第19回 三河川合(愛知県南設楽郡鳳来町)→上市場(静岡県磐田郡佐久間町)
平成11年7月10日 晴れ 12.0q 3時間0分
静岡県初見参
今回からいよいよ本格的に大自然の中に入っていきます。三河川合駅を出ると国道151号線沿いにいったん民家はなくなります。今は場違いにカーマアットホームができたようで、山あいにポッカリときれいな建物が現れますが、歩いていた当時は喫茶店が2軒(これもこれでかなり場違いに見えましたが…)あるだけで、両側に山、そして小さな川、人工建造物といえばはるか上の方を走る飯田線の高架橋だけでした。三河川合駅を出た飯田線はトンネルで山を突き抜けながら国道とともに高度をグングン上げていきます。
国道の坂は徐々に急になり、しかもこの辺りは歩行者が歩くことを予測していないのか歩道も無し。息を荒くしながら、また脇を通るトラックに注意しながら上っていきました。途中「滝見橋」という看板とともに小さな橋があり、周囲に滝を見つけようとキョロキョロすると説明板が…。「滝見橋から滝は見えません」…。じゃぁなぜ!?
坂を上りきるとまた少し集落が見えてきます。しばらく平坦な道が続き、今度は東栄町に向かって坂を下り始めます。右手には飯田線池場駅。その近くには龍でも出てきそうな池があるので、そこからの命名でしょうか。池場駅は道路から一段と低いところにあるので、車で国道を走っていると(いや、歩いていたとしても)きっと見逃してしまうでしょう。
ちなみに池場駅はまだ鳳来町(現新城市)です。三河川合駅の次の駅なのですが、前述のとおりず〜〜っと急勾配を上り続けてやって来ます。三河川合〜池場駅間は、飯田線の(というよりJRの)隣接2駅間としては最大標高差となります。マニア、いやいや電車ツウの間ではこれも有名な話なのです。
坂を下りきる(ちなみにこの下り坂は時速40q制限です。車で行く人は要注意!)直前に、鳳来町と東栄町との境界があります。現在はこんな奥深い所まで新城市なんですね。おかげで「新城東高校」は、位置的には「新城中央高校」になってしいまいました…(名称変更はしないんでしょうか?)。
東栄町は星がきれいに見える町として有名ですが、中心部はここからまだまだ先にあり、トンネルをいくつか越えなければなりません。飯田線は東栄町をほんの少しかすめるだけなので、東栄駅は東栄町の本当に外れにあります。周囲の集落も少なく、東栄町の中心部に住む人たちが飯田線を利用する場合は、車でこの駅までやって来ます。僕がかつて担任していた生徒にも東栄中学校出身の生徒が1人いましたが、一度追試で帰りが遅くなり(当然のように終電がなくなり)車で東栄駅まで送っていった時に、この駅に保護者の方がさらに車で迎えに来ていて、「ここから家までまだ車で15分くらいかかる」とおっしゃっていました。
東栄町は冬に行われる花祭りで有名です。この花祭りには鬼が登場するのですが、東栄駅の駅舎は(電車に乗っている人から見て)鬼の顔に模してあります。車で東栄駅を訪れた人も、無人駅ですからぜひ改札を通ってホームに上り、鬼の顔を眺めてあげて下さい。
さて、この日は暑い中、坂を上ったり下ったりしたためか、まだ大して歩いていないのに結構疲れはたまっていました。でも汗を拭き拭きまだまだ先へ進みます。東栄駅を越えるとすぐ三輪交差点(交通量がまずまずの割には信号機はありません)があり、ここで道は左右に分かれます。左(正確には直進ですが)はこのまま国道151号線で、東栄町中心部に向かいます。右は県道で、すぐに静岡県に入ります。気持ちとしては直進して東栄町中心部に向かいたいのですが、国道151号線はここからしばらく飯田線と離れてしまい駅がなくなってしまうので、右の県道の方を選択しました。
こちらに入ると1分も経たないうちに県境を越え、静岡県に入ります。第14回の旅で弥富町に入って以来歩き続けてきた愛知県にいったん別れを告げることになります(次に愛知県に戻ってくるのは第45回です)。ちなみにここは静岡県磐田郡佐久間町ですが、今は浜松市に合併されています。佐久間町はもともと広大な面積を持っていたので、合併された浜松市は考えられないほど大きな面積を持っていることになります。へぇ、と思う人は一度地図で確認してみて下さい。きっと驚きますよ(ちなみに静岡市もかなり広いです)。
普段静岡県に入る時には豊橋市から入ることが多いし、静岡県と言えば「海」というイメージがあるので(勝手なイメージなんですけどね)、東栄町の山奥から静岡県に入るというのは何か不思議な感じがします。思えば静岡県も半分以上は山なんですよね。「静岡」という名前も、県の中部にある「賤機山(しずはたさん)」からきています。こういった県名の由来についても、知ってみるととなかなかおもしろいものですよ。ちなみに小学生に「山がない」と思われている「山梨県」も、その由来は「山が成す」から来ています。だから山梨県には山が「たくさんある」のです。
静岡県に入るとしばらくは両側を木々に囲まれた暗い道が続きます。交通量はそこそこあるし道幅もそんなに広くないので、意外に歩くのに気を遣います。そんな閉鎖的な道を20分くらい歩くと…急に視界が開けます。左手は相変わらず山。しかし右手は川。そして川向こうにはちょっとした集落があり、この集落は平地から始まり山腹(山腹とは言ってもかなり急な山なので、まさに家がへばり付くように家がある感じです)まで続いており、住んでいる方々には失礼な言い方かも知れませんが、この風景は何か見ていて惚れ惚れします。自然と生活の融合したイメージ!
川には1本の小さな橋が架かっており、この橋を渡ると飯田線の踏切を越えて出馬(いずんま)駅があります。静岡県に入って最初の駅で(飯田線が静岡県を走っていることを知らない方も多いのでは!?)、たぶん利用者は非常に少ないと思いますが、川と田園の真ん中にある素敵な駅です。今回はこの素敵な駅を終着地にしようと思いましたが、時刻表を見るとまだ1時間余り帰りの電車は来ない! それなら飯田線は駅間の距離も短い(飯田線全96駅の平均駅間距離は2.1qです)し、もう1駅あるいてみようか、ということで再びスタートをしました。
飯田線横の急坂を上り、今度は急坂を下り、国道を横切ると…。何と左手にはもう次の上市場駅! 近い! いくら飯田線とはいえこれは近すぎる! この間、徒歩で約10分。
後で調べたところ、出馬〜上市場駅は飯田線の駅間ではもっとも短い区間だそうです(約600m)。今回はたった12qしか歩いてないのに、最短駅間やら最大標高差やら、結構中身の濃いウォーキングでした。
上市場駅は民家の庭先から細い道を上って行った所にあります。駅があることを知らないと入り口を見逃してしまうかも知れません。花に囲まれた、時間がとてもゆっくり流れる駅で、隣の出馬駅とともに、この地域に来たらぜひ訪れてほしい駅です。
次回はさらに奥へ進み、飯田線の中心駅、中部天竜駅へ到着します。