第157回 周布(島根県浜田市)→益田(島根県益田市)

平成29年12月13日 曇りのち小雪 32.7q 7時間30分

禁断の山!?

 7月にはうるさいほど鳥や虫の鳴き声にあふれていた、前回のウォーキングのゴール、周布駅。5ヶ月経った今朝は、日の出前ということもあり虫の鳴き声なんてまったくなく、聞こえるのは日本海から吹き付ける風の音。とてもあの日と同じ駅とは思えない静寂の中から、今回も一人歩き出しました。時刻は朝6時30分。前方を眺めるとほんの少しだけ夜が明けかかっているような…。

     

 相変わらず島根県を西に向かって歩いているので、右手に日本海。夜明け前の冬の日本海は、暗いぶんだけ余計に恐ろしげに見えます。山陰地方で数々の神話(や妖怪)が生まれるのも分かりますね。 

                    

 しかしルートはただただ海に忠実に沿うわけではなく、時には少しだけ内陸に入り込んだりもします。そして少しでも内陸に入り込めば、そこはもう山の中。さすがに国道9号線という山陰のメインルートをトレースしているので、とんでもない獣道になったりはしませんが、それでも時に風情のある建物や看板を見かけたりはします。

 今回も山間に素敵なネーミングのギャラリーを見かけました。もちろんこんな所に学生街も喫茶店もありません(笑)。でも何だか気になるギャラリーですね。きっと「わけもなくお茶を飲み話した」くなるようなギャラリーなんだろうな。

                    

 やっと本格的に周りが明るくなってきました。左手には今までよりまた一段と高く美しい山。しかし標識を見ると驚きの山の名が! せめて「おおあさやま」とでも読むのだろうと思ったら、そうでもなくちゃんと(!?)音読みするらしい。とんでもないものが栽培されているのでは?との疑念を残したまま、僕の旅は直進して益田を目指します!

                    

 同じ日本海でも暗闇で眺めるのと明るい中で眺めるのとではまったく印象が違います。何だか優しい感じ。そして道の駅「ゆうひパーク三隅」。残念ながら朝陽の時間に到着してしまいました。道の駅自体が西向きに設置されているので(東側には山…)、当然のごとく夕日どころか朝陽すら拝めませんでした。

     

 「三隅」というこの地域は、海・山・田舎道・ローカル鉄道、と旅情あふれる要素がしっかりそろっていて、飽きることなく旅人(僕)の目を楽しませてくれます。集落の中にある三保三隅駅もまた哀愁半端なし! バックの山はそれほど大きくなく、駅の横を小さく迂回すると徒歩でも10分ほどで海に出られます。

     

 さらに「三隅」の語源は「水澄み」とも言われており、街の真ん中を流れる三隅川は確かに清流です。冬のどんよりとした風景の中でもきれいだと感じられるのですから、春秋の好天であればもうまさに「水澄み」なんでしょうね。あぁ、好天の三隅川も見たかったし、三隅の夕日も見たかったなぁ…。

                    

 そしてもう1つ、この三隅には山陰地方随一の火力発電所があります。こちらはもちろん海辺の立地。国道9号線から山を1つ隔てた街なのにそこまで限界集落になりそうな予感がしないのは、この火力発電所のおかげ(せい?)なのかも知れません。

 さて再びウォーキングは国道9号線に合流。この辺りは残念ながら歩道が整備されていないので結構怖かったりします。大きなトラックも通りますからね。それにしても京都市内から始まった国道9号線。あんなに大きな国道もついに島根県ではこんなに狭い片側1車線の山間の道になってしまいました。

                    

 小さな峠を迎えると、いよいよ浜田市を抜けて、島根県と山口県との県境に位置する益田市に入ります。横に長い鳥取県と島根県を延々と歩いてきましたが、だいぶ本州の最西端がちらつき始めました。でも標識を見ると、まだ下関ははるか彼方…。ずっと国道9号線を歩くわけではないので、実際にはもっと距離あります。

     

 そしてこの歩道橋の向こう側から振り返ってみると…。今まで歩いてきた浜田、大田、松江の文字が! 懐かしいとともに「あぁ、松江からこの辺りまでと同じくらいの距離をここから歩けば下関に到着なんだな」と、少しだけ勇気もわいてきました。こうやってゆっくりと振り返りながらいろいろ考えを巡らせられるのも、車ではなく歩き旅だからの醍醐味です。

                    

 国道脇の看板には「津和野まで37q」と書いてありますが、実は僕のウォーキングは津和野を通る予定ではありません。山陰地方のメインルートであるこの国道9号線は、益田から内陸に入ります。津和野から山口を経て下関へ。確かにこれが下関への最短ルートです。

                    

 しかし僕は第144回の旅において京都府舞鶴市で日本海と再会して以来、ほぼ日本海に沿って西進してきました。せっかくなら多少大回りになっても(本当は「多少」どころではないのですが…)このまま日本海岸を歩いて下関までたどり着きたい。

 そんなわけで益田市からは国道9号線とはいったん離れて歩を進めることになります。だから9号線のお世話になるのはあと数q。9号線とはゴールの下関でまた会いましょう。益田からは9号線に代わって、南東から益田入り(!?)してきていた国道191号線とあらたに旅をともにします。一方で同じように京都から並走してきてくれているJR山陰本線は相変わらず日本海岸を忠実にトレースするので、この先もまだまだ僕に同行してくれます。

 パラパラという感じの乾いた小雪がちらつく中、ようやく益田市の市街地へ。歩道のないトンネルはまだいくつか残っていましたが、何とか無事にクリアできました。街並みの中に大きな風力発電機が見える景色も、何回見ても風情があって素敵です。海が見えなくても海沿いであることを意識してしまい、何だか潮のにおいもしてくるようです。

                    

 益田駅まであと数百m。ここの新栄町交差点で国道9号線とお別れします。僕が無事に下関に到達出来たら、そこでまた会いましょうね。

                    

 午後2時ちょうど。昨夜宿泊したホテルのある益田駅に到着。今回の第157回のウォーキング旅はここがゴールです。昨夜は夜遅くに着き、今朝は早くに出てしまったので、明るい中での益田駅は初めて見ます。駅前は…ほぼ何もない! でも島根県西部の中心都市であり、山陰本線と山口線の乗り換えターミナル。せめて南北連絡通路だけは設置してほしいものです。

                    

 午後2時ではランチを食べられそうな店もほぼなく、駅前のジャズ喫茶で何とかご飯にありつけました。でもなかなか雰囲気のいいお店で素敵でした。

                    

 次回は益田から再び西へ。やっと長い長い島根県を脱出して山口県へ突入する予定です。


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