第170回 西条(広島県東広島市)→三原(広島県三原市)
令和4年3月15日 晴れ 37.8㎞ 9時間50分
街頭テレビの残る街
全国で卒業シーズンを迎えている3月半ばになりました。僕も卒塾生の結果を受けて、少し骨休めも兼ねてウォーキングに来ました。今回は広島県中部の西条駅から出発。改札口にある駅員さんたちの温かいメッセージ(別に僕へのメッセージではないけど)を眺めながら、朝8時10分、暖かい空気の中をスタートしました。
西条は酒蔵通りで有名な街です。駅の東側に連なる酒蔵と赤レンガの煙突は、ここだけタームスリップしたような雰囲気で、ポストもちゃんと街に溶け込むようなデザインになっていました。しかし残念ながらこの時間帯では試飲できるお店も開いておらず、再訪を誓って西条市街を後にしました。
前回別れた国道2号線には戻らずに、今回のコースは少し北上して静かな県道を選びました。JR山陽本線の北側をゆったりと歩くコース。3月とは思えない暖かい空気の中で、まずは1つ目の駅、西高屋へ到着しました。電車から眺めたことはあったのですが、駅前通りは思ったよりもにぎわっていて、結局今回のウォーキングではこのあたりが一番栄えていたような気がします。同業者の学習塾もいくつか見つけました。
駅から離れると道は急に寂しくなり、ついに頼りにしていた歩道が消えてしまいました。思っていたよりも交通量もあり、どのような理由からか大型トラックも結構走っているので、所々で立ち止まりながら歩を進めていくと…!?
なんだか左手から視線を感じる!! 民家の庭に小さな「おじさん(!?)」が佇んでいました(笑)。大丈夫だよね? 僕以外の人にもちゃんと見えてるよね?
さらにさらに、またまた左の方から視線がくるなぁと思ったら、今度は屋根の上からこちらを見つめている(瓦で作られた)鳥でした。そう言えば、岡山県や広島県って、屋根の上にこのような物が乗っている家が多いですよね? 何かの縁起物なんでしょうか?
出発から2時間ほど経ったころ、次の駅、白市が近付いてきました。山口方面から上り列車でやって来ると、何本かに1本は「白市行き」という列車があります。近くに広島空港があるから終着駅になるのかなぁと思っていましたが、実際に来てみると想像よりかなり鄙びた地域でした。昭和のまま時間が止まった感じ。ふと耳に「み~かん~のは~なが~、さ~いて~いる~」と大音量の昭和歌謡が聞こえてきました。道端の電気屋さんの前に昭和のテレビ(チャンネルをまわすやつ)。しかもミカン箱の上! さすがに力道山の試合は放送されていませんでしたが、令和の現代から2つも時代が戻ってしまったような気分になりました。
白市駅から先では、JR山陽本線は僕が歩く予定の県道よりもう1本北の県道と寄り添ってしまいます。だから僕のウォーキングはここからしばらくは鉄道駅は無し。恐らくバス停くらいはあるでしょうが、1日に何本くらいあるのか見当もつかないので、山越えの向こう側まではリタイアできない覚悟で白市を後にしました。
広島空港がある山へ上り始める直前、道端に屋台風の小店が出ていました。たこ焼きとアイスクリーム。寒ければ間違いなくたこ焼きなんでしょうが、この日は5月並みの暖かさで気温も20℃を突破しそうなほどだったので、迷うことなくアイスクリームを選びました。さぁ、いよいよ山登りです!
ちなみに予想通り、バス停は所々にありました。「スクールバス」と書かれているのにも関わらず、バス停は「老人集会所」!? などといろいろ疑問はありますが、それでもさすが近くに空港があるだけのことはありました。臨空団地も近くにできているみたいですが、自然も豊かに残されていて、フッと道端を見上げるとピンクの花もチラホラ目に入りました。さらにその先の青空には飛行機も目に入るようになってきました。
小高い峠を越えると、少し向こうに銀河鉄道999の発車台が見えてきました(笑)。いや、たぶん管制路かなんかでしょうか? 飛行機を使ったことがない(当然空港になんて生まれてこの方行ったこともない)僕にはよく分かりませんが、僕はあくまでも銀河鉄道999の線路だと信じます! あの向こう側にはメーテルや鉄郎がいるはずだ。
そして空港の管制路、いや銀河鉄道999の線路を越えると、すぐに三原市に入ります。東広島市とはここでお別れ。しかし行政区は変わっても道路の様子はあまり変わることなく、初夏の日差しの中での一本道には逃げ水まで見えるようになってきました。時刻はお昼をとっくに過ぎていますが、飲食ができるようなお店はまったくありません。まぁ山越えコースなので予測していたことではありますが…。
ようやく下り坂にかかると、これがまた思っていたよりも急角度で大変でした。後ろに体重をかけながらゆっくりゆっくり歩を進めると、ふくらはぎにそれなりに負担がかかり、歩くペースは必然的に遅くなります。そんなくじけそうな時、右手に「おむすび」と書かれた幟が立ち始めました。これは意外。こんな山の中に何か食べられるようなお店があるのかも!?
「わかな」というこのお店は実は有名なお店であり、普通の民家とおぼしき敷地の中にとても素敵な食事処があり、女将が一人で切り盛りしてみえました。聞くとご主人が朝からどこかに(おそらく知人と山菜取りじゃないかということです)行ってしまっているので、入口前に立って中を覗き込んでいた僕をご主人と勘違いされたみたいです。「先日は主人は川に落ちていたから、今日はついに死んじゃってるかもね~」などと笑って話してくれました(笑)。おむすびや唐揚げ、お弁当も美味しそうだったのですが、ウォーキング中はあまりガッツリ食べられないので、この日はコーヒーとチーズケーキのセットにしました。
この近くにある名所旧所や寺社仏閣についてもたくさん話してくれたのですが、ウォーキング中はなかなか回り道をすることもできないので、いつか車で距離測定に訪れる時にまた立ち寄ることを約束して、この日はお店を後にしました。さてここからはウォーキング後半戦です。国道2号線と合流して街中へ出るまでにはまだ6kmほどあります。
高速道路の高架下をくぐり、新幹線の高架下をくぐり、石のポストが佇むお寺に立ち寄りながら、午後2時30分、歩き出しから6時間ちょっとで国道2号線との合流交差点「北方入口」へ到着しました。最後の最後の橋でちょっと道幅が狭くなりましたが、ここまで山越えとは言いながら広い県道で快適に歩けました。そしてこの交差点過ぎてすぐ、交通量の多い国道2号線、高速道路の看板前がスタートからの4400km地点になりました。
午後になって気温もさらに上がってきました。夕日もしっかり差してきて、ここで久しぶりのコンビニでクーリッシュを補充して、三原駅を目指します。看板を見ると三原駅までは11km。山越えを終えてかなり終わりが見えてきたような気になっていましたが、思っていたよりも結構距離は残っていました…。
さらにコンビニで水分を補給しつつ、夕方5時頃、やっとバイパスとの分岐に差し掛かりました。バイパスは目の前の山を貫いて三原駅に立ち寄らずに尾道へ向かいますが、僕はもちろん右へ山を迂回して三原駅を目指します。青い夕空に月もぽっかり、しかし悠然と浮かんでいます。
空の月に目をとられていましたが、足元を見るとこちらには素敵なマンホールがありました。三原市は「やっさ踊り」ですね。そう言えば駅前にもやっさ踊りの像が建てられていました。そんなことを考えているうちに、午後6時ちょうど、三原駅に到着。やっさ踊りとタコの街。駅から1kmも離れない所に三原港があり、潮風に包まれた素敵な街です。福山や尾道など、新幹線を抱える広島県内の他の都市に比べると少し知名度が落ちるかもしれませんが、長逗留したくなる空気が漂っています。
区切りの第170回の旅は三原でゴールとなりました。広島県はまだまだ東へ広がっていますが、地図を眺めると「だいぶ東部へやって来たなぁ」という気がします。次回は尾道から福山へ向かう予定です。