女と1度、教員時代に研修旅行の引率として2度、教員時代の職員旅行で1度、一人の旅行で1度、高校時代の同級生達と大人になってから1度、そして今回のウォーキングと、渡月橋には全部で7度訪れていますが、一度として水量の多い桂川は見たことがありません。この川があんなになるなんて…と思いながら紅葉が始まった嵐山と渡月橋・桂川を見つめていました。
さて今回わざわざ嵐山をまわった理由は、紅葉を眺める以外にもう1つありました。それは渡月橋の近くにあるお土産屋さんまわり。40種類近くある八ッ橋の試食が食べ放題(念のため書いておきますが、「食べ放題」というコースがあるわけではないですからね)で、一応全種類の試食をさせてもらいました。量はちょっとずつでも結構お腹はいっぱいになってしまい、結局今回のウォーキングでは昼食は食べませんでした。でもさすがにこんな無法な事はしたくないので、次回車で距離測定しに来た時には必ず購入します…。待っててください。
実は今までの6回はすべて、渡月橋を渡り終わってから再び嵯峨嵐山駅の方へ戻っていっていました。というかそのまま渡月橋の向こう側へ道が続いているとは思っていませんでした。今回は初めてその先へ歩を進めてみましたが、意外にも渡月橋を過ぎるとすぐに一般の民家が軒を連ねているのですね。松尾神社とか苔寺とか、名所が点在しているのはさすがに京都だなぁとは思いますが、それでも京都市内にもたくさんの人が普通に住んでいるんだということを忘れてしまっていました。
道は相変わらず閑静な住宅街を伸びていますが、僕の方はちょっとトラブルが発生していました。今回から運動靴を新しくしてきたのですが(もちろんしっかり慣らしてきたはずなんですけど)、その靴が微妙に小さいらしく、両足の親指の爪が食い込み始めました。そこをかばうと今度は踝(くるぶし)やスネや腰に妙な力がかかる…。まぁ歩けないほどではないのですが、ちょっと足下が気になり始めました。この先、小さいながらも峠越えが控えているので少し心配です。
国道9号線に合流すると高台に上り、少し下り…、をくり返しながらだんだんと都から離れていきます。西京区はニュータウンとなってはいますが、やはり平安京中心部とは空気が違い、緑のにおいが広がっています。沓掛地区から京都縦貫道が分岐すると、この先の国道9号線はもう山の中。京都成章高校を過ぎると歩道もなくなり(写真左)、歩行者も完全にゼロ(厳密には僕がいるから「1」)。峠に向かって緩〜い坂道をひたすら上っていくと、峠に到着する前に京都市が終わって亀岡市に入りました(写真右)。峠が境界ではなく、その手前が境界なのですね。
老ノ坂峠(国道は「老ノ坂トンネル」)には、近くに霊園があるためバス停があります。ず〜〜っと歩道もないのにバス停があるってのも奇妙な感じがしますが、それでも何人かのご老人がベンチに座ってバスを待っていました。僕にとってありがたいのは、この峠区間のほとんどに歩道がないのに、トンネルにだけは歩行者専用トンネルがあるということです。下の写真が歩行者用トンネルで、左の方にちょっとだけ見えてるのが車用の国道トンネルです。歩行者用の方はもともとは車用のものだったのを、新しいトンネルの開通とともに歩行者専用にしたそうで、そのぶん広さは歩くには充分。灯りもしっかり灯っていて怖さもなく、とても快適でした。
この峠は平安京の西の果てに当たります。言ってみれば都を防御する最後の砦。この峠を越えると「山城国」から「丹波国」になります。この峠に「首塚」があるのですが、かつて天皇から命令されて西国の酒呑童子を退治しに行った四天王が、その童子の首を持って都に戻ってきたところ、この峠の地蔵様に「ここから先は都だからそのような不浄な物を持ち込んではいかん」と言われ、ここにその首を埋めていったという謂われがあります(他にも諸説あります)。いずれにしてもこの峠は都の内と外を区分する自然の城壁というわけです。
トンネルの向こう側はまたしばらく歩道無しの危険地帯。しかしほどなく国道と併走する脇道が分岐すると、そこからはもう静かにゆったり歩けるコースになりました。まるで前回までの旧東海道を歩いているかのようなゆったりした街並み。山陰道はこの先まだまだ険しい山々が待ちかまえていますが、とりあえずしばらくはこのような平野を堪能できそうです。
山向こうを走っていた桂川(保津川)とも再び合流。保津川下りとかトロッコ電車とか、この辺りの自然を堪能する遊びはたくさんありますが、それらが運行しているのがここ亀岡と、午前中に歩いてきた嵯峨嵐山との間。つまり亀岡市は地理上では老ノ坂峠を境に京都とは別世界になっているものの、現在の観光業では密接につながっているのです。地図を見ると嵐山と亀岡は直線距離で9qほどしか離れていません。残念ながら直通している道路は一本もないので、自動車や徒歩旅は今回僕が歩いてきたようなコースで大回りするしかないのですが、JR山陰本線や保津川下り(舟)であればほぼ直線で結んでいるので早いわけです。
ゆったりとしたウォーキングが80分ほど続くと、JR山陰本線亀岡駅へ到着。京都発の普通列車の大半が折り返していくのがこの亀岡駅で、京都中心部から出発した長い長い山陰本線が最初に一区切りつくところです。山陰本線はこの先、福知山、豊岡、浜坂を経由して鳥取方面に向かいます。僕もその路線から少し離れはしますが、北へ西へ向かって鳥取を目指します。山陰旅の第一歩となる今回の旅でした。