第142回 亀岡(京都府亀岡市)→和知(京都府船井郡京丹波町)
平成25年12月7日 曇り一時雨 41.5q 10時間30分
冬の京都の「3大悲劇」
3日間の休みをしっかりと使ってゆったりとウォーキングに出るのは本当に久しぶりです。越谷から日本橋まで歩いた第124回の旅以来、2年半ぶりです。「東海道五十三次膝栗毛」のシリーズはすべて日帰りのウォーキングだったんですね。今回の旅は滋賀県の大津に宿泊したので、始発で亀岡までやって来ました。亀岡駅を歩き出したのは朝6時。しばらくは真っ暗な中でのウォーキングとなり、静かな静かな第142回の幕開けとなりました。
しかし困ったのは、朝食をとりたくてもまだどのお店も開いていないということ。今回のウォーキングは6q先辺りから桂川上流の山あいに入っていき、お店はおろかコンビニも無いであろうコースが待ちかまえているので、そこまでの間に何とかしておかないと一日中空腹に耐え続けることになりそうです。
歩き始めてから1時間。ようやく明るくなり始めた頃、国道脇に「餃子の王将」を見付けました。京都府が発祥のチェーン店ですから開いているのならばぜひここで!と思ってのぞいてみると、何とこのお店は午前8時閉店(「開店」じゃないよ)とのこと。夜どおしやっているわけですね。愛知県の「王将」からは考えられません。早速「閉店直前」の朝の王将に入って、ボリューム満点の朝食をお腹に流し込みました。京都府民にとっての「王将」は居酒屋感覚なんでしょうか。ちなみに私が食事をとっていた朝7時台にはトラックの運転手らしき方が3人ほど食事をとられていました。
ようやくお腹もいっぱいになり、安心して山あいに入っていくことができました。国道9号線から離れて桂川の対岸へ。千代川駅近くの月読橋を渡りながら前回歩いてきた京都方面(桂川下流)を眺めると、何とも言えない幻想的な光景。川向こうの山々の向こうには前回歩いてきた平安京・嵐山があるはずです。
月読橋は歩道部分に月の満ち欠けが連続的に描いてあり、夜に渡るとおそらく月を眺めながら星座を読みとれるようになっているんだろうと思います。あまり交通量がないので、この橋の存在を知っている人は地元でも少ないみたいです。この日は部活の朝練に向かうらしき高校生と2〜3人すれ違っただけでした。
ここからしばらくは桂川の光景を楽しみながらのウォーキングが続きます。道は歩道があったり無かったりなのですが、川向こうに国道9号線が走っているため、こちらの県道にはそれほど交通量があるわけではありません。しかも途中からはしっかりとした(広すぎるほどの)歩道が作られていて、京都の山紫水明をゆったりと楽しむことができました。空は何となく曇ってきてはいるのですが、この日の京都南部の天気予報は「傘の出番はないでしょう」。一応折り畳み傘も持ってはいたし、雨のことはまったく考えませんでした。まさかこのウォーキングの後半で「雨宿り」なんていう事態になろうとは…。
桂川の左岸を歩くこと8q。亀岡を出発して約4時間でJR船岡駅に到着しました。船岡駅はJR山陰本線にある駅で、京都から来ると園部駅の次の駅です。長い長い山陰本線は、京都〜園部間がそこそこの都市部を走る第一区間。園部〜福知山が山あいを走る第二区間となるのですが、まさか園部駅からたった1駅でこんなにも静かな鄙(ひな)びた駅になっているとは思いもしませんでした。ちなみに普通列車は1時間に1本走っています。
船岡駅を過ぎると船岡トンネルをくぐって今度は桂川の右岸を歩きます。次の日吉駅までは約5q。快適に歩ける道なのですが、トイレもないのでちょっと困ったことになってきました。「王将」の焼飯が大腸の辺りで「出口」を待っています。
この辺りの桂川はもうかなり上流にきています。この先の日吉地区には日吉ダムがあるので、ほぼ源流近くと言ってもいいでしょう。もともと清流として有名ですが(中流には保津峡下りもありますし、下流には前回歩いた渡月橋などの名所もあります)、さすがに上流は本当にキレイです。お腹は相変わらず張っていますが、水面を鳥がはねている清流をしっかりと写真に収めておきました。
お昼近くになり、ようやく日吉地区に到着。ここで桂川は日吉ダム方面と胡麻(ごま)川方面の二手に分かれます。というより僕は川を遡って歩いていますから、二つの川がここで「合流する」というのが正しいのかも知れません。正午ちょうど、JR山陰本線の日吉駅に到着。地域交流館になっていて、キレイなお手洗いを使わせていただきました。ちなみにこの日吉駅のすぐ手前が、スタートからの3,400q地点となりました。
お腹も軽くなり、ここからはウォーキングも後半戦です。交通量はさきほどまでの県道よりもさらに少なくなり、両側に山、左側に山陰本線と胡麻川、という快走路(下の写真左)を、僕一人だけがトボトボとマイナスイオンを吸い込んでいます。胡麻駅(下の写真右)の隣にある派出所では、お巡りさんがパトカーを洗車していました。
胡麻駅を過ぎると、1時間ほど国道へのショートカットのための細い山道を歩きます。道の脇には牛がモ〜モ〜と鳴いているし、大して海抜が高いわけではないのですが、この人気(ひとけ)のない小径(下の写真左)はどうやら太平洋と日本海の分水界らしいです。しかも道の両側が分水嶺らしく(下の写真右)、左右の側溝に流れた雨水がそれぞれ太平洋と日本海に流れていくという本当に神秘的な小径です。
約1時間ほど、本当に人っ子一人見当たりません。一応国道と県道のショートカットコースになっているので、本当にたまに車が走り去っていきますが、そのおかげで「熊が出てきたらどうしよう…」という恐怖感はあまり感じずにすみました。
しかし、ここでまず1つ目の問題が!! 右足にできていたマメがついに破れてしまいました。破れた瞬間は本当に「ド痛い」のですが、破れることによって水膨れがなくなり、変に気を遣わずに歩くことができるようになります。国道27号バイパスに合流するとそこにははるか眼下にJR山陰本線に下山駅。今回はここで終了しようかとも思いましたが、時間はまだ午後2時だし、さっき右足のマメはつぶれて歩きにくさはなくなったし、ということでさらに7qほど先にある和知まで行ってみようと決意しました。結果的に言えばこの決断が3つもの「悲劇」を引き起こすことになったのですが…。
まず1つ目の悲劇はここからさらに1時間ほどたった午後3時に発生しました。歩道がなくなった国道を必死に歩いていると、曇り空からポツポツと水滴が落ちてきました。冷たい雨。おかしいなぁ…。京都府南部は「傘要らない」はずなのに…。あっっ!!そうか!! もうこの辺りは京都府北部に入るのか!! そういえばさっき分水界を越えたんだったなぁ。分水嶺はやっぱり地理上の分かれ目というわけです。
ちなみに京都府北部(舞鶴付近)のこの日の天気予報は降水確率60%で「折り畳み傘がいる」ということ。日本海側の冬の天気はやっぱりこうなんですね。冷たい雨はさらに激しくなり、仕方なく道端の町営バス停で温かいお茶を飲みながらいったん雨宿りをすることにしました。このまま雨が激しくなったらここで終了してバスで帰ろう、とも考えたのですが、どちらの方面に向かうバスも次の便は1時間以上も後。ま、とにかく成り行きに任せて、しばらくベンチで足を休めることにしました。
休むこと約15分。雨はどうやら小降りになってきました。進もう!! あと1時間ちょっとで和知まで着くはずだ。相変わらず歩道はほとんど無い道が続いていたけれど、道端の国道の「qポスト」が確実に目的に近付いていることを示してくれています。ずっと一本道だった国道が次の大きな県道との交差点に近付く頃、空にも再び太陽が現れ、青空ものぞいてきました。升谷橋から見える山々と赤い橋は、夕陽の差す水面に映えて幻想的です。最後にきてこんなに素敵な風景が見られてよかった。
歩き始めてから約10時間。早朝に「王将」で注入したはずのエネルギーもすでに空っぽになってきていました。ま、途中で「放出」もしたしね。この交差点に本当に久しぶりのローソンがあり(コンビニもたぶん9時間ほど前の「王将」の近くにあったもの以来です)、カレーパンとチョコレートを補充しました。
さぁ和知駅まであと2q。ここからは歩道もあるし、勇気100倍です。国道の交差点に「←和知駅」の標識があり、県道に入るともう和知駅は目と鼻の先です。しかし! ここまで来て駅も視界に入ってきたところで2つ目の悲劇が起きました。何と左足にできていた水膨れも破裂してしまったのです。そうだった、足は2本あるんだった。右足の水膨れが無くなったからと言って油断してました…。しかも寒くなってきているからか、あるいは10時間以上歩いているからか、左足の靴をいったん脱いでみると足が吊った…。あと少しなのに、かなりヤバイ。
靴を再び履こうとすると足がまた吊りそうになるので、仕方なく最後の300mくらいは靴の踵を踏んだ状態で歩くことになってしまいました。僕は靴の踵を踏むのが大嫌いで、基本的に相手の人間(生徒も含む)を見極めるポイントの1つとしているくらいなのですが、今回ばかりはどうしようもありませんでした。
夕方4時30分、いや厳密には4時32分。JR山陰本線の和知駅に到着。ここで3つ目の悲劇。何と1時間に1本しかない帰りの普通列車は4時32分発!! 親切で人の良さそうな駅員さんが「乗るなら切符買うまで待たせておくよ」と言って下さいましたが、帰りの名古屋までの切符を一気に買ってしまいたかったので窓口でないと買えない上に、跨線橋を走って渡れるような足の状態でもなかったので、ご迷惑をかけるわけにもいかず、次の5時31分発を待つことにしました。
それでも暖房の効いた待合室で整理運動をしながら待つことができたし(長時間寒い中を歩いていきなり暖かい電車の座席に座ってしまうと足の筋肉が曲がったまま固まってしまい、降りてからとんでもなく苦しむことになります)、いい1時間を過ごせました。待っている間に完全に太陽が落ちて真っ暗になり、再び冷たい雨が激しく降り始めていたので、タイミングとしてはまぁまぁ救われた方なのかもしれません。
地図上ではいよいよ京都府の北半分に入ってきたようです。次回はさらに京都府を北上して日本海との再対面に向かっていきます。