第149回 岩美(鳥取県岩美郡岩美町)→浜村(鳥取県鳥取市)

平成27年12月16日 曇り時々晴れ 33.1q 8時間0分

冬もあけぼの

 12月も後半に入ったこの季節、本来なら耐えられないほどの寒波に襲われているはずの鳥取は、何だか優しい優しい暖かな空気に包まれていました。雨に限りなく近い曇り、という天気もあってか、湿度も結構高め。決して「蒸し暑い」とは言いませんが、コートはあってもなくてもいいくらいの早朝でした。まだ真っ暗な5時の話ですよ。繰り返しますが、ここは山陰因州鳥取です。

 さて今回は鳥取駅を上りの始発で出発して岩美駅に到着したのが5時50分。当然のごとくまだ真っ暗。冬至近くですからね。しかしすでに駅員さんが掃除をしていました。すごいなぁと思って見ていると、やって来たタクシーの運転手さんが「ここの駅長はね、必ず誰よりも早く早朝の掃除をするんだよ」と教えてくれました(下の写真左)。さぁ、4ヶ月ぶりのウォーキングスタート。駅前の商店街ももちろん夜明け前です(下の写真右)。

        

 山陰地方の主要道路と言えば国道9号線。京都から山口に至る長大路線ですが、僕の旅はここまで日本海をトレースするように歩いてきたので、第142回の旅の途中で国道9号線をはずれて以来ずっと9号線には触れてきませんでした。しかし鳥取市を目前にしたこの地点で、本当に久しぶりに9号線と合流します。一応写真は撮ったのですが、やっぱりまだまだ暗くて見にくいですよね。

          

 約1時間近く歩くと、さっき電車で通ってきた大岩駅。日の出まではもう少しですが、さっきよりはいくぶんか山の稜線が見え始めてきたような…。すると僕が乗ってきた始発列車の次の2番電車がちょうどやってきました。僕の乗っていた始発も乗客はほとんどいませんでしたが、2番電車もまだあまり乗客はいないようです。

          

 曇り空とは言っても明るくなり始めると結構速い。上の2番電車の写真は6時35分の撮影。それに対して次の写真は6時41分の撮影です。東の方向を向いて撮っているとはいえ、枕草子の「やうやう白くなりゆく山ぎは」がたった6分でこんなにも際だってくるものなんですね。朝に散策している者だけが分かる貴重な光景です。春だけではなく冬も曙です。清少納言に教えてあげたいです。

          

 さぁ急坂を上って小さな峠を越えると、いよいよ鳥取市へ突入。第141回の旅で京都を出た時に「鳥取砂丘を見られるのはいつ頃だろう」と書きましたが、ついにここまで来ました。防砂林の中の遊歩道・サイクリングロードを進んでいくと、日本海の荒波のものすごい音が聞こえてきます。怖いくらいです。

        

 ところで防砂林の中を小1時間ほど歩いているのにまだ誰にも会っていない。後ろからも前からも誰も…。ふと見ると道端の看板には…

               

 僕って3番目には該当しませんかねぇ。警察に通報されたら困るなぁ…。でも密航者に見つかって異国へ連れ去られたらもっと困るなぁ…。愛知県では考えられないような看板が日本海側にはあるのですね。実は今回のウォーキングの最初で暗い中を歩いたので次回から懐中電灯を持参しようかなぁと思っていたのですが、2番目の警告を見るとやめておいた方がよさそうですね(笑)。

 砂丘は思っていたよりもシンプルでした。もっと汚れているのかなぁとも思っていましたが、特に落書きもなく、また暖冬のためか白いものもまったく積もっていなくて、とりあえず茶色い砂の風景をしっかりと楽しめました。近くでラクダが見られなかったのが残念です。

     

 鳥取市内に入るとちょうど市民たちが活動を始めたばかりの時間帯。国道からはやや離れた県道を歩きましたが、コンビニやらファミレスやらファストフード店やら、意外に普通の市内風景が広がっていました。鳥取ってもっとすごい所かと思っていましたが…。フツーですね。

 市街地を抜けると鳥取大学のそばを通り、左手には大きな湖山池(こやまいけ)が見えてきます。この池はもともと日本海とつながっていたものが砂嘴によって分断されたものだと言われています。第145回の旅で通った天橋立といい、第146回の旅で通った小天橋といい、日本海の流れは砂嘴を堆積しやすいのでしょうかね。この辺りからだんだんと風が強くなってきて、湖山池も大きな波が立っていました。

          

 湖山池が途切れると県道は国道9号線に再合流。ここから西へ進む国道9号線はとにかく日本海を間近に楽しめる部分です。大型車輌の交通量が多いのが残念ですが、歩道はしっかりしているのでゆったりと海を眺められます。北風が強くなってました。早朝のあの暖かさはどこへやら…。コートのボタンを締め直します。

 鳥取県の東部の旧国名は因幡(いなば)です。因州和紙・カニ・ウニ・ラッキョウ、と有名なものはたくさんありますが、「因幡」と聞いてまず思い浮かべることは「因幡の白うさぎ」でしょう。神話の内容はあまりに有名なのでここで詳しくは述べませんが、白うさぎが渡った「おきのしま」が海の向こうに見えています。白い鳥居もあります(写真左)。そして道の脇には大国主命と白うさぎの像(写真右)。

        

 近畿地方から特急列車で鳥取に向かう場合、多くの場合に利用するのが特急「スーパーはくと」号です。この「はくと」はもちろん「白兎」のこと。この神話にちなんでいるわけですが、この地はすでに地名も「白兎」というみたいですね。国道脇の地名標識にも大黒様と白うさぎが描かれていました。

          

 ちょっと話は脱線するんですけど、この神話に出てくる神様って「大黒」「大国」のどちらでしょう? どちらも「だいこく」と読めますが…。そして僕のイメージする「だいこく様」ってすっごいメタボなんですが、上の標識も像もスマートですよね。あの七福神にいる人(じゃない「神」)とは別人(別神)なのかな。ちょっとまだ調べが足りないです。また分かったらここに書きます。

 小さな港町をいくつか見下ろしながらさらに西進すると、鳥取県有数の温泉地である浜村温泉へ。海岸線が長くて本当にきれいです。こんな所を歩ける贅沢な旅に感謝、感謝です。波も白く、荒くなってきました。

          

 寒くなってきたので、今回はこの温泉地、浜村をゴールとしました。駅前はひなびた温泉街の空気が流れていて、無料の足湯もありました。歩いた直後に湯に浸かると筋肉が温まって膠着して歩けなくなってしまうので今回は足湯はパスしましたが、足湯の上には手をつけられる源泉もあったので、電車の待ち時間にちょっと温まりました。

        

 いよいよ次回は区切りの150回目です。因幡路を西へ向かい、伯耆大山に出会える旅がまた楽しみです。

 


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