第160回 長門市(山口県長門市)→特牛(山口県下関市)
平成30年9月6日 曇り一時小雨 33.3q 8時間0分
ここも本州の袋小路!
京都から日本海へ出て西へ西へと向かっている旅。いつか「これ以上西へは進めない」って時がくるのかなぁと思っていましたが、とうとうその時が近付いてきました。午前6時。朝焼けの長門市駅を出発。
今回も良い天気の中を歩けるのかな、と思っていたら早くも小雨がパラパラと。暑くはないんだけど、やっぱり曇っていると何だか日本海も寂しそう。今回の最初の峠である椎の木峠は23℃という、9月初旬にしては涼しすぎる気温でした。
峠を越えて再び下界へ戻ると、うっすらと太陽が。湿っているだけにものすごいムシムシ感。今日はずっとこんな感じの「小雨」「ムシムシ」の繰り返しなのかな。首タオル大活躍です。
歩き始めから2時間ほどして、久しぶりに見つけたコンビニでトイレ&ドリンク休憩。コンビニはこの先しばらくは無いはずです。小雨とは言えこんな天気なので一応ビニール傘を購入しておきました。使っても使わなくても気持ちに余裕ができますからね。何か出てきたときには武器にもなるし(笑)。
もうこの辺りは国道と言えども車の通りは少なくて、大型トラックなんかはあまり見かけないのだけど、でもやっぱり歩道の無い道よりは歩道付きの道を歩きたいものですね。今回の交差点でも僕の選んだコースは迷わず左の脇道。よく見ると右の国道は「歩道が無いうえにガードレールがある」という、歩き人にとっては逃げ道が断たれるもっとも危険な状況の道なのです。
脇道に入るとまた風情もあります。こんな大自然に包まれた道を悠々と進めたり、ふと横の池を見るとカメだかスッポンだかがキョロキョロしているし。この池の生態系とか、珍しい生き物いっぱいいるんだろうなぁ…。
大型トラックも少なくなるこの地域は、JRの山陰本線の本数もまた少なくなる地域です。もともと山口県内の山陰本線の運行本数は驚くほど少ないのですが、その中でもこの「長門市〜小串」間はさらに激減します。
おかげで駅もまた味わい深さ半端なし(笑)! 駅舎どころか、東大寺の仁王門のような「門」しかない。いや、仁王門の方がよほど堅固な門ですよね。でもこういった駅が今後もしっかりと残っていくことを切に望みます。
ふと見上げると標識に示されている「下関まで」の距離もかなり現実的な数字になってきました。一歩一歩進むことが大事です。ちなみに「下関」の下に書いてあるのも地名です。牛丼チェーン店のメニューじゃありませんよ。有名な港があり、難読地名(駅名)としても有名な「特牛(こっとい)」です。
さぁいよいよ本州最西端の市、下関市に足を踏み入れます。下関市に入ってすぐのJRの洞門横がスタートからの4050q地点になりました。
下関市に入って最初の集落は粟野、港がある漁師町です。僕の旅も船が係留してある真横を進んでいきます。どこからか「セブン、イレブン、いい気分♪」という聞きなれたフレーズが聞こえてくるなぁと思っていたら、セブンイレブンの出張販売が道端で行われていました。やっぱりコンビニ、まったく無いんだなぁ。歩いた感覚でもこの集落の前後10qずつはコンビニ(どころか商店)まったく見なかった気がする。見えるのは集落と遠くの風力発電機のみ。
長門粟野駅でドリンクを補充して少しだけ休み、僕の旅はさらに先へ。ここからまた大浦岳という小さな丘越えとなります。ウォーキング後半の登り坂はやっぱりつらい…。でも丘の上から眺める海は、これまた絶品。上ってる間は視界が遮られるから忘れちゃっているけど、そうだ、ここは海の間近だったんだよな。
再び丘を下ると阿川地区。とうとう「これ以上西へは進めない」所が来てしまいました。第144回の旅で京都府宮津市の奈具海岸で再会してからずっと寄り添ってきた日本海、僕はここで南進を始めるので「本州の北に広がる」という定義通りの日本海とはここでサヨナラです。晴れてはいないけれど、最高にきれいな日本海を最後に瞼に焼き付かせてくれました(写真左)。次はまたいつどこで会えるのかな? 名残惜しみながら信号から左折して南に向かいます(写真右)。
あと4qほど。ここからは少しだけ内陸に入ります。JR山陰本線と付かず離れずとは言うものの、歩いていると結構不安になってくるような小径。でも田畑では地元のお年寄りたちが一生懸命に農業に精を出していました。僕がバタバタ仕事してる時も、スイーツ食べてる時も、カラオケしてる時も、岩盤浴してる時も、ここではきっとこのような同じ時間がゆっくり流れているんだろうなぁ…。
かつて青森県の竜飛岬にて太宰治が「ここは本州の袋小路だ」と言いました。でも、本州の一番西の北の角っこ、ここ豊北(ほうほく)地区もまったく同じだと思います。こんなに寂しい袋小路は久しぶりに体験しました。行き止まりだからと言うことなら能登半島や房総半島も「袋小路」なんだろうけど、そことはまた一味違う哀愁が竜飛岬と同じくここにはあります。
山の中の小径をもう少し進むと踏切が見えてきます。そして線路沿いの小径の向こうにはJR山陰本線の特牛駅が! 鉄道ファンとしてこの有名な難読駅に自分の足で訪問できただけでも感激なのに、ここを記念すべき第160回のウォーキングのゴールにできるとは、まさに感無量です! 歩き始めて8時間、午後2時到着。
特牛は本来は港町です。なぜかJRの特牛駅はこんな山の中にできてしまいました。見るからにレトロな佇まい(写真左)。振り返ってみるとたった今歩いてきた小径が見えます(写真右)。付近にある民家はこの写真に見える1軒のみ。こんなロケーションで初秋の風に吹かれながら1時間ほど帰りの電車を待ちました。
猫も待ちくたびれたのか寝てしまい…。平成最後の夏が終わろうとする今、ここは平成どころかまだまだ昭和が残っていきそうです。今回のゴール地点としたからには次回のウォーキングはこの特牛からのスタートになります。またこの駅を再訪できるというだけでも、今回この駅をゴールにした甲斐がありました。
ところでこの区間の電車は当然のごとくワンマンなので乗るときに乗車券を引き抜くのですが…。くどいようだけど、この紙片が牛丼店のテーブルの上に置いてあったら絶対に「牛丼特盛」清算してしまいそうです(笑)。乗車券というものの特性上、この紙片を記念にもちかえることができないのが残念でなりません。