第143回 和知(京都府船井郡京丹波町)→真倉(京都府舞鶴市)
平成26年3月8日 曇り一時雪のち雨 33.3q 8時間0分
♪ゆ〜きやコンコ ♪きょ〜と(京都)はタンゴ(丹後)
平成26年になって初歩き。3月と言えば春の気配が感じられるはずですが、京都北部のこの地域にはまだまだ春は遠いようです。前日から降っていた雪がまだ少し残り、私も傘をしっかり準備してのスタートとなりました。
雪は残っているのですが、しかし風はほとんど吹いておらず早朝といえども寒さはそれほど感じません。そこで宿泊地の綾部を始発の4時57分に予定通り発ち、スタートとなる和知駅へは5時15分に到着です。和知駅は都市部にある駅ではありません。駅前に商店街はありますが、とてもじゃないけれどこんな時間に開いている商店はなく、今回は本当に草木も眠る真っ暗闇の中のウォーキングから始まることとなりました。聞こえるのは川の流れる音のみ。こんな真っ暗な時刻からのウォーキングは普段はあまりしないので、今回はその様子を紹介します。左が出発時の和知駅(当然誰もいません)、右が歩き出しの真っ暗な(道路灯のみ見えますかね)県道です。
道はしっかりと分かっているので(というかしばらくは一本道です)、暗くても何の心配もいりません。…のはずだったのですが、ふと目を凝らすと何か前方にチラチラと赤いものが! 人魂か!?鬼火か!?と思いちょっとギョッとしてしまいました。どうやら民家の軒先で朝のたき火をしている人がいたようです。いや〜、霊魂ではなくてよかったです。
1時間ほど歩くとようやく山の稜線が明るくなり始めてきました。清少納言さんの言わく「やうやう白くなりゆく山ぎは」というのはこんな感じでしょうか。曇っているのが残念ではありますが、視界が広がってくるとやはり少しホッとしますね。川とモノクロな山々。一日の始まりのまだ汚れていない空気は、本当に喉にも胸にもいいものです。
この県道は対岸に国道が並行して走っているので車の通りもほとんどありません。よって歩道はないですが、非常に落ち着いて歩くことができます。ちなみにこの「並行して走る道路がある」というのはウォーキングにとって下見の際の重要なポイントとなります。国道と並行する県道、有料道路(高速道路)と並行する一般国道、というのはトラックの交通量がかなり少なくなりますから歩道がなくても十分歩くことができます。
本当に静かな道なのですが、耳を澄ますと人の話し声が聞こえてきます。やばい!鬼火の次は今度は霊聴か!?とまたまたドキドキしてしまいましたが、畑に置かれていたラジオから流れていた音でした。きっとイノシシをはじめとした動物たちが夜中に山から下りて来ないように、一晩中流しっぱなしにしているのでしょう。それにしても僕が驚くくらいだから、きっと動物は絶対に怖がるでしょうね…。
時折通り過ぎる役場の作業車は道路維持のために塩化カルシウムを散布しているようです。こんな時間に歩いている人がいるのをどう思っているのか分かりませんが、僕の足下に容赦なく白い粒をまき散らしていってくれます。まぁこれほど寒い上に交通量が少ないのだから、凍結防止剤を撒かなくちゃ仕方ないですよね。
さて、今回のウォーキングコースは綾部までの「前半」と、綾部からの「後半」に大きく分けられます。どちらも山深いコースであるのは間違いないのですが、自分の中では1つの区切りとなるのが中間にある綾部です。その綾部までの「前半」はJR山陰本線にほぼ沿うように歩くのですが、出発駅から2駅目の立木駅の辺りで突然空から雪が舞い落ちてきました。数分も経たないうち、本当にアッという間にすごい吹雪になり、早くも傘の出番となりました。しかし雪は結構湿った雪で、傘なんか関係なくコートにしみ込んできます。仕方なくしばらく立木駅の駅舎で雨宿り…、いや雪宿りをしました。
時間にして約10分ほど。ちょっと小降りになってきたのを確認すると、再び歩き始めます。このまま小降りにならなければ中止にしようかなとも思いましたけどね。車が通らないので橋の上は雪が残ったままです。歩くのに相当気を遣いました。ここからいよいよ綾部市へ。
天気はどうやらいったん回復し、青空も見えてきました。しかし雪国の天気に油断は禁物です。いつまた黒い雲が空一面を覆ってくるか分かりません。…が、とにかくやっぱり青空は気持ちいいものです。今回は足の調子も快調です! 下の写真は綾部駅の1つ手前、山家駅の遠景です。ちなみに「やまが」と読みます。
歩き出してから約4時間。ようやく今回の前半戦も終了に近付いてきました。下の写真ではちょっと見づらいですけど、エメラルドグリーンの水面の向こうには綾部の街並みが見え始めています。前回の出発地である亀岡市以来、久しぶりの市街地にやって来ました。川を渡るといよいよ後半戦。ここからはさらに日本海に近付いていくので、天気も一段と気になるところです。
地図で言うとこれまでの「西進」から、舞鶴に向かっての「北上」に変わります。やはりほどなく空が灰色になってきました。そして国道27号線は歩道がなくなります。下見通りここからは脇道へ。綾部までの「前半」に歩いてきた県道とは違い、ここからの脇道は細くて頼りなさげな道です。車はほとんど通らないからいいですけど、下調べしていなかったら「行き止まりだったらどうしよう…」って心配になってくるでしょうね。現に軽自動車でないと通れないような小さな橋もあります。下の写真の小径は、橋を渡って家の手前を右折するのですが、行き当たりばったりだったら道が続いているかどうか分からないですよね。
舞鶴線の淵垣駅を過ぎ、まだまだ小径は続きます。雪はやっぱり再来してきました向こうの山が白く雪で煙っているのが分かりますよね。。傘の出番です。今回のウォーキングはとにかくこの傘が大活躍でした。折り畳みではなくちょっと大きめの傘を準備してきて本当に良かったです。
次の梅迫(うめざこ)駅を過ぎるとここからは脇道がなくなってしまい、強制的に交通量の多い国道27号線に合流させられます。しかも次の真倉駅は7q以上先。今回はここでストップにするか、それとももう1駅進むか、足の状況、天候、体調、その他いろいろ考えて決定する場所に来ました。時刻は11時30分。
ここからの国道に歩道がなければ次回に回そうとも思うのでしょうが(ウォーキングの前半より後半の方が疲れていて注意力が散漫ですから、歩道のない危険な道はなるべくウォーキングの前半にくるようにします)、山あいにも関わらずこのまま舞鶴まで歩道は続いているので、ウォーキング続行を決めました。まだまだ先へ行こう!!
綾部市運動公園を過ぎると周囲に建物はまったくなくなってきます。国道と鉄道と緑…いやいや白く雪がかった山々のみ。そして、雪はここから雨に変わってきました。本格的な雨天です。三たび傘の活躍となりました。
寂しい山あいを歩き続けると突然左手に小さな集落がポツンと現れます。ここは綾部市最北端の集落である黒谷。和紙の産地です。数件の家々が身を寄せ合い、この日も雨の中で何人かのご老人が道をウロウロしていました。国道から集落に入る橋の欄干には「和紙の里」を告げるレリーフが飾られていました。今回はウォーキングの途中だったので立ち寄れませんでしたが、次回距離測定に訪れるときにはぜひ立ち寄りたいと思います。言い回しだけではなく本当に「四方」を山に囲まれた秘境の集落でした。
黒谷を抜けるといよいよ綾部市から舞鶴市へ。舞鶴市は日本海に面していますから、ついに日本海との再会も近そうです。でもまだこの市境は海とはほど遠い山の中。道の看板には「また来てね綾部市。GOOD LUCK。お隣は舞鶴市です」と書いてありました。GOOD LUCKっていうのも何だか不思議な言い回しですが、隣の市を紹介するあたり、綾部市と舞鶴市はきっと仲がいいのでしょうね。
歩道の隣を流れる川は相変わらず綺麗です(写真左)。雨の中ではありますが本当に心洗われます。車では見られないはずの景色ですから、何だか本当に得した気分。水戸黄門のように悪人を退治するわけでもないのに僕がウォーキングを続けているのはきっと、こういう景色に出会えるから、そしてこういう時間と出会えるからなのでしょうね。ちなみに前回の豪雨の際のものでしょうか、大木がゴソッと倒れていたのにはちょっとビクッとしました(写真右)。
さぁ眼前には真倉駅が見えてきました。この寂しい国道沿い、渡瀬橋北交差点付近が、スタートからの3,450q地点となりました。次の50q地点はいよいよ3,500qになります。ちりも積もれば山となりますね。これも一歩一歩の積み重ねです。
西舞鶴駅まではあと一息。再び足や体調、天候と相談。まぁあと5qくらいなので何とか到達できそうな気もしましたが、雨が結構本降りになってきて靴の中も濡れ始めてきていたので、今回は無理をせずこの真倉駅をゴールにしました。淋しい淋しい無人駅です。時刻表もスカスカでローカル線であることを実感できますね。
いよいよ次回は日本海と久しぶりに対面できそうです。縦に長い京都府を北へ北へ上がってきましたが、頑張ってきたかいがありましたね。天橋立くらいまで行けたらいいなと思います。