第158回 益田(島根県益田市)→長門大井(山口県萩市)

平成30年3月14日 快晴 51.6㎞ 11時間40分

県境を往復する旗

 長々と歩いてきた島根県もいよいよ西の端が近付いてきました。今回の出発は益田駅。小さな駅ですが、山陰本線と山口線が接続するターミナル駅。まだまだ暗い朝の4時50分、駅前のコンビニでホットコーヒーを飲んで出発です。ビルの合間に月もくっきりと見える、僕にしては珍しいナイトウォークです。

    

 京都から延々と並走してきてくれた国道9号線はここ益田から内陸へ進んでいきます。僕のウォークはさらに日本海岸を西進するつもりなので、いったんここでお別れ。ここからは新たに国道191号線が供をしてくれます。ちなみに同じく京都から同行しているJRの山陰本線は一緒に日本海岸を進んでくれますが、これまでとは比べ物にならないほど運行本数が減って頼りなくなります。

 前半のコースは戸田小浜と言われる海岸線。暗い中で海の音だけが聞こえてきます。気象用語では「日の出」時刻の前に「薄明」という時刻があります。この「薄明」には、空の衛星から見た景観を参照する「天文薄明」、地上から六等星の見え方を基準とする「市民薄明」、そして海と空の境目が区別できる「航海薄明」、の3種類があります。

 今回僕は初めて「航海薄明」を実体験できました。解像度がいまいちなのでこの写真はかなり水平線がはっきりしてからの写真ですが、本当に肉眼で水平線がぼんやりし始めるのを見るのは鳥肌ものです。

                    

 東の空が明るみ始める頃、もう一度よく目を凝らしてみると海岸沿いの堤防にたくさんの絵が並んでいることが分かりました。海水浴客でにぎわう季節や時間帯は分かりませんが、誰もいない初春の早朝の海岸線のこの風景はまさに「絵」になります。

     

 すぐ左手に萩・石見空港があるのでその関係の施設なのかも知れませんが、海に突き出したレールのような物が頭上に横たわっています。銀河鉄道999でも発着するのでしょうかね(笑)!?

                    

 本日1つ目のトンネルが人形トンネル。このトンネルの手前、右手にきれいな海が広がる地点がスタートからの3950㎞地点となりました。そして少しだけ坂を上るといよいよ島根・山口の県境のトンネルへ。歩道はあるものの結構狭い。トンネルの入り口脇には「歩行者はこの棒を持って歩いてください」という反射塗料の塗られた旗が置いてあり、トンネルを抜けた向こう側に設置されている同じようなボックスに返すことになるようです。この旗たちは県境を何往復もするのでしょうね。…ってこんな県境を歩くヤツ、そんなにはいないか(笑)。

     

 第152回のウォーキングでベタ踏み坂(江島大橋)から入り込んで以来ずっと歩き続けてきた島根県ともこれでお別れ。トンネルを抜けるとそこは山口県萩市です。ついに本州最西端の県にやって来ました。これで47のうちの22個目の都府県を踏みました。徒歩では踏み込めない北海道と沖縄県を除けばこれで半分を超えたことになります。

                    

 山口県最初の道の駅は「ゆとりパークたまがわ」。残念ながらまだお店の開いている時刻ではないので、トイレだけお借りして山口県のマップを再確認。萩市の名産は萩焼と夏ミカンです。

                    

 ここからしばらくの間8kmほどは平地をゆったりと歩けます。きれいな川沿いあり、田園とローカル電車あり。萩市の北部の中心街、須佐に到着です。

     

 須佐はその由来は須佐之男命(スサノオノミコト)。この須佐湾で捕れるイカは男命イカ(ミコトイカ)と呼ばれ絶品です。でも残念ながらまだ昼時には早くて漁師さんのお店も開いてない…。仕方ない、後日車で計測する時に再訪しよう。

 さて須佐までで今回のウォーキングは約28km。ここから後半戦に入ります。道はいったん内陸に入り、4つのトンネルで山越えをします。中でも最長のトンネルが大狩トンネルで1.5km弱。やっぱり歩道は狭い(一応車道からの段差はあります)。並走する高速道路もないので時折大型トラックも走り去る中、出口の見えない空間をたった一人で約20分。今日は日差しがキツいから涼しいのは嬉しいんだけど…。

     

 なんとかトンネルの出口にたどり着くと、ここからは阿武郡阿武町。「おうの」だと思っていましたが、普通に「あぶ」と読むようです。市町村合併をせずに萩市に囲まれている町なので、今回のウォーキングではまた後で萩市に戻ることになります。ちなみに夏ミカンが有名な萩市に対して、阿武町の名産はキウイです。

                    

 短いトンネルはまだ続きますが、1.5kmのトンネルを経験した後では怖くもなんともない。桜の花が咲き始めている景色を楽しみながらさらに1時間ほど歩を進めるとようやく日本海に再会します。海ももちろんキレイなのですが、僕は山間から海に出る直前、遠い視界に海が見え始める方が大好きです。

     

 須佐駅から約10km。ようやく次の駅、宇田郷駅に到着。正直「何もない駅」です。でもそれがいい。駅舎も味があるけど、駅を出た正面の海も青い…いや碧い! さっきの言葉撤回、やっぱり遠い海と同じくらい近くの海も素敵だわ。もし僕がJRに就職してこの駅に配属になったら大喜びしちゃうだろうな(笑)。残念ながら当たり前のように無人駅だけど…。

     

 さらに1時間ほど青い海、白い波、遠くの島々、近くの奇岩を飽きるほど眺めながら木与駅に到着。この駅も配属されたい! 開放的で素晴らしい駅ばかりだ。と思えるのは今日が春の陽気だからかな!? 真冬は厳しいだろうなぁ…。

     

 木与を過ぎると再び小さな峠に差し掛かります。歩き出しの益田からはそろそろ40km近いはず。ここへ来ての峠への上り坂はちょっと不安。でも行くしかないか! と決意したのも束の間、アッと言う間に峠に着いてしまいました。標高39m! 大きなビルの方がよほど高いですね(笑)。小さな峠で良かった。この峠は「サエガ峠」と読みます。

                    

 峠を下りきると(当然下りもすぐ終わります)奈古駅。この駅もまた開放的。ただ、正面に奈古高校(正式には萩高校の奈古分校)があるので、この駅自体の利用客数はそこそこいるみたいです。

                    

 奈古駅から500mほど進むと道の駅「阿武」。下調べが足りなかったんだけど、ここが全国で初めてできた道の駅なのかな? まぁとりあえず季節外れの暖かい…いや暑い天気になってきたので、ここでソフトクリームを補充しました。歩き始めからすでに10時間超。

     

 今回は次の長門大井駅までにしようかと思いながら道の駅を後にし、再び海沿いをトボトボと。再び阿武町から萩市に戻ります。まだ2時間くらい早かったですが、このコースも日没頃には絶景になるみたいです。今回はどの地点でも「1~2時間早かったか!」ということが多かった気がします。気合い入れて早起きしすぎちゃったかな…?

                    

 午後4時30分。長門大井駅に到着。海からはやや内陸に入った駅ではありますが、ここも相変わらず開放感あふれた駅です。帰りの益田行きの電車は約30分待ち。この時刻表を見ると日中はほとんど運行列車がないので、30分待ちで済むのは奇跡です! 地元の飯田線が神様に思えてきました。

     

 次回はさらに海沿いを歩き続けます。島根県の津和野と並んで「山陰の小京都」と言われる萩市から長門市へ。下関まではあと120kmくらいです。


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