第22回 瀬尻(静岡県磐田郡龍山村)→横山町(静岡県天竜市)

平成11年9月19日 晴れ 14.8q 3時間10分

最大の幸運は最悪のタイミングで訪れる

 珍しく前回のウォーキングから1ヶ月以上が経過しています。夏休みの後半が忙しくて歩く暇がなかったとか、そんな理由ではありません。どうしても前回の最後に見た、自動販売機の硬貨投入口をふさぐクモの残像が頭から離れなかったのです。8月はきっと虫が多いだろう。9月に入ってからにしよう、と。しかしこれがまったくの裏目に出ようとは…。

 前回の旅日記にも書いたように、この辺りの天竜川はダム湖のような静かな水面をたたえており、その右側に国道、左側に県道が走っています。国道はそこそこ交通量があり、県道はほとんど車が来ない。その分、県道の方は木々も生い茂り自然感あふれるコースとなっています。前回は国道が崩落していて通行不能であったためやむなく県道を歩きましたが、今回は国道の方を歩こうかなぁと当初は考えていました。

 ところで今回のウォーキングから車を置く場所が大きく変わりました。前回は山深くの中部天竜駅(つまりウォーキングの出発地)に置いたのですが、今回は天竜市街の天竜二俣駅(つまりウォーキングのゴール付近)に置かせてもらい、その近くの双竜橋バス停から西渡行きバス(前回の帰りに利用したバスです)を利用して、出発地の瀬尻まで来ました。だから、バスに揺られながらこの日にこれから歩くコースを(歩く向きとは逆向きに)下見することができたわけです。すると…

 なんと瀬尻を出発するとすぐに、国道には長い長いトンネルがある。しかも交通量がかなり多く、歩道もない! ここを歩くのは無理だ! 仕方ない、今回も県道の方を歩こう、ということに急きょ決定しました。ゴール地点に車を置くと、こうやってその日に歩くコースをしっかり下見しながら出発地点へ向かえるので、ある意味利点が多いのかも知れません(もちろん下見は済ませてあることがほとんどなのですが、その日にたまたま事故で通行止めってこともまれにあるのです)。ちなみにこの長い長いトンネルは、トンネル内で天竜川にかかる橋に向けての分岐点(交差点)があり、信号機もなく真っ暗な中で突然交差点が現れるので車で走っていても非常に危険です。全国の運転マニア(世の中にはいろいろなマニアがいるのです)には知られた場所でもあります。

 そんなわけで今回も木々の生い茂る県道をトボトボと歩きました。右手の天竜川は秋葉ダムの一部になっており、緑色の湖面をキレイに見せてくれています。この車の来ない、落ち葉で埋もれた県道が、スタートからの400qポストになりました。そして右手には秋葉ダムの記念碑が見えてきて、ちょっとした広場もあります。ここで少し休憩!

 この広場は駐車場もあるので、ドライブしたときには是非立ち寄ってほしいスポットです。天竜川の水面と立ちはだかる山々を、まさに眼前に仰ぎ見ることができ、しかもあまり人影はないのでゆったりとしたくつろいだ時間・空間を手に入れることができます。僕もここでしばし風景を楽しませてもらいました。そしてそこの自動販売機で冷茶を買って…えっ!!

 なんと「大当たり! もう1本!」 しかしそんなに飲めないし、今はウォーキング中だから持って歩くのも重いし…。でも結局2本目のお茶を手に持ったままこの先何qも歩き続けることになりました。まさかここにおいていくわけにもいかないしね。この時のお茶の重さを僕はきっと忘れない! 僕は記憶している限り、自動販売機でもう1本当たったのはこの時だけです。言ってみれば人生最大の幸運だったのに、それが最悪のタイミングで訪れるとは…。これがまさに「マーフィーの法則」!

 ところで僕が中学生の時、自動販売機の「当たり」には時間制限があるということを聞いたことがあるのですが、果たしてこれは本当なのでしょうか? その人の話では、当たったにも関わらず買った缶ジュースが落ちて転がってしまい、それを拾いに行って戻ってきたらすでに時間切れになっていた、とのことだったのですが。皆さんはこの話、どう思いますか? 都市伝説なんでしょうか? でも確かに当たったことに気付かず立ち去ってしまう人もいるでしょうから、いつまでも「当たり」の状態に放置しておくわけにはいかないと考えるのが自然のような気もします。そういう意味で「時間切れ」は確かにあるんでしょうね。

 川のほとりに小さな建物があり、そこでちょうど運動会を実施していました。後で調べて、そこが龍山小学校であるということが分かりました。きっと町民(村民?)体育大会のようなものだったのでしょう。BGMが心地よい風に乗って流れてきて、何だかパターゴルフのような競技をしているのが見えました。小さな町の運動会は、町全体が一体になったイベントという感じがしていいですね。大きな学校の体育大会というのは、フラフラ遊んでいる生徒がいて、それを教師が注意して、そこへ卒業生がバイクの音を鳴らしながら入ってきたり、…と見ていてとても嫌な雰囲気がありますから、小さな町の運動会はそれに比べてとても好きです。

 この龍山小学校の脇には龍山大橋がかかっていて、これを渡ると天竜川の右岸に戻ります。この橋は「大橋」という名称が冠せられているものの非常に小さく、重量制限により大型車が通行止めになっています。通行するのがよほど危険らしく、大型車が絶対に立ち入ることができないように橋の両側に車止めが置かれていて、一定の幅を超える車は進入できません。僕はもちろん徒歩なのでこの橋へ進入していきました。

   

 この橋の向こうから天竜市に入ります。「市」に入ったと言ってもまだまだ大自然の中。龍山大橋以前よりも木々は覆い被さるように深くなり、日光がまったく入ってこない。そして後ろの方から「ブーン」という音がして蜂が接近! 必死で身をかがめてよける! すると足下には蛇が静かに鎮座! 今度はジャンプ! いやー、とぐろを巻いている蛇ってゲームの画面の中でしか見たことなかったですが、本当にバネのようにとぐろを巻いているんですね。上からも下からも虫の攻撃!! 虫(厳密には蛇は虫ではなくセキツイ動物ですが)が怖くてわざわざ9月下旬になるまで待っていたのにぃ…! まぁ、怖かったですが、いい経験をしました。この蛇は満腹だったらしく、特にこちらにむかって襲ってくることもありませんでした。

 ようやく天竜川右岸を走っていた国道に合流、しばらく歩くと左手に大きな鳥居が見えてきます。ここは秋葉神社への入り口。とても有名な「火の神様」だそうです。名前ぐらいは聞いたことがあったのですが、どうやらうちの家神だそうです。この時は残念ながら立ち寄ることはしませんでした(というより山の上にあるのでそう簡単には立ち寄れないのですが…)。これも後で調べたことですが、静岡県南部にある「法多山(はったさん)」と対峙する神社だそうで、一説には秋葉神社と法多山の神様は仲が悪いという説もあります。

 もう1つトンネルを抜けるとようやく信号機が見え、少し大きな集落に入ります。ここに横山町というバス停があり、今回はここを終着地としました。ようやく天竜川は優しい顔を見せ始め、バス停からちょっとゆっくり天竜川を眺めながらバスを待ちました。蛇にも蜂にも負けず、無事に歩き終えたことを祝しつつ、ずっと持ち歩いてきた「当たったお茶」を飲んで座りました。

 次回はようやく天竜二俣駅まで到達し、久しぶりに電車の駅にたどり着きます。


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