第147回 竹野(兵庫県豊岡市)→餘部(兵庫県美方郡香美町)
平成27年7月15日 快晴 27.3q 6時間20分
解禁前のかわいいカニ
昨年の7月は足の爪を傷めてしまっていてウォーキングなんてとてもできる状態ではありませんでした。7月に歩くのは本当に久しぶりです。予報によると今回歩く香美地方は最高気温が28℃とのこと(前日時点の予報)。これまでずっと30℃を越える日が続いてきていたところなので、ちょうどいい日に当たったのかもしれません。
豊岡駅を電車で出発して、今回のスタートとなる竹野駅へ。7時前に到着して切符を駅員さん(委託のおばちゃんっぽかったですが)に渡そうとすると登校時の高校生たちで待合室はいっぱい。とても忙しそうでおばちゃんはこちらを振り向いてもくれず、結局昨日名古屋から使ってきた切符は渡すことが出来ませんでした…。
高校生たちを後目に早速ウォーキングスタート。まずは海沿いの県道に出ます。前回のウォーキングの最後が鋳物師戻峠でしたから、まだまだ山も近いのですが、海もすぐそこにあるのです。この県道は兵庫県道11号線、今日の前半ずっとお世話になるはずの道路です。切濱というここの海は、京都から走ってきた山陰本線が初めて日本海に面する箇所(下の左の写真)。起点の京都からはすでに160q以上離れています。
竹野駅から徒歩でも行ける観光スポットとして「はさかり岩」があります(上の写真右)。「はさかり」とはこの地方の方言で「はさまり」のこと。つまり写真を見てその通りのことですね。これはもともと洞窟の天井が崩落して下の岩にはさまり、その後何百年もかけて洞窟自体が消え去ってしまったという地形。それで崩落した天井岩だけが残ったのですね。写真だと分かりにくいかもしれませんが、人間の力ではとても動かせないような巨岩なのです。それにしてもうまく挟まってます…。フラッピーでもこんなに上手にはいかないでしょう(笑)。
ほどなく道路は豊岡市を出て香美町へ。そして香美町へ入ってすぐの地点が、スタートからトータル3550qポストとなりました。
この辺りはリアス式海岸になっていて、場所によっては海岸線に道路を造れなくなっています。その場合にはせっかく海に近くても、道路は内陸の山を通します。よってこの日のウォーキングは「漁村(海岸)→山道→漁村(海岸)」の繰り返しとなります。山道では蜂が、海岸では蛇が多発し、夏場のウォーキングは外敵もいっぱいです。フラッピーにおけるエビーラとユニコーンのようなものです。…が、蜂や蛇はこちらが何もしなければ襲っては来ませんけどね。
しかしかわいい動物もいます。足下で何かがウロチョロするなぁと思って視線を道路に落としてみると、小さなサワガニが横断していました。香美町はカニで有名な地ですが、今は夏。季節が違うので今回はカニには縁がないものと諦めていましたが、こんな小さなカニに出会えるとはね。車にひかれないうちに海に戻るように伝えて(もちろん心の中で)、歩を進めました。最初に現れる集落は佐津。
まだ夏休みには早いものの、すでに浜辺ではいくつかの団体が泳いでいました。ちょうど民宿から水着で出てきている団体にも会い、こんな小さな漁村(失礼!)でも観光地としてにぎわっているのだなぁと思って安心しました。ウォーキングスタートから約2時間。ここで本日初めてのドリンクを身体に補充して次の漁村に向けて山道に入ります。
また1つ山を越えて、次の漁村は柴山漁港。こちらも小さいながらもきれいな浜辺です。道ばたにはウミネコがたくさん並んで、僕と一緒に海を眺めていました(下の写真左)。結構近付いても飛び去らないので、人間を信用してくれているのでしょうか? それとも僕がナメられているだけ?
柴山からまた少し山道を通り、再びすぐに海辺へ。右手に「かえる島」が見えてきます(上の写真右)。「島」というのは少し無理があってどう贔屓(ひいき)目に見ても「岩」なんですけど、逆に「かえる」の方はどうひいき目に見ても「かえる」以外には見えません。岩の名前を言われなくても100人いたらおそらく100人が「カエル」と答えるでしょう。僕もいろんなものを見てまわっていますが、こんなに似ている「岩」は見たことがありません。
さぁ今回のウォーキングで一番大きな街、香住漁港へ到着です(上の写真)。合併で内陸まで大きくなってしまった香美町の役場も置かれている街で、駅前には大きなカニのモニュメントが置かれているほどのカニの産地。時刻も11時をまわり、また暑さで少し僕もバテ始めてきたので、この漁港の目の前にあるお寿司屋さんで昼食をとりました。以前に車で走ったときに「一度入ってみたいな」と思っていたお店なのですが、平日の開店直後と言うこともありほとんどお客もいない中でじっくりくつろがせてもらいました。お寿司も新鮮でしたが、赤だしがとても大きくておいしかったです。炎天下を歩き続けてきていたにも関わらず、熱い赤だしを全部飲み干してしまいました。
お腹をいっぱいにし、お冷やもたくさんもらい、エネルギーを充電して、今回最後の山道へ入っていきます。目指すは鉄道ファンの聖地の1つ、餘部(あまるべ)橋梁です。香美の街中からは約8q先。道は路肩が消え、両脇の雑草も道路まではみ出してきています。暑い中の上り坂は結構ツラい。車はほとんど来ないので、思い切って道路の真ん中を歩いていきました(もちろん車が来たら端に寄っていますよ)。
上り坂の途中に虫尾トンネル(上の写真)。歩道はもちろん路肩もありません。しかもここはれっきとした国道。本来なら下見の時点でウォーキングのコースから外されるようなトンネルです。でもここを歩くしかありません。回り道はないのです。
僕にとっての「歩けるトンネル」の条件はまず1つに歩道があること。もし歩道が無い場合には向こう側(出口)が入り口から見えること。そして歩道がない場合には交通量が少ないことも条件になってきます。この虫尾トンネルとこの先にある三田トンネルは、歩道は無いけれど一応条件を満たしています。実はこの香住〜餘部の区間は山の中を無料の自動車専用道路が貫いていて、ほとんどの車輌はそちらへまわってくれます。よってこちらの国道は5分に1台くらいの車が通るのみ。このくらいなら歩道のないトンネルも怖がるに値しません。むしろこの日のような炎天下ウォーキングでは日陰になるし風は通るし、ちょっとありがたいくらいです。
三田トンネルをくぐると道は峠に差し掛かり、ようやく下り坂へ。路肩の温度計は30℃を指していました。何だ、結局30℃まで行ったんだ。予報はアテにならないな。後で聞いたニュースではこの日、全国で4人が熱中症で死亡したとか。炎天下を歩いていて無事に済む僕は大人物かも知れません。
ここで向こうからパトカーがやって来ました。前述のとおり道路の真ん中を歩いていた僕は大慌て。しかしパトカーは「暑いから気を付けてね」とスピーカーで声を掛けるだけで走り去って行きました。こんな炎天下でこんな山道を一人で歩いていて何も違和感が無かったということなのでしょうかね。ちょっと自分でもショックでした。でもまぁ不審者にも見えなかったから職務質問も受けなかった、というふうにとらえることにしようと思います。
こんな山中で道は二手に分かれ、右には「JR鎧(よろい)駅」の文字。しかしだまされてはいけません。この鎧駅は最近一部のマニアサイトで話題になっている秘境駅です。歩いていっても道は駅までで行き止まり。そして電車もその多くは通過してしまいます。多少距離は遠くても頑張って次の餘部駅へ向かうのが正解です。もしかしてさっきのパトカーも僕のこと「秘境駅マニア」かなんかと思ったのでしょうか!?
ほどなく無料の自動車道の餘部インター(現時点での終点)があり、自動車がいっぱい国道に合流してきます。向こうの方には餘部橋梁。やっと到着しました。下の写真で左の山の方に線路が消えている辺りが餘部駅になります。右の方には2時間ぶりに日本海も目に入ります。
ここは昭和62年、お座敷列車「みやび」が回送中に強風にあおられて落下するという痛ましい事故が起こった場所です。運転士と、下にあった蟹加工場の従業員が亡くなるという大きな鉄道事故になってしまいました。今では橋の下に慰霊碑が建てられています(上の写真右)。それ以来、風速計が一定の値以上の際には列車は運休することになり、また写真のように風よけも設置されました。また橋脚もだいぶ古くなり近年新しく建て替えられました。見にくいですが、写真の左の方だけ赤いトレッスル橋脚が歴史を物語るように残されています。
ということでいつもなら駅に到着した時点でウォーキングは無事終了となるのですが、餘部駅は猛者なのでここで終わりません。見ての通り駅のホームが山の中腹にありますから、そこまで登って行かなくてはなりません。エレベーターもエスカレーターも無し。そう、駅構内で登山が楽しめてしまうのです。「空の駅」と名付けられただけあって、今日の長いウォーキングよりもよほど苦しい階段が駅構内の始まりです。
このような上りの小径が続き、ようやくホームへ。この日は観光バスで訪れたらしき初老の団体が歩いてホームの見学に来ていました。僕はあなたたちのようなヤワな観光客とは違うんだよ、この炎天下を30q近くも歩いてきたんだよ、とちょっと得意げに(心の中で)叫び、ホームから下界を見下ろしたお決まりの写真を一枚撮りました。
ホームには取り壊された橋脚の一部が寝かせてあり(もしかしてベンチとして使えということか?)、また古い橋が途中まで線路とともに残されており、まるで空中へ消えていく線路のようで何だか神秘的です(下の写真右)。今にも銀河鉄道999が飛び出していきそうでした。
次回はいよいよ兵庫県を出て鳥取県へ入る予定です。あ、でもその前に次回はこの駅の構内の長い長い下り坂を「下山」しなきゃいけないんだ…。