第155回 大田市(島根県大田市)→江津(島根県江津市)

平成29年3月9日 晴れ一時雨 43.4q 10時間20分

トンネル回避の落とし穴

 東西に長〜い島根県も、この大田市からはすでに西部(石見国)に入っています。とは言っても「じゃぁもうすぐ山口県だね。下関ももうすぐだ」とはなりません。まだまだ下関までは200km以上あると語りかけてくる看板があちこちに立てられています。でも京都から始まっているこの国道9号線も、「下関まで○○km」なんていう言葉が出始めたこと自体、少しずつ本州の西端が近付いていることを感じさせてくれます。少なくとも僕はそう思いたい!

 さて今回の出立は朝6時40分。出雲市駅から始発に乗ってくるとこの時間になります。石見神楽のなかなかカッコイイ電車でした。まだまだ寒いものの、春分まであと10日にせまっているだけあってこの時間はすでに周囲は明るいです。

     

 鳥取市からずっと続いていた平坦な鳥取平野も、この辺りで終わりを告げます。今回の江津までの道のりはトンネルの多いこと。しかも国道9号線というメインルートなので大型トラックがひっきりなしに走っているのに、ほとんどのトンネルに専用の歩道がない! 今回はマジで危険です…。

 大田市の2つ先の五十猛(いそたけ)駅あたりから「トンネル攻撃」は始まります。とりあえず最初の五十猛トンネルは脇道に逸れることで回避しました。今回はこんな感じでできる限り「トンネル回避」をしながらコースを決めていきます。それにより多少距離が伸びても仕方なし。

 脇道にひっそりと佇む五十猛駅…と思いきや、どう見ても駅には見えない! ただの高架下でしょ!? 駅だからトイレあるかな?と期待していたのが脆くも崩れ去りました。次の駅まで我慢するか。

                       

 次に攻撃してくる宅野トンネルと仁万トンネルは、先ほど回避できたトンネルよりもさらに長さがあります。したがってこれも何とか回避したい。国道から逸れるとかなりの大回りになってしまうのですが、ここもやっぱり安全を最優先しました。おかげでここまで何とか一度もトンネル攻撃を受けないまま、今日の最初の市街地である仁万(にま)に到着。ようやくトイレを済ませて身も軽くなりました。

 仁万町には「砂の博物館(サンドミュージアム)」があります。仁万町内の琴ケ浜は鳴き砂で有名で、その砂が展示されているようです。博物館内には世界一大きな砂時計が設置してあり、この砂時計はなんと一年計! 毎年大みそかには「時の祭典」も行われるほどの有名な博物館です。

                       

 そしてもう1つ。この仁万はどうも町内でも漢字が一定しない。信号には「仁万」。サンドミュージアムには「仁摩」。ちなみにここにある高校は「邇摩」高校。どれが正しいんだ?と思ったら、全部正しいみたい。どうやら正式な地名は「邇摩郡仁摩町仁万」という住所らしいです(現在は大田市に合併されているので「邇摩郡」という地名は残っていないけど)。難しい…。

     

 さぁ、国道9号線は再び町を離れて、いつトンネル攻撃がきてもおかしくない様子。しかし攻撃は思いもよらないところからきました。左足で踏みつけた小枝が右足の靴に刺さる! 靴に穴があく! 足にまったく傷がつかなかったのが奇跡です。そして歩くのに支障がない箇所だったのも奇跡。本厄というのはこういった小さなところに現れてくるのかな…?

 そしていよいよ真打登場! 回避する道もないトンネル攻撃4連発! しかも結構狭いぞ! マジか? そう、「馬路(まじ)トンネル」(笑)。

 入口の看板を見ると「歩行者や自転車に注意」って書いてあるから、一応歩いて入っていくことも想定されているのでしょうが、それにしても内部は危険だわ! これが4つも続くのか!!

     

 幸いなのは先ほどの仁万からしばらく(石見福光まで)、無料の山陰道が並走しているので大型車の多くがそちらにまわってくれているということ。まぁそれを知っていたからこのルートを歩く決意ができたんだけどね。それでもトラックがまったく通らないわけではなく、身の危険を感じながら歩を進めました。

 4つのトンネルを抜けるとそこは湯里。大田市の温泉津(ゆのつ)町です。スタートからの3850km地点となりました。有名な温泉津温泉がありますが、ここは三方を山に、残る一方を海に囲まれた、まさに秘境の温泉街。僕が征夷大将軍になったらここに幕府を開こうかと思うくらい(笑)に自然の要塞という感じです。それにしても「温泉津町湯里」なんて標識を見ると、こんなに寒い季節なのになんだか暖かく感じられます。温泉浴びたいなぁ〜。

     

 温泉津の温泉街の先にも温泉津トンネルが待ち構えています。ここは脇道で回避できそうだなと地図を見て思っていたのですが、これを回避する脇道には落とし穴が待っていました。まず、とにかく狭い。そして大自然の中。30分ほどとは言え、クマとか出てきたらどうしようかとビクビクしながら、大きな声で歌いながら歩きましたよ(笑)

                    

 さらに集落に出てきたと思ったら…今度はどうみても危険そうな素掘りのトンネル。大型トラックが少ないならば、こりゃ国道のトンネルの方がむしろ安全だったかな!? それにしてもこの集落の方々ってこの素掘りのトンネル通らないと集落から出られないんだ…。コワすぎる…。「金田一少年の事件簿」だったら、犯人は絶対にこのトンネルを落石で塞いでから犯行に及ぶだろうな(笑)。

                    

 ようやく少し安全そうな道に出ると、ここで大田市は終わりとなり江津市へ。並走する山陰道が終わってしまって再び大型車が合流している国道9号線に戻ります。でもこのあたりは歩道があるから安心、安心。

 少しひらけた所に道の駅「サンピコごうつ」があります。ちょっと遅めですがここで昼食をとりました。外は寒いけど店内は暖かいので、結局冷たい冷たい海鮮の乗った「えびす丼」。プラス100円で豚汁にしてもらいました。この豚汁で温まって調子に乗ってしまうのが僕のダメなところ。抹茶サンデーも注文してしまい、再び外に出たとたんその寒さに後悔しました。

     

 風は少し強くなってきましたが、右手に見えてきたのは浅利駅。今回の目的地の江津駅の1つ手前の駅です。よし、あと1駅!

 しかし、ここで最後のトンネル攻撃を受けることになります。口を開けているのは浅利トンネル。全長は400mあまり。短くはありません。もちろん歩道はなくて狭い! さらにすでに大型トラックが合流してきてしまっているので、先ほどの「マジ(馬路)?」のトンネルみたいに生きて通り抜ける保証はない。仕方ない、最後の力を振りしぼってこのトンネル回避のための回り道をしよう。

 地図上ではしっかりと色の付いた県道だし、距離にしても4kmくらいだし。と思ったら、これがまた落とし穴でした。国道の浅利トンネルの上には室神山という山がそびえ立っているのですが、この山は別名「浅利富士」。回避する県道はこの山の中腹以上まで標高が上がるのです。

 おまけに狭い! この道に主要県道として色を付けるはいかがなものでしょうね…。再びクマの恐怖におびえながら歩を進めましたが、1つだけ良かったことは、思いもかけず素晴らしい景観に出会えたこと。名も知らぬ小さな池ですが、大自然の中のあまりの美しさにしばし佇んでしまいました。夕暮れ時という一番切ない時刻だったのも良かったのかもしれません。

     

 浅利富士の中腹まで上ると、最後は急坂を下りだします。眼前には日本海。眺望が良すぎて水平線が丸く見える! 海のかなたを見渡すと地球の丸さを実感できるって言われるけど本当なんだな。写真では分かりにくいけど、確かに水平線は真っすぐではなく丸みを帯びています。

                    

 …と目の前を小さな子イノシシが! 民家のおじさんが出てきて、慣れた手つきで子イノシシをブラシングしてあげていました。聞いてみたら、飼っているわけではなく野生のイノシシなんだけど時折こうして訪ねてくるんだとか。野生のイノシシ、初めて見ましたよ。

                    

 イッキに標高は下がり、目の前には江の川。これを渡ると江津駅。ゴールはもう目の前です。振り返ると国道9号線の距離看板に今回の出発地だった大田市の表示がありました。国道で40kmってことは、回り道したことを考えると間違いなく40kmは超えてるな。そして偶然にも、今回の出発地だった大田市、前回の出発地だった出雲市、前々回の出発地だった松江市が表示してあったので、写真を撮っておきました。

     

 午後5時、無事に江津駅に到着。寒さと花粉と紫外線という三重苦に加え、トンネル攻撃と小枝攻撃。生きて到着できて何よりでした。

                    

 次回は浜田・益田方面に向かってさらに西進します。またしばらくは海沿いの平坦なコースに戻ります。

  


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