第177回 姫路(兵庫県姫路市)→明石(兵庫県明石市)
令和6年11月12日 晴れ 距離未測定(56,491歩) 9時間20分
人生も国道も一方通行
11月とは言え今年の秋はまだまだ暖かい。「夏日」になるかもしれないという天気予報を参考にして、もしかしたら上着を脱いで歩くことになるかもしれないと思って、それなりの服装で歩きに来ました。11月に歩くのは実は結構久しぶりです。第141回のウォーキングで京都の三条大橋から亀岡までを歩いて以来、約11年ぶりの「霜月」ウォーキングです。
始発で豊川を出て、朝8時過ぎに姫路に到着。お手洗いを済ませて準備して、朝8時20分、姫路駅を出発しました。
別名「白鷺城」として有名な姫路城を遠目に見ながら、道端のポストにも姫路城があります。この世界遺産に見送られながら、東へ向けて姫路を出発。さわやかで暖かい秋空の下、第177回のウォーキングがスタートしました。
今回はほとんどのコースが国道2号線をトレースします。国道2号線といっても現在はバイパスが開通しているので、僕が歩くのは「下道」の国道2号線の方です。よってとんでもない交通量やとんでもない大型車両は走っていません。
さて、姫路市街地のこの国道2号線はちょっと変わっています。4車線あるにも関わらず「一方通行」なのです。写真を見ても一番右の車線まで東行き(上り)の車が走っているのが分かりますね。岡山方面へ向かう「下り」の車はどうするのでしょう? 並行する県道はもちろんありますからそちらへ迂回するのでしょうか? それとも「下り」車は強制的にバイパスの方を使え!ってことなんでしょうかね。
そんな一方通行の4車線も終ると、いよいよ姫路市街地の喧騒も遠くなってきます。最初の橋を渡ると「市街地」ではない普通の街並みの中を歩けるようになってきました。白鷺城に続いて、この橋では本物の白サギに見送ってもらえました。
姫路より東側の地域はJR山陽本線では新快速が多数走っている地域です。僕もだいたい新快速を利用するので、小さな駅はあまり駅名を知りません。新快速を使う人間にとって、姫路駅の前の駅は加古川駅なのです…。でも歩いているとそのような「新快速では飛ばしてしまう」駅にも出会えます。御着(ごちゃく)駅。良い名前の駅ですね。御着城跡も見付けました。そして播磨国分寺も。残念ながら最高潮の逆光になってしまいましたが…(笑)。
ここで姫路市から高砂市に入ります。高砂市のこの地名は阿弥陀町阿弥陀。高尚な地名ですね。神様仏様を連想する地名です。そしてさらに道端の自動販売機横には久しぶりにアマビエも立っていました。そう言えばアマビエも疫病から守る「神様」でしたね。
神様と言えば、高砂市には触れないわけにはいかない神様がいます。それは鹿島神社。「一願成就」といって、一つのことをひたすらお願いし続ければ必ず叶えてくれるという言い伝えがあります。僕の歩くコースからはやや離れた高台にあるので訪ねることはできませんでしたが、国道から白い鳥居が見られる位置にあったので、ここからお祈りをしておきました。でもいろいろお願いしてしまったので、全然「一願」ではなかったから叶えてもらえないかなぁ…。
この辺りの国道はとても単調なので、坂道が無かったり歩道がずっと整備されているのは歩きやすいのですが、長距離を歩くにはこの単調さがツラくなる時間帯があります。それでも僕の場合は道端の花を見ているだけでも飽きません。この写真の花はアサガオのように見えるけど間違っているのかな。周囲の黄色い花は絶対違うと思うから、2種類の植物が絡み合って咲いているのかなぁ。
高砂市を経て加古川を渡る頃、地図上でも加古川市に入ります。加古川市内の国道2号線は両側に個人店が立ち並ぶ、とても趣のある街並みになります。すると…何と一台の車をタクシーが右側の車線にはみ出て追い越していきました。タクシーがこんな運転するの!?と思っていたら、今度はトラックまで右車線から追い抜いていきました。そしてその後続の車も次々と…。
ハッとしてよく見ると、路面に書いてある「50」という制限速度を表すオレンジ色の数字が両車線とも同じ向きに書いてあります。そうか!ここも姫路市街地と同じく一方通行なのか。だから2車線とも「上り」なんですね。きっと「下り」の車はやはり近くの県道や市道に迂回しているのでしょう。それにしても地域の人は「一方通行国道」なんて利用しにくくないのかな。
しばらくしてまたまた無事に対面通行に戻ります。正直なところ、僕はいつもなるべく道路の右側を歩いているので、対面通行だと安心します。先程のような2車線一方通行だと、歩いている僕のすぐ隣の車線を後ろから車が追い抜いていくので危険です。やはり「歩行者は右を歩く」という交通ルールは、車が左側通行である日本では意味のあるルールなのですね。
JRを高架で跨ぐ瞬間、高架橋の上から南の遠方に五重塔が見えました。地面の緑と空の青に挟まれて、なかなか素敵なシルエットです。円満寺の五重塔、この塔は法隆寺の五重塔を再現しようとして建立されたものらしいです。そりゃ、美しいわけですね。
そろそろ夕刻も近くなるころ、明石市に入りました。この辺りでは国道の右にも左にも小さな池が目立ち始めてきます。カモがユルリと泳いでいたりしてとても優雅な風景なのですが、この暑さの残る気候で水辺には小さな虫が飛んでます。夕方によく集団で飛んでいるあの虫たちです。
それでもこちらの池の風景はハッと立ち止まってしまいました。池の向こうに新しい家々が立ち並ぶ景色は、何だかヨーロッパ(行ったことありませんが)を彷彿とさせる素敵な景色です。もし水面がきれいだったら家々が水面に映ってさらに素敵なんでしょうね。
時刻は夕方の4時30分過ぎ、JR山陽本線と山陽新幹線の乗換駅である西明石駅に到着しました。西日本なのでギリギリ夕方の明るさが残っている切ない時間帯です。この交差点は今まで歩いてきた国道2号線と、南側を走ってきた国道250号線(とても広い姫路と明石をつなぐメインロード)が合流する交差点にもなっていて、交通量も人の数もとても賑わっています。
しかし僕の今回のゴールはもう1駅先の明石駅。距離は約4kmなので、おそらく1時間くらいでしょう。きっと暗くなってしまいます。それでも僕は当初の目的に向かって歩を進めます。「秋の日はつるべ落とし」とはよく言ったもので、あっという間に夕陽は沈んでしまいました。見上げるといつの間にか月がその存在感を急激に増してきていました。足元には「明石大橋」が架かり、暗い中の川の灯りが月に負けじとまたきれいです。ところで「明石海峡大橋」は垂水と淡路島を結ぶあの有名な橋ですが、国道2号線沿いには「明石大橋」なる橋も存在しているのですね。
午後5時40分、目的地のJR山陽本線明石駅に到着しました。新幹線との乗換駅である隣の西明石駅ほどではありませんが、この明石駅も明石市街の中心地にあるだけあってとても大きな駅です。駅の裏側では、夜の闇に明石城址が浮かんでいました。
さて、前回の旅日記の最後にも書きましたが、明石市は日本の標準時子午線である東経135°線、つまり地理的に西日本と東日本を分ける経線が通ることで有名な都市です。世界の基準となる経度0°の本初子午線が通るイギリスのロンドンにも、その子午線上にグリニッジ天文台が建っていますが、日本の標準時子午線上にも明石の天文科学館が建っています。その天文科学館(つまり東経135°子午線)は、この明石駅より数百m東にあります。つまり今回の僕の旅はギリギリでこの子午線を越えない地点、ギリギリ「西日本」にとどまりました。次回のウォーキングのスタートから数分でおそらくこの子午線を越えて「西日本」から「東日本」へ戻ることになりそうです。
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