第24回 天竜二俣(静岡県天竜市)→細谷(静岡県掛川市)
平成11年11月7日 晴れ 20.4q 4時間30分
ただ見る天竜川の天際に流るるを
今回も、三たび天竜二俣駅に車を置かせてもらいます。この駅は大きな駅であるにも関わらず無料の駐車場があるので、非常に助かります。他の駅も見習って(!?)ほしいものです。
今回の出発時刻は朝の9時。天竜二俣駅は御油から車を飛ばして(高速を使わずに一般道で)約2時間です。だから朝ちょっと遅めに起きても、このくらいの時刻には天竜二俣駅に到着できます。
今回のコースは最初の数百mのみ天竜川とともに歩きます。中部天竜駅からほぼ一緒に歩いてきた天竜川との「最後のひととき」。今までの山あいのコースとは違いここは平野なので、天竜川はまさに天に昇っていくように水平線まで悠然と流れています。あの水平線辺りはきっと遠州灘(太平洋)でしょう。視界に山はまったくなく、川と遠くの市街地が見えるだけです。そして空は青!
中国の漢詩に「黄鶴楼(こうかくろう)にて孟浩然(もうこうねん)の広陵に之(ゆ)くを送る」という李白の詩があります。友人の孟浩然が舟で長江を下って行くのを、李白はその舟が見えなくなってもまだ眺め続け、そこにはただただ長江が水平線(天際)まで流れ続けるのみだ、という中国らしい雄大な詩です。しかし今ここから僕が見ている天竜川は、それに勝るとも劣らない素晴らしく雄大な景観です。行く機会に恵まれた人は、ぜひ天竜二俣駅付近のこの堤防沿いから、天際に流れる天竜川の風景を眺めてみて下さい。
最後に素晴らしい姿を見せてくれた天竜川とはここで別れ、僕は左(東)の方へと道を折れていきます。こちらは前回の旅日記で紹介した天竜浜名湖鉄道とお供することになる県道です。天竜市からすぐに磐田郡豊岡町に入り、さらに周智郡森町に入るとそこは一面茶畑の世界! 道はしばらくまっすぐで、右も左も茶畑と風力発電施設のみ。これを静岡県と言わずしてどこを静岡県と言う!? という程の茶畑パノラマ(しかしこの2回ほど後の第26回で歩く牧ノ原台地もすごかったですが…)。
ところで、全国の47都道府県の中で、ガンでの死亡率がもっとも低いのは静岡県だということを皆さんはご存じでしたか? その理由ははっきりしていて、静岡県民は他県の人に比べて3倍はお茶を飲むからだということ(らしい)。お茶に含まれるカテキンだかテアニンだかが、ガン予防に非常に効くという話です。でもそんなにはっきりとデータに現れるものなんですかね!? 宇治茶を飲む京都府は全国で何位くらいにランキングされるんでしょう? う〜ん、気になってきました。
静岡県でお茶の生産が盛んな理由は、もちろんその温暖・多雨な気候にあるのですが、さらに茶畑は山の急な斜面にも作ることができるということも関係しているようです。お茶栽培が始まった当時は、静岡茶がそれほど全国的に売れ渡っていたわけではなかったのですが、ある賢い静岡県人がお茶を香典返しの定番品として売り出してからは、静岡茶は爆発的に売り上げが伸びたそうです。そのうたい文句は「飲むと消えて無くなるお茶は、悲しみを早く忘れるための香典返しにぴったり」というもの。どんな商品でも、考えればキャッチフレーズは作れるものなんですね。
さて、この茶畑の中を歩いてると向こうから小学生の男の子が自転車に乗って走ってきました。歩道はあまり広くはないので、僕の方が少し脇によけて待っていると…。「おはようございます! ありがとうございます!」 大きな声で気持ちいい挨拶が飛んできました。一人で歩くウォーキングは自分から声をかけることがあまり多くはないので、こうやって挨拶をしてもらうととても気持ちがいい! 前にも書きましたが、住人や通行人が挨拶をしてくれたり、「乗せていってあげようか」と声をかけてくれたりするのは、なぜか決まって静岡県民なんですよね。どうしてなんでしょう? 元来、気の優しい人が多いのでしょうか? それとも地域教育がしっかりしているのでしょうか?
しばらくすると茶畑はいったん消え、右手に遠江一宮駅が見えてきます。全国にあるたくさんの一宮のうちの1つです(第17回の旅日記参照)。ここの一宮は「小国神社」という神社を指すらしいです。ただこの駅はあまり大きくはないので、車で走っていると見過ごしてしまうかも知れません。遠江一宮駅、円田(えんでん)駅、遠州森駅などと続き(同一路線なのに「遠江」だったり「遠州」だったり統一されていませんね…)、原田駅からが掛川市になります。いよいよ天竜浜名湖鉄道も終点が近くなってきました。
この辺りは、最近新しいバイパスが次々と開通しているため、車での走り心地はいいのですが、道がだんだん分からなくなってきました。まっすぐ進んでいたと思ったら「あっ、バイパスはさっきの交差点を右折だった〜ぁ!」ということもよくあり、今ではあまり車でこの辺りは通りません。まぁ歩いていたこの頃は一本道しかなかったので特に迷うことはありませんでしたが…。
今回は20qを少し越えたところ、細谷駅を終着地としました。県道沿いにサークルKがあったので、昼ご飯もまだだったこともあり(時刻は午後1時30分)おにぎりを買って、電車を待っている間に駅で食べました。ただ、この駅、ハエが多かった…。季節の関係もあるんですかね。
次回は掛川駅を越えて、菊川に到着します。