第173回 矢掛(岡山県小田郡矢掛町)→吉備津(岡山県岡山市)
令和4年10月24日 晴れのち雨 距離未測定 7時間20分
そうじゃ! 総社行こう!
秋の好日、早朝に愛知を出発して岡山県へ来ました。今回は日帰り弾丸歩き旅です。豊川から来られるもっとも早い行程で、朝10時20分、矢掛駅を出発です。とりあえずこの時点では秋晴れの空。
すでに矢掛高校の授業も始まっており、駅の周囲には人っ子一人いません。高校のそばを通る時にちょうど何時間目かの授業の終わり(または始まり)のチャイムが鳴っているのが聞こえてきました。そのチャイムを聞きながら、静かな静かな矢掛宿を後にしました。いったん国道486号線と合流です。
歩道はしばらくあるのですが、やはり田舎道をゆったり歩くのが好きなので、東三成地区へ向かう脇道を歩きました。道端に柿は実っているし、お散歩しているご老人には会えるし、少し汗ばむくらいの陽気でしたがゆっくりと歩を進められました。さびれた感じの小駅である井原鉄道の三谷駅、備中呉妹(くれせ)駅、そしてユルリと流れる小田川を眺めながら、いつの間にか矢掛町から倉敷市に踏み入っていました。
吉備真備(きびのまきび)駅まで来ると、だいぶ街も賑やかになり、街並ウォーキングマップの看板もありました。ここの地名は真備(まび)と読みますが、地名の由来は奈良時代の学者吉備真備公です。駅名は彼の名前から付けられたもので、駅前の朱塗りの屋根の休憩室も遣唐副使として留学した彼に由来したものでしょう。カタカナの発明者、囲碁を広めた人物としても有名な彼の香りが残るこの街並みに出会えたので、旧道の有井橋が工事中通行止で国道を歩くしかなかったことも逆に良かったとしましょう。
それでもやはり川辺宿だけはどうしても旧道を歩きたい。なぜならここは金田一耕助の生みの親、横溝正史氏の疎開先の街で、川辺本陣は「本陣殺人事件」という作品の舞台になった本陣でもあるからです。作品中に「清-駅」「高-川」「川-村」と記述があるのは、清音(きよね)駅、高梁(たかはし)川、川辺村です。横溝正史氏の疎開宅は少しコースから外れてしまうので今回は立ち寄れませんが、それでもこの本陣跡は自分の足で通っておきたい。
無事に本陣跡を踏みしめて、目の前には「高-川」こと、高梁川。散策者が多いので歩行者自転車専用の橋梁が架けられて整備されており、非常に気持ちよく通れます。時刻は昼過ぎ、朝に比べると少し雲が多くなってきました。
さらにJR伯備線の「清-駅」こと、清音駅に到着。前回のウォーキングの途中で通った神辺(かんなべ)駅から並走してきた井原鉄道もここで終わりです(運行上はもう1駅先の総社駅まで走る列車も多いです)。清音駅の入口隣には金田一耕助の顔出しパネルもありますね。小さくて見にくいかもしれませんが、よく見るとパネルの駅名は(右からの読みで)「駅-清」になっています。
さてここから今回のウォーキングは後半戦。総社の街並みを見ながら、吉備路を東へ進みます。稲刈りの終わった田、まだ刈られていない田、小さな峠、いろんな要素が楽しめる12kmですが、何と言っても見どころの1つは備中国分寺の塔。県道から眺めるシルエットも夕暮れに映えて素敵です。
しかし残念ながらとうとう小雨が降りだしてきました。あっと言う間に結構な雨になり、傘をさしながらの山陽道歩き。しかし道端の碑に「仁風恵雨」と書いてあるのを見ると、雨への恨み言を言えなくなってしまいました。そうじゃ…じゃない、そうだ! せっかくのウォーキングだから心安らかに、煩悩や悩みを流してくれる雨ということにして感謝しましょう!
造山古墳を左手に眺めながら、とうとう総社市を後にして岡山市内へ。まだまだ山が迫っている道の風景ですが、まぎれもなく岡山市内です。小さなアップダウンをくり返しているうちにかなり夕暮れの暗さが勝ってきました。西日本とは言えもう10月下旬。そして雨によるどんより空。本当は岡山駅まで歩き切りたかったけど、そろそろゴール地点を設定しないといけない時刻が迫ってきています。
山陽自動車道の高架をくぐるとまた少し視界が開けて、黄色い吉備路の田んぼが夕暮れ前最後の一輝きを見せてくれます。向こうに迫る山々の麓が吉備津(きびつ)神社が鎮座するあたりです。よし、今回は吉備津をゴールにしよう! 岡山駅まではまだ10kmほどあるけど、せっかくの吉備路は晴れた天気の中で明るい時間帯にも眺めたいですしね。
そう決めると急に雨が強くなり、そして暗闇の迫り来るスピードも速くなった感じがします。吉備津神社のある板倉宿に到着した時にはフラッシュを光らせないと写真が撮れないほどになっていました。それでも無事に吉備津駅に到着。夜の帳も下りて、街灯の光で釘の影が長くのびる駅名標から察するに、この吉備津駅は「備中高松」と「備前一宮」にはさまれた駅なので、岡山市内の駅とは言え、備中と備前のはざまの地にある駅なんでしょうね。
晴天→曇天→雨天と目まぐるしく天気が移り変わった第173回の旅、これにて終了。次回は吉備津駅を出発したらまず最初に吉備津神社を参拝して、それからどちらに向かおうかその時までにゆっくり考えたいと思います。