第37回 日出塩(長野県塩尻市)→奈良井(長野県木曽郡楢川村)
平成12年6月4日 晴れ 12.6q 3時間10分
今度こそ、いよいよ木曽路へ
さぁ今日からいよいよ木曽路を歩くことができる、と意気込んで日出塩駅をスタートしました。すぐに塩尻市から楢川(ならかわ)村に入ります。この境界に「これより南、木曽路」という道標が国道脇に建てられており、ここからが名実ともに木曽路になります。木曽路の反対側の入り口である中津川市に「これより北、木曽路」の標識がありますから厳密にはそこまでが木曽路ということになるのでしょう。
楢川村は、正確には木曽郡楢川村です。ここから中津川市の直前までず〜〜っと「木曽郡」が続きます。通過する町村順に列挙すると、楢川村、木祖村、日義村、木曽福島町、上松町、大桑村、南木曽町、山口村となり、このうち最後の山口村は当時長野県の南端(木曽路において)に位置する村となっていましたが、今は越県合併をして中津川市として岐阜県に入ってしまっています。市町村合併によって「県」が変わるというのは非常に珍しいことなのですが、実際には山口村の人たちは長野県民でありながら岐阜県の中津川市の方に働きに出ている人が多かったので、村民からの岐阜県への合併要望は大きかったそうです。
木曽路は旧中山道の一部ですが、中山道六十九次の宿場町のうち木曽路にあるのは11宿です(木曽十一宿と呼ばれます)。そのうち一番北にある贄川(にえかわ)宿はもうすぐ。この時期は贄川宿の近くの国道19号線が歩道の工事中で、仮歩道への回り道を余儀なくされました。この仮歩道がまた驚くほど高いガケの上にあり、久しぶりに高所恐怖症だということを思い出させてくれました。でもおかげで高い場所から木曽路を眺め渡すことができました。
贄川宿の近くでは民家から流れるラジオから大音量の長渕剛(とんぼ)が聞こえ、口ずさみながら次の集落、木曽平沢宿へ。そしてその先に次の宿場町、奈良井宿が待っているのですが、奈良井までの道筋は進行方向とは逆向きに流れる奈良井川と併走します。この川は北へ向かって流れ、下流で(他の川と合流して)信濃川となり日本海へ注ぐ川です。奈良井宿の先にある鳥居峠の向こうからは太平洋に注ぎ込む木曽川が南へ向けて流れ始めるので、言ってみれば奈良井宿までが日本列島の(中部地方の)北半分ということなのでしょう。
奈良井宿は長野県のガイドマップにも必ず登場する観光地です。目の前に前述の大きな鳥居峠があるので非常に閉塞感があり、右・左・前と三方に高い壁が立ちはだかっているようです。木曽十一宿の中でも当時の趣が残る宿場としては一位二位を争うものでしょう。旧道には昔ながらの店が建ち並び、土産物屋には旅人用のわらじや傘が陳列してある。まるで本当に(言い過ぎではなく)江戸時代に戻ったようです。そして何と言っても素晴らしいのは、この宿場には「陰」がある。言い方は少しおかしいかも知れませんが、南・東・西に立ちはだかる山々のおかげでほとんど一日中直射日光が当たらないので、他の宿場とは比べ物にならないほどの物静かな雰囲気を醸し出しています。この宿場は近場に来たら絶対に立ち寄らなきゃ損です!
今回はこの宿場町の端にある奈良井駅を終着地としました。次回は鳥居トンネルを越えてさらに木曽路を南下します。