第166回 光(山口県光市)→廿木峠(山口県岩国市)

令和3年3月10日 晴れ 28.6q 7時間10分

テューリップ(!?)の咲く街

 山口県もだいぶ東の端が見えてきました。広島県まではあと一息。でももちろん「東上り」の目的地である京都まではまだまだ先は長いです。それでもとにかく一歩一歩進まなければたどり着けません。自分の足のみを頼りにしながら、近くにある虹ヶ浜に因んだ虹に見送られて、山陽本線の光駅、朝9時20分、元気にスタートです。

                    

 目指すは岩国方面。大きく海沿いと山越え、2つのルートがあります。どちらで向かうかギリギリまで悩みました。

 もし海沿いならずっとゆったりした国道沿線となります。私の地元に国府高校という公立高校がありますが、かつて一度、愛知県代表として夏の甲子園に出場したことがあります。その時に初戦で対戦したのが山口県の柳井商業高校。残念ながら0ー1で惜敗してしまったのですが、海沿いルートはそんな僕の地元と因縁浅からぬ(!?)柳井を通過します。ちなみに柳井商業高校は現在は柳井商工高校と校名を変えています。

 他にも周防大島に渡る大島大橋を見上げることになる大畠。ここは昨年、タンカーが衝突して島に水道が通らなくなってしまうという事件が起きて有名になった橋です。さらに進むとその先には広島カープ二軍の本拠地、由宇もあります。ここは由宇温泉という観光地としても有名で、この辺りの国道はずっと海を右手に眺められる絶景区間です。なかなか魅力的な海沿いコース。

 でも結局、僕は北上して山越えコースを選びました。こちらは山賊むすびで有名な峠越えの旧山陽道ルートです。なぜ山越えの方を選んだのか、明確な理由はありません。この日の気分です。まぁ強いて言えば、下関からずっとほぼ海沿いをトレースしてきたので、ちょっと久しぶりに内陸の峠を味わいたくなった…という感じかな。例えるなら、チロルチョコばかり食べてるとたまにはハッピーターンの塩味が欲しくなるような…(笑)!?

 とりあえずルートを決めたら県道を北上。その北上を始める直前の千歳大橋手前の大きな国道がスタートからの4250km地点となりました。1時間ほどもすると、左手に現れる島田駅でJR山陽本線とはいったんお別れです。一瞬静岡県かと思ってしまう島田駅ですが、読み方は「しまだ」ではなくて「しまた」です。もし読み方まで同じく「しまだ」だったらきっと駅名は「周防島田」とかになってたでしょうね。

                    

 ちなみに隣の駅も「いわた」なのでやっぱり静岡県なんじゃないの?と思ってしまいそうですが、こちらは漢字で「岩田」と書くのでやはり静岡県の磐田駅とは違うのです。

 島田駅を過ぎてしばらくはまだ街並みや学校が続きます。ふと道端に目を向けるときれいに手入れされた花壇があって「フォースに注意」との看板。うーん、ホース(hose)は目に入ったけどフォース(force)は見当たらなかったなぁ…(笑)。僕の教員免許状の教科は一応英語なので敢えて発音にこだわるなら、チューリップの方こそ「テューリップ(tulip)」にするべきなんだけどね。まぁでも当のチューリップ、いやテューリップは本当にきれいに咲きそろっていたから、ここはうるさいこと言わずに(もう言ってるか?)花を愛でましょう。

       

 山陽自動車道の熊毛インターへの交差点を過ぎると途端に交通量は少なくなり、視界にも自然が広がり始めます。ここで行政区分はいったん光市から周南市へ逆戻り。写真では周南市を示す標識の隣に公明党のポスターが入ってしまいましたが、せっかく「山口県で撮影した山口さん」のポスターなので(笑)トリミングせずに構図に入れておきました。

       

 大自然が広がる中ですが、突然人工的な建物が現れたりします。三丘温泉を横目に見ながら通過し、寂れた感じの常妙寺でお手洗いをお借りして、山陽自動車道の高架をくぐります。山と川に囲まれてはいるものの、とりあえずここで地図上では山口県岩国市に足を踏み入れました。しかし錦帯橋や岩国城をはじめとする岩国市街まではまだ山を越えなくてはなりません。右手にはちょっと目を引く形の木々が佇んでいます。

       

 前回のウォーキング途中の徳山から離ればなれになっていた旧山陽道に、歩き始めから4時間ほどで無事に合流。ここからしばらくは本数が少ないことで有名なJR岩徳線に寄り添ってもらいます。本数が少なくてもやはり鉄道駅がコースにあるというのは安心します。米川駅の小さな駅舎を見た時に、何だかすごく安堵感を覚えました。

                    

 米川からしばらくはゆったりと旧道を歩きます。道沿いに大きな鳥居の目立つ高森天満宮。

                    

 そして吉田松陰が宿泊したと示してある碑や、旧山陽道の高森本陣跡。やはり旧街道は旅人の目を飽きさせませんね。

     
  

 高森からさらに1時間。岩徳線の玖珂駅を今日のゴールにしようかと一旦は思いました。眼前には峠が待ち構えています。時刻は夕方に差し掛かってもいる。が、冷静に考えてみるとまだ時間も体力も少しばかりの余裕はある。峠にバス停があることも確認済み。よし!峠までは進んでおこうか!

                    

 峠までの国道2号線は歩道のない箇所が多くなります。人間が歩くなんて予測してないんでしょう…。写真からもこの先、歩きづらそうな感じはすると思います。でもこの峠区間は山の中を欽明路道路と呼ばれる県道バイパスがトンネルで貫いていて、大型トラックはほとんどそちらに流れてくれます。よって思うほどに危険ではないのです。

                    

 むしろ危険なのはトラックではなくて…山賊(笑)!?山賊本陣があり(実際はドライブインです)、山賊うどん・山賊むすび・山賊どら焼き、などが売られてます。マスク着用と書いてありますね。さすが山賊、面が割れないようにしてるんでしょうか。あ、それはマスクじゃなくて目出し帽か(笑)!

       

 この山賊ドライブインがある野口峠を越えてさらに上り、いよいよ人の気配が無くなって「熊出没注意」の看板が目に入ってくるようになると、今回のゴールである廿木峠に到着です。第131回の静岡県の宇津ノ谷峠以来、久しぶりに鉄道駅ではなくてバス停がゴールになりました。

                    

 ところで「廿木峠」、難読地名ですが読めますか? 「ナントカとうげ」だよね、「ナニとうげ」だろう?って思った人、残念ながら不正解です。

 山口県では峠を「とう」とか「たお」と読みます。ここの他にも湯峠(ゆのとう)や、第161回のウォーキングで越えた梅ヶ峠(うめがとう)などがあります。ここの峠の読み方は…「はたきだお」。安芸の宮島があることで有名な廿日市(はつかいち)市で使われる「廿」を、この峠では「はつ」ではなくて「はた」と読みます。でもよくよく考えると、「廿」は「二十」の旧字体。二十歳(はたち)とか十重二十重(とえはたえ)とかを参考にすると、「廿木(はたき)」の部分はノーマルな読み方なんですね。

 そんなわけで、今回は国道2号線沿い、岩国市内にある寂しい峠「はたきだお」をゴールにしました。第158回ウォーキングで島根県益田市から入って以来歩き続けた山口県ですが、次回はいよいよ脱出して広島県に入れるかもしれません。次回は峠下りから始まります。


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