第163回 長門本山(山口県山陽小野田市)→新山口(山口県山口市)
令和元年6月9日 晴れ 36.7q 10時間10分
徒歩でしか気付けない魅力
今回で163回目を数えるこのウォーキングですが、実は6月に実施するのはまだ6回目です。暑いから…という理由よりは、祝日もなくて旅程が組めないからという理由が大きい気がします。今回はなぜかはるばる山口県までの旅程が組めてしまい(笑)、約15年ぶりの水無月ウォーキング、そして記念すべき令和になって初ウォーキングとなりました。
3か月ぶりに小野田支線の長門本山駅に降り立つと、そこは初夏になっても相変わらず寂寥感漂う終着駅。いいですね。正面の周防灘も相変わらず素敵です。前回のウォーキングの最後に眺めたときは夕陽差す時間帯だったので太陽が正面でしたが、今日の出発時は朝日の明るい(曇ってるけど)周防灘です。正面遥か遠くに見える九州に別れを告げて、朝7時10分、ウォーキング開始しました。
寂しい本山岬に向かうこの道も、なぜだか意外にも若者の姿が多い。しかもこんな朝8時前から。どうしてなんだろう?と思っていたらすぐに理由が判明しました。近くに(というか僕のウォーキングコース沿いに)山口東京理科大があるんですね。その山口東京理科大を横目に見ながら、早くも山陽小野田市から宇部市へと行政区は変わります。大学構内の植物も何だか南国の海沿い気分を盛り上げてくれる感じです。
こんな景色を見ながら約1時間ほどで国道190号線に到達。今回のウォーキングはここから終盤までずっとこの国道にお世話になります。まずはすき家で軽く朝食をとって小休止。だんだん暑くなってきました。
実は今回は名刹や観光地が少ないコースです。前回は壇之浦、長府など、歴史的にも景観的にも立ち寄る場所が多かったのですが、今回はひたすら国道に沿って歩を進めるだけになることを覚悟していました。でも、見るべき物なんて探せばいくらでもありますね。特に車ではなく徒歩旅の場合は、道端のほんの小さな人工物や自然も見逃すことなく目に入ってきます。ウォーキング独特の醍醐味です。
早速ですが、朝食を終えるといきなりとんでもないカラオケ店に襲われそうになりました(笑)。さすがの僕もちょっと怯みましたよ…。
そして次は自動販売機2連発。まずはとんでもない物が売られている自動販売機(下の写真左)。最初に火山灰に目が引き付けられ、その右に並ぶ「男のサプリ」が気になる。それで終わりかと思いきや、中段には「つめた〜い」に混じって「まず〜い」!? 気になりますね…。さらに左上には柿! 柿ジュースなんて存在しないだろうからカットフルーツが入ってるのかなぁ?
ちょっと進むと今度はとんでもないものが描いてある自動販売機(上の写真右)。一応モザイクかけて自重してありますが、何だかスゴい…。そしてこんな物に気付けてしまう僕もスゴいな(笑)。いや、注意力に優れているということにしておこう…。
自販機業者だけではありません。公共団体である宇部市も飽きさせない題材を提供してくれています。今回歩いているこの国道は「芸術国道」と銘打たれていて、あちこちに芸術作品が点在しています。作品にはタイトルも示されているんだけど…説明は付けられていない。最初の1つは何となくタイトルから理解ができました。
しかし…芸術とはそういうものなのだろうけど、芸術にまったく造詣の無い僕にはなかなか理解し得ないものが多かったです。特にこの「風」シリーズの2つは解釈が難しかったです。思わず道端で「考える人」になってしまいました。周囲からは僕も芸術作品群の1つに見えていたかもしれません(笑)。まぁでも勝手に思いを巡らせて悩み考えるのも芸術の面白さですね。
ちなみに宇部市内で最後に出会ったこの作品は結構気に入っていて(相変わらず意味はよく分からないです…)、今回はこの画像をスマホの待ち受けに設定しました。
ちょっと変わったものばかり紹介しましたが、初夏の自然ももちろん目の保養になりました。宇部市役所前のプラタナス通り。ザ・ランチャーズには悪いけれど「寒そな枯葉」ではなく(そもそも今は真冬でも帰り道でもない)、小椋佳さんには悪いけど「小さな街」などではなくそこそこ大きな工業都市のプラタナスだけれど、これはこれで風情ありました。市役所の隣の小さな公園も素敵すぎて、ここでまた一休み。
道端に競うように咲いているアサガオや、この日はまだ西日本は梅雨入りしてないのに先走って咲いてしまった(!?)アジサイ、いい色合いだね。ここでも思わず立ち止まってしまいます。
さらには本当に新緑美しい、ミスチル風に言うなら「名もなき池」。海沿いを歩いたわけではないんだけど、でもすぐ向こうに海が広がってることを思い出させてくれる風力発電機。観光地でなくても、ゆっくり歩けばすべてが心を洗ってくれる絶景になります。
そうこうしているうちに宇部市も終わりを告げて、いよいよ県庁所在地の山口市に入ります。第153回の旅で松江市を出てから、本当に久しぶりの県庁所在地ウォーキングになります。
地元の方は気を悪くされてしまうかもしれませんが、山口市は全国でもっとも存在感の薄い県庁所在地であるという説があります。何もかもが県内で一番手になっていない。知名度では下関市、歴史では萩市、観光では美祢市(秋吉台があります)、工業では宇部市や岩国市。位置的には山口県のほぼ中央に位置する山口市だけど、それが仇となって山口駅には新幹線はおろか山陽本線も通っていません。
でも僕はこう思います。山口市には外郎がある(笑)。しかも水羊羹っぽい、さっぱりした素敵な外郎が。もうそれで充分でしょ!と思うのは甘党の人間だけなのかな…。
しばらく歩くとまたまた目の前に芸術作品が登場。今度はまた大がかりだな、と思って説明板を読みに近付いてみたら…! これは芸術作品ではなく、宝くじ事業の推進モニュメントでした。よく考えたらもうここは宇部市じゃないから、芸術国道もとっくに終わってるんだった…。それにしても、このモニュメントはこのモニュメントで、どこに宝くじのモチーフがあるのかまったく理解ができませんでした。ある意味これも芸術です…。
眼前に山が迫ってきて、今回のウォーキングもゴールまであと5kmほどになりました。国道から離れて新山口駅へ続く県道に入ると久しぶりに山口県名物のオレンジ色のガードレールを目にします。見上げると行先標識に、山口と並んで懐かしい益田や浜田の地名が! そうか、この道は日本海側の島根県西部に続いているのか。こういう懐かしさも旅の醍醐味。芭蕉も所々で道標を見ながら、今の僕と同じような懐かしい切ない気持ちになりながら旅をしてたのかなぁ。
ちなみに浜田を歩いたのは第156回の旅、雨上がりの蒸し暑い平成29年7月でした。益田に到着したのは第157回の旅、雪が舞う中を歩いた同年12月でした。ゆっくり歩く旅だから、季節も景色も出会った人も食べた物も、本当にはっきりと記憶に残っています。
さぁ、新山口駅も間近。と思ったら最後に予期せぬ難関が待ち構えていました。歩道が段々狭くなる。ドラえもんのガリバートンネルを思い起こしましたよ(笑)。果たして通れるのか?
結論から言うと、横歩きになって何とか通過できました。10年前のダイエット前の僕だったら間違いなくこのトラップにはまってたでしょうね。努力というものはどこで役に立つか分からないものです(笑)。
午後5時20分、新山口駅の北口に到着。種田山頭火(の影)が出迎えてくれました。今回は其中庵(ごちゅうあん)は訪ねられなかったけれど、次の訪問時にはぜひ訪ねてみたいです。それにしても山頭火は43歳で出家とは、ちょうど今の僕と同じ年齢か…。山頭火は「昭和の芭蕉」と呼ばれ、僕は「平成の(令和の?)芭蕉」と自称し(笑)、いろいろカブります…。
新山口駅はかつての小郡駅です。「おごおり」、旧仮名遣いで書くと(当然右から)「りほごお」。絶対この方が良い! まぁ新山口と改称したからこそ「のぞみ」が何本か停車するようになったのかも知れませんが、僕のウォーキングはぜひ「小郡駅」に到着したかったです。残念…。
まだまだ山口県から脱出するのはかなり先になりそうですが、旧国名ではいつの間にか長門国から周防国に入っていました。次回は北進して山口市街に向かおうか、東進して防府天満宮を訪ねようか。気の向くままにゆっくり考えたいと思います。