第167回 廿木峠(山口県岩国市)→玖波(広島県大竹市)

令和3年4月7日 晴れ 31.8q 7時間50分

渡るのが恐い橋、そもそも渡れない橋

 前回のウォーキングからちょうど4週間、曜日もまったく同じ水曜日です。あの日の夕方にゴールした、難読峠の廿木峠(はたきだお)バス停、今回はここから峠を下るスタートとなります。今日は暖かくなるという予報ですが、4月初旬の朝8時過ぎ、陽が当たっていない峠ということもあってやはり少し冷えています。

                    

 それでも日なたに出るともうかなり暖かい。そして、周囲に自然しかない、朝の汚されていないひんやりした空気の匂い。草が発する薫りと土が発する薫りと水が発する薫り、みんな違ってみんないい(まだ山口県内なので金子みすゞさんもこのフレーズ使うのを許してくれるでしょう)。足元には違った色のたくさんの植物が人知れず生きています。

                    

 1時間半ほど歩くと左手から清流錦川鉄道が見えてきます。人工物とは言え、やはり鉄道は田舎の風景に溶け込みます。その線路をくぐるとようやく錦川にかかる錦橋。峠から下界へ下りてきました。

       

 ここから国道はやや通行量が増えるのですが、もう少しユルリと昼前の空気を楽しみたくて、川の対岸を走る小径を選びました。写真には写ってないけど上には青空、右手には錦川鉄道の線路と藪。そして左手は写真に写るような松林と竹林、幹の間から日光の反射で眩しく輝く錦川の川面。さらに写真では表せないけど、本当にすぐ耳元で聴こえるウグイスをはじめとした鳥の鳴き声。

                    

 20分ほど歩を進めると守内橋が現れて、ここで対岸の国道に戻ることができます。この守内橋は、錦川が増水すると通行不能になる沈下橋(潜水橋)として有名です。かなり川面に近い所を通る上に、氾濫時に橋が流されてしまわないように欄干が無いので、パッと見るとなかなか恐いです。

                    

 でも橋の上では絶景。何しろ欄干が無い上に、水面に近い視点で川を眺められますからね。後半のウォーキングで通る予定の錦帯橋はここからさらに下流になります。その錦帯橋も水がキレイなことで有名なんですが、ここはそこからさらにさらに上流なので、もう「澄んでる」なんて一言じゃ言い表せません。風もなく穏やかな昼日中、ずっと佇んでマイナスイオンを浴びていたい。

       

 ちなみにこの後もう少し下流では、水量に関係なく渡れないであろう「もっと危険な橋」も見かけました(笑)。さすがにこちらは渡りませんでした…。

                    

 ここで右手には新幹線の新岩国駅が見えてきます。ここまで廿木峠からほぼ大自然の中を一人でトボトボと歩いてきましたが、ようやくコンビニやホームセンターが現れ始めました。新幹線の高架をくぐった先にある岩国インターの隣のコンビニで小用を済ませて身を軽くしました。スタートから3時間弱が過ぎました。

 ここまで来たら国道から少し離れても錦帯橋を見たいですね。錦川の右岸を走る「錦帯橋いざない街道」をボンヤリと歩きながら、少しずつ名橋に近付いていきました。ここはジョギングコースにもなっているようで、老若男女問わず時折ランナーの姿もあります。錦帯橋を発着点として距離によって折り返し地点が設定されているようで(例えば5kmコースなら2.5km地点が折り返し)所々にその表示があるので、僕も錦帯橋までの残り距離を意識しながら歩けました。

                    

 左手は錦川がゆったりと流れているのですが、右手はずっと小高い山になっていて、フッと見上げるとはるか上方に岩国城がずっしりと佇んでしました。ロープウェイで上れるようになっているのですが、今日はウォーキングなのでもちろん見上げるだけです。

                    

 本来はここは桜が咲き乱れるコースなんだなぁ。そして本来なら4月7日なんて桜が咲き乱れる季節なのになぁ。今年は異常なほどの早咲きだったので、もうほぼ散り終わっています。でも少しだけピンクが残る葉桜も嫌いじゃないし、足下に広がるピンクの絨毯もそれはそれで悪くはないな。

                    

 いざない街道を4000m歩き続けて、昼前にようやく錦帯橋に到着。錦帯橋、ロープウェイ、岩国城をすべて含めたアングルで記念に1枚撮りました。去年の9月初めに鵜飼観光に来たけれど、自分の足でもようやく到着できました。昼の錦帯橋を見るのはもう記憶にないくらい昔の話です。

       

 ここから今回のウォーキングも後半。午後からは岩国の市街地を抜けて海岸沿いに出ました。いよいよ工場群が建ち並び、岩国錦帯橋空港を飛び立つ飛行機(米軍機?)が数分ごとに轟音を鳴らします。今日は前半が山と川と城、後半は海と工場という対照的なコースです。木々の香りと川のせせらぎと潮の匂いと工業排煙(!?)を1日で堪能できる、変化に富んだ贅沢な1日。この工場群に囲まれた地域のメガガイア前がスタートからの4300km地点になりました。しかしこの辺りの国道2号線は歩道も少し狭い上にトラックも多く、前半よりはかなり気を遣います。


                    

 さてそろそろお昼を過ぎました。本当はその土地の名物をガッツリ食べたい気持ちもありますが、ウォーキングは一応スポーツなんで、その最中はあまり重いものは食べられません。だから名店に入って岩国寿司を…というわけにはいかず、コンビニで軽食を買いました。昼になってまぁまぁ暑くなってきたのでアイスとどら焼きにしようと思いましたが、買った後でよく見てみたら大福入りどら焼きだったので結局「重く」なってしまうというハプニングもありました。

       

 岩国港は工業港として有名ですが、それでも近くの海辺には鄙びた漁船も並んでいて、これはこれで潮の薫りとともに好きな光景です。

       

 多くの周辺町村が岩国市に合併されていく中で、広島県と接する和木町はずっと独立(!?)を保っています。山口県最後のその小さな和木町に入り、目を前方に移すともうすでに広島との県境の川が見えています。ついに県境! 第158回のウォーキンで島根県の益田市から萩市に入り込んで以来、日本海側から下関を経て外側を延々と歩き続けてきた山口県ととうとうここでお別れすることになります。

                    

 でも別れと出会いはセットで存在するもの。僕のウォーキングでは通算23個目の都府県、広島県に入りました。山口県から入る最初の広島県は大竹市です。

                    

 すぐに大竹駅を迎えますが、4月の午後3時はウォーキングを終えるにはまだ少し早い気がしました。せっかく体力も残ってるし、天気も穏やかで心地良いし、歩道も広くなって歩きやすくなってきたし。よし、もう1駅進もう!

 有料道路の大竹インターを越えるとそろそろ次の駅が近付いてきます。相変わらず右手からは暖かい風に乗って磯の香りが漂ってきます。標識を頼りに海から離れる方へ左折すると、今回のウォーキングのゴール、山陽本線の玖波駅がドッシリと建っていました。

                    

 次回のウォーキングからは新たな目標、岡山を目指して広島県を東進していきます。ゴール直前でフッと見上げた標識によると、岡山市までは196km…。後方を振り返ると下関までは167kmと示しています。つまり僕は下関から167km歩いてきたことになります。その距離をかみしめると嬉しくなりますが、同時にまた岡山までの196kmという長さが下関からここまでよりももっと長いことを知ることになり、先の長さをさらに実感することにもなったのでした。

     
   


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