第145回 宮津(京都府宮津市)→木津(京都府京丹後市)

平成27年3月6日 曇り一時晴れ 36.5q 8時間50分

啓蟄、京都の奥座敷

 この日は二十四節気でいう啓蟄。虫が冬眠から覚めると言われる日です。天気予報では「寒さが厳しく、一日中曇ってパッとしない天気」とのことでしたが、結局そのような天気になったのは午前9時くらいまでのみ。ほぼ一日、暖かい天気に恵まれました。やはり暦は正しかったのですね。

 北近畿タンゴ鉄道(KTR)の始発に乗って宮津駅へ到着したのが午前6時50分。早速歩き始めました。実は約3ヶ月前の12月初旬、やはりこの駅までやって来てウォーキングをスタートさせようとしました。しかし猛吹雪。何とか歩き始めたもののとてもじゃないけど何qも歩ける感じではないので、中止にしたといういきさつがありました。よって最初の4qくらい(天橋立まで)のコースは僕としては2回目の景色ということになります。でもこの旅日記にアップするのは初めてですから、しっかり写真を上げておこうと思います。曇っているのでちょっと見にくいですが、宮津湾に浮かぶ(現実にはもちろん浮いてはいません)天橋立です。

     

 さてここで宮津市についてちょっと紹介しておこうと思います。宮津市は京都府のかなり北部に位置する市で、京都府内の観光客数としては京都市、宇治市に次いで第3位の都市です。もちろん日本三景に数えられている天橋立の影響が多いと思われますが、それにしてもこれだけ京都中心部から離れているのにこれだけの観光客を集めているというのはさすがです。

 また宮津市は、平成の大合併により周辺の町村を合併したものの、真ん中に位置する与謝野郡岩滝町が合併されなかったため、宮津湾を挟んで南北に分断される市となってしまった珍しい市です。よって陸路で移動する場合は基本的に他の市町村を通らなければなりません。「基本的に」と言ったのは一応、天橋立が宮津湾の上を細長く分断された宮津市を結んでいるからです。しかし天橋立は一般車両は通行できませんから、やはり車での移動は他の市町村を挟むことになります。

 そんな宮津湾を眺めながら1時間ほど歩くと天橋立駅。京都からの特急「はしだて」もこの駅が終点となるので、電化されているのもここまでです。天橋立駅を過ぎるとすぐ架線が消えてしまいます。その地点が下の左の写真。鉄道に詳しくない人からするとちょっと珍しいですよね。ここから先はディーゼル車しか入って行けません。

        

 砂地には鳥が朝の散歩(上の写真右)。このような心洗われる宮津湾を眺めながらさらに1時間。先述した岩滝町への入り口に到着します。ここでいったん日本海とはお別れ。京都府は伊根半島という大きな半島が北東へ出っ張っていますが、僕のウォーキングは内陸をショートカットします。伊根半島も観光地としては有名な所なのですが、いかんせん半島が大きすぎて今回のウォーキングではパスしました。

 野田川という川に沿って歩いていくと、もうさっきまでの海の臭いはまったくしなくなりました。両側には小高い山々。さらには前方にも視界を遮る山が現れてきて、今日最初の峠である水戸谷峠にさしかかります。国道とはいえ歩道はない。当然歩いている人など皆無。幸運にも路肩がかなり広くとられているので歩くのに不自由はしませんが(下の写真左)、大型トラックは歩行者になど目もくれずに走り去っていきます。ただでさえ登り坂は大変なのに…。

        

 まだ峠に到達しないうちに京丹後市に入ります(上の写真右)。相変わらず薄暗いし、人気もないし…。しかしどうも後ろから視線を感じる…。稲川淳二さんだったら「こわいな〜、なんかやだな〜」って感じなのでしょうが、とりあえずまだ昼間なのでこんな時間帯から別世界の者は出てこないだろうと勇気を持って振り返ってみると…。

 視線の主は何と草むらからじ〜っとこちらを見つめている野生の鹿でした。大きいけどカワイイ。残念ながら携帯を向けると逃げてしまったので写真は取り損ねましたが、向こうも怖かったのでしょうかね。啓蟄には虫どころか哺乳類まで目覚めるようです。

 鹿くらいならいいけど、もっとヤバい動物が出てきたらどうしよう! とちょっとビビリ始めながら峠を越えると、やっと平坦な道になります。平野に出ると何がいいかと言うと、脇道が出てくるということです。つまり大型トラックを気にせずに歩けるというわけで、これは長距離を歩く際の疲労感にものすごく影響します。下の写真の道もまだまだ寂しい雰囲気ですが、車がほとんど通らないというだけで真ん中をゆったりと歩けます。

          

 さて京丹後市は京都府の最北端に位置する市です。ここもいくつかの市町村が合併してできた市なので面積がだだっ広いのですが、今回まず最初に通過するのは旧大宮町です(以下「旧」は付けません)。北近畿タンゴ鉄道にも丹後大宮という駅があります。小野小町の出身地であり、有名人としては太川陽介さんの出身地でもあります。たまたま昨夜ホテルで「路線バス乗り継ぎの旅」の再放送を見たばかりなので何だか身近に感じます。とは言っても僕の年代ではリアルタイムで「ルイルイ」は知らないんですけどね。この旧大宮町のひらけた国道がスタートからの節目の3500q地点となりました。

 ここで少し早い昼食。中華料理屋さんに入り、焼きめしを食べました。暖かいとは言ってもやはり冬場なのでお手洗いも拝借し、再び身軽になって出発! 大宮町から峰山町に入ります。だいぶ都市部になってきました。

          

 元楽天監督の野村克也さんの出身地でもある峰山ですが、ここには天女の羽衣伝説があります。…が僕のように全国をまわっていると「天女の羽衣」ってあちこちにあるんですよね。僕の地元にも「羽衣の松」ってのがあるし、静岡の三保の松原にも確か伝説があったような…。どこがどう違うのか分かりませんが、この峰山町はお隣の網野町とともに丹後ちりめんが有名なので、何となく羽衣も質がいいような気もしてきますね(笑)。

 時刻は12時を過ぎ、今回のウォーキングも後半に入ります。峰山の中心部は往時の雰囲気の残った味わいのある町並みです。そのぶん道幅は狭いのですが、歩道もきちんと造られていて歩きやすかったです。下の写真は峰山小学校なのですが、ちょっと普通の小学校には見えないですよね。隣に別の校舎があったので、こちらは実際には今は使われていない建物なのかもしれませんが…。

          

 山間の道をさらに進んで行くと次は網野町。こちらは丹後ちりめんとともに、静御前の出生地として有名です。再び日本海が近くなってきました。この季節はやはりカニですね。この近くの丹後町では間人(たいざ)ガニが有名です。海の近くだけあって網野駅の駅舎はヨットを模しているようです。

          

 僕のウォーキングはここから進路を真西に変えて、同じ網野町内にある木津温泉を目指します。距離にするとあと6q程のはずですが、ここにはまた小さな峠が待っています。しかもここの国道には歩道が整備されていない。しかも場所によっては路肩がほとんど無い! 車の通行量はそこそこあるので、結構怖いです。

 パトカーが脇を通っていきました。ま、危険な路肩歩行ではあるけれども別に違法行為をしているわけではないので何も言われませんでしたが、こんな山道で何しているんだろうと思われたでしょうね。ただでさえ平日の昼間にいい年した男性がトボトボと歩いているのですから…。しかし繰り返しますが、何も悪い事はしてません!!

 道は長い長いダラダラとした上り坂。ウォーキング後半に入っての上り坂は結構こたえます。途中には短いトンネル。そう言えば今回のウォーキングでは初めてのトンネルだ。多少の峠はあったとは言え、今回は難所は少なかったですからね。

          

 トンネルを越えてもまだしばらく上り坂は続き、ようやく峠へ。ここからは下るだけだ! そしてここは地理的に記念すべき場所でもあるのです。兵庫県明石市を通る東経135度線。そう、日本の標準時子午線です。ちょうどここがその線上。日本海側なのでまだ京都府なのですが、東経135度線って京都府も通っているのですね。意外でした。この寂しい国道沿いに「子午線の塔」と表示板、そして地図が立てられていました。下の地図の色が濃くなっている部分が京丹後市です。

    

                       

 西へ西へと向かって歩いてきましたが、ここからは名実ともに「西日本」に踏み込んでいくのですね。僕のこのウォーキングで東経135度線をこえるのはもちろん初めてのことです。はるばる遠くへ来たもんだ。ちなみに東経136度線を越えたのは第139回の旅、滋賀県の草津市でした。その時も道ばたの小さな碑を写真に撮ってこの旅日記にアップしてありますのでご覧下さい。

 午後3時40分。ようやく木津温泉駅に到着しました。地図上ではもう本当に京都府の北西の端です。三重県と接している京都府の南東の端とは直線距離でも150q近くあります。京都市内のあの観光地のにぎわいはまったく感じられないこの街並みですが、ここはここである意味世界遺産が並ぶ京都市内よりも落ち着いた味があります。少なくとも僕は好きです。あと北へ2qほどで日本海に到達し、そこには夕日ケ浦温泉という温泉郷もあります。また次回のウォーキングで通過する予定の久美浜(ここも京丹後市の旧町の1つです)にも温泉があります。そして県境を越えると兵庫県には城崎温泉。ウォーキングとは関係なく何泊かしてじっくり堪能したい京都の奥座敷ですね。

 木津温泉は「きづ」とは濁らずに「きつ」と発音します。行基僧が見つけた温泉らしいです。駅のホームには足湯があり(写真右)、しばらくゆっくりしていたかったのですが、残念ながら日が暮れないうちに舞鶴のホテルまで戻らなくてはならなかったので、その楽しみは次回以降にとっておこうと思います。

        

 次回はようやく長かった京都府を脱出して兵庫県へ入る予定です。


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