第20回 上市場(静岡県磐田郡佐久間町)→中部天竜(静岡県磐田郡佐久間町)

平成11年7月29日 晴れ 8.6q 2時間0分

地域間格差を考える

 今回歩く佐久間町地域は、車で来るのが非常に大変な地域です。準プロドライバーの僕でさえ、できればあまり運転しては行きたくない地域です。そのため前回も今回も車は三河川合駅に置き、電車でやって来ました。3回続けて車は三河川合駅にお世話になったことになります。

 今回の終着地は約8q先の中部天竜駅と決まっていました。それはそこから先のコースの下見が済んでいなかったから。駅はあるのか、コースは安全か、などなど。だから今回は最初から短いウォーキングになることが決まっていたので、非常に気楽でした。

 上市場駅を出発すると、前回のラストに歩いた「出馬〜上市場駅間」ほどではないにせよ、次の浦川駅もすぐに目に入ってきます。この駅も飯田線の駅の中では大きな駅の方に入ります、それでも無人駅ですけど。駅の周りにもにも(あくまでも他の駅に比べると、ですが…)集落が形成されています。

 しかしその集落もアッという間に途切れ、道は少し開けた三叉路に出ます。錦橋交差点です。そう言えば信号機は久しぶりです。この前に出会った信号機は三河川合駅を出てすぐの辺り(ちなみにこの信号も横断歩道用の信号機だったので、実際に交差点に立っている信号機は三河川合駅よりも前になります。つまり前回のウォーキングでは一度も交差点信号機に出会わなかったことになりますね!))なので、この信号機は正真正銘、静岡県に入って初めて出会う信号機ということになります。

 余談になりますが、かつて愛知県の北東端に富山村(とみやまむら)という村がありました。現在は隣接する豊根村と合併しています(豊根村は東栄町よりさらにもう1つ向こうにある、長野県と接している村です)。この富山村は、離島を除くと日本でもっとも人口が少ない村ということで有名でした。この村には富山小学校があり、その学校の正門前に村で唯一の信号機がありました(押しボタン式の横断歩道用の信号機です)。はっきり言ってこの信号機は、交通量を考えるとほとんど必要ないと思われる信号機なのですが、何でも村の子供たちが将来、村の外に出ていった時に(信号機を見たことがなくて)困らないように、いわば教育用に設置されたものだそうです。同じ日本にも(いや、同じ愛知県にも)いろんな地域があるのです…。

 さて話をウォーキングに戻しましょう。錦橋交差点を右に曲がるとあとは中部天竜駅までほぼ一本道です(距離はかなりあります)。左手はガケがまさに壁のように続き、右手にはこの先で天竜川に合流する大千瀬川(おおちせがわ)。道もそれほど広くなく、時折車が通ると結構気を遣って歩かなければなりません。恐らく(というか僕もそうなのですが)車同士のすれ違いはもっとイヤなんではないでしょうか。

 そうこうして歩いていると後方から何かサイレンが…。だんだん音が大きくなってくると、やはり救急車。細い道なので車もすべて脇に寄り、(もちろんたった一人の歩行者である)僕も邪魔にならない所で立ち止まる。救急車はあまりスピードを上げずに(上げることもできずに)走り去っていきました。しかし一番近い集落でもここからかなり先。急病人、間に合うのかなぁ…。

 豊川市では普通、救急車は5分足らずで到着します(救急車が出払ってしまっている時は除く)。でもこの救急車の光景から察するに、20分くらい経たないと到着しない地域もあるのでしょう。何だか「地域間格差」というものをまざまざと感じさせられた気がします。さっきの信号機の件といい…。政治家は道路税を道路族に渡している余裕があるのなら、こういう所の道を整備してほしいものです。

 この辺り、飯田線はまた右手の川向こうの山の中を走ります。その飯田線と再び接近するのは下川合駅。中部天竜駅の1つ手前の駅です。僕が歩いている道からは川を渡って下川合駅へ行けますが、特に何があるわけではないのですが、この道は僕のとても好きな道です。民家はほんの少しだけあり、またブランコしかないような小さな公園、そして河原に下りる小さな小径、3時間くらいここにいても僕はきっと飽きないでしょう。また4〜5月頃に訪れれば、川の対岸からこちらの岸まで大きな鯉のぼりがたくさん泳ぎ、晴れた日なら一日いてもいいでしょう。まさに自然欲のメッカ!

 ここを通過するといよいよ中部天竜駅はもうすぐです。相変わらずガケにへばりついているような道ではありますが、右手前方に高校も見えてきます(佐久間高校です)。天竜川を小さな橋(原田橋)で渡るのですが、この橋は大型車2台は通ることのできない橋です。国道としては(忘れていましたがここは国道でした…)かなり異例の小さな橋ではないでしょうか。ちょうどこの橋のすぐ右手で、佐久間ダムから流れ出た天竜川が、さっきまで右手を流れていた大千瀬川と合流します。

   

 橋を渡ると道は前方で3方向に分かれます。右前方の道はさっき見えていた佐久間高校へ。左前方の道は坂を上って佐久間ダムへ(ただし回り道にはなりますが中部天竜駅にも行けます)。そして真ん中の道は商店街を通り抜けて中部天竜駅へ向かいます。今回はもちろん真ん中の道を選択するつもりで来ました。ところが…。

 実際にこの地点まで来てみると、何と真ん中の道は工事中! 落盤事故で通れないとのこと。まぁ山間部の道というのはよく通行止めにはなるのですが、今回は車で来ているわけではないので(車なら来た道を引き返すことができます)一瞬どうしようか迷いました。結局仕方ないので左前方の道を選択し、少し大回りになりましたが無事中部天竜駅が見えてきました。

 ケガの功名というか、この道を選んだおかげで、坂の上から中部天竜駅を含む素晴らしいパノラマを眺めることができました。坂を下っていくと中部天竜駅への入り口の交差点です。交差点名は「中部」。「中部天竜」という名前はここからきているのかと思いましたが、この交差点はどうやら「なかべ」と読むらしいです。やはり地名は難しい…。

 天竜川にかかる中部大橋(歩道もあって歩きやすかった)を渡ると、すぐ右手が今回の終着地である中部天竜駅。飯田線の中ではかなり大きな中心駅で(この駅終点という列車もあります)、鉄道博物館も併設されています。乗車券があれば入館できるのですが、この日は運悪く閉館日でした。僕はこの駅には電車や車で10回くらい訪れていますが、そう言えばいつも閉館日だなぁ。

   

 この日はたった8.6q歩いただけだったのに、暑さのためかとても疲れ、電車の待ち時間に駅横の喫茶店でかき氷を食べました。電車を待つこと2時間半(この間電車はないのです)、ようやく三河川合方面に帰る電車が来ました。よくよく考えてみると、2時間歩いて、電車待ちは2時間半。何だ、歩いて帰った方が早かったじゃん(体力があれば、の話ですけどね)!

 最後に、中部天竜駅の改札口にも東海道本線の駅と同じ標語が貼ってありました。「駆け込み乗車はキケンです。次の電車を待ちましょう!」…って10分くらいなら待ちますけど、次の電車は2時間以上先ですから…。ちょっとこの標語はどうなんでしょうね!?

 次回は中部天竜駅を出発します。まだ自然を満喫する区間が続きます。


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