第5回 関ヶ原(岐阜県不破郡関ヶ原町)→醒ヶ井(滋賀県坂田郡米原町)
平成11年1月23日 晴れ 14.1q 3時間0分
チカンの出る町!?
足を傷めた前回の大旅行から1週間もたたないうちに、早くも旅の虫がうずき始めてきました。この頃は前にも書いたとおり大学の卒業も決まり、また4月からの就職も決まっていたので、気分的には生涯で一番気楽だった頃かも知れません。まぁこういうことは後から振り返って気付くもので、この時はそんな事は思ってもみなかったですけどね。
今回は関ヶ原から国道21号線を西へ進みます。実は関ヶ原から北上して木之本方面へ向かう計画もあったのですが「歩道がない場所がある」「40q近く駅がない」などの理由で却下となり、結局旧中山道(「きゅうなかせんどう」です。「いちにちじゅうやまみち」ではありません)に沿って西へ向かうことになりました。でも木之本方面はこの数年後に結局歩くことになるんですけどね、まぁまたその話はその時に…。
国道21号線と言えば岐阜市内を東西に走る幹線で、バイパス化もされており交通量の多い国道というイメージがあると思います。岐阜市内に造詣が深い方は絶対に知っている国道ナンバーだと思いますが、この国道21号線は別に岐阜市内だけを走っているわけではありません。起点は同じ岐阜県の瑞浪市であり、そこからちょっとした山間部を抜けて各務原市から岐阜県へ、さらに大垣市から隣の滋賀県に入り、米原町(現米原市)を終点としています。そして岐阜市以外の両端地域ではバイパス化もされていなければ中央分離帯もなく、片側一車線の非常に「狭い国道」となっています。今回歩く地域もそのような「狭い国道」部分で、非常に趣のある道になっています。関ヶ原の合戦で傷付いた兵士たちが血を洗ったことから命名された「黒血川(くろちがわ)」を渡る辺りは、まさに秘境の一歩手前。夜にはきっと合戦で命を落とした亡霊たちが横断歩道を渡っていることでしょう…。
旧中山道はここらから今須宿に入ります。国道21号線から左に脇道が分かれ、せっかくなのでこちらを歩いて宿場に入りました。今では非常に小さな町(というか集落)ですが、中学校や郵便局もちゃんとあり、何だか人間の臭いにホッとしました。しかしこの宿場はすぐに途切れ、歩いていた脇道は国道21号線を渡り反対側(国道の右側)に入っていきます。線路も渡り、今までよりもさらに寂しい集落が続きます。ここは岐阜県と滋賀県との県境です。
岐阜県と滋賀県との県境は、愛知岐阜間や愛知静岡間の県境とは少し違い、あまり大々的には表示されていません。JR東海道本線も、岐阜滋賀の県境にあたる大垣駅〜米原駅間は他の区間に比べて異常に運行本数が少なくなっています。これは岐阜県と滋賀県の県境がただの「県境」ではなく、中部圏と近畿圏との「圏境」にもなっており、人や物の動きがとても少ないということに原因があるようです。確かに越県(越圏)通学や通勤、通院なんてあまりありませんからね。
しかもこの旧中山道沿いにおける岐阜県と滋賀県との県境には大きな山や川もなく、本当に小さな側溝のようなものがあるだけです。歩いていても知らないうちに県境をまたいでしまうくらい(実際には説明板があったので、どこが県境かは分かりましたが)で、いわば隣人どうしが隣県の県民だったりするわけです。岐阜県はとても広いので、この地域の岐阜県民にとっては、同じ岐阜県民の遠い飛騨地方の人たちより、隣県とはいっても隣人である滋賀県民の人たちの方に親しみがわくでしょうね。隣県の人(隣人)と夜寝ながらにして話ができる、そんな所からこの地域の集落は「寝物語の里」と呼ばれているそうです。何だか少し色っぽい、素敵な名前です。
寝物語の里を過ぎると民家はまったく見えなくなり、JRの線路の右側をとぼとぼと寂しく歩くことになります。次の町(集落)までそんなに遠くはないのですが、ここはかなり薄暗くてちょっと怖い。ふと道端の看板を見ると…
「あなたの後ろにチカンがいます!」
まぁただの呼びかけ的警告板なのでしょうが、男としては何だか自分がチカン扱いされているようで、ちょっとムカッときますね。
次の集落はJR東海道本線の柏原(かしわばら)駅のまわりに発達しています。この駅は(愛知県側から行くと)関ヶ原の次の駅、つまり滋賀県に入って最初の駅になります。それほど大きな集落でもないので、またすぐに寂しい一本道に逆戻りです。しかも今度は東海道本線の線路も山向こうに離れていってしまい(山向こうに「近江長岡」という駅があります)、本当のひとりぼっち。すると…またもやさっきと同じ内容の「チカン警告板」が! 何か本当に濡れ衣を着せられた感覚になってきました。気分悪い! もしたまたま僕の前を一人の女性が歩いていて、しかもその女性が看板を見て急に駆け出したら、きっと本当に「自分がチカン扱いされる」的な気分が倍増するんでしょうね。
梓河内交差点で再び国道21号線に合流します。この辺りは名神高速道路と併走しているものの、やはり非常にさびれた(つまり趣のある)地域が続きます。ほどなく山向こうを走っていた東海道本線も右手から合流し、醒ヶ井駅に到着となりました。朝8時から歩き出したので時刻はまだ11時でしたが、車を関ヶ原駅近くに路駐してきてしまっていたのも気になっていたので、(本当は米原駅まで行きたかったのですが)今回は醒ヶ井駅を終着地とし、二度もチカン疑惑をかけられたウォーキングは終了となりました。
最後に一言断っておきますが、路駐とはいっても僕は断じて違法駐車はしていません。教習所で習ったとおり、道幅・交差点からの距離・駐車時間等を考えて、もちろん駐車禁止指定されていない場所に、すべて合法的に駐車しています。もし僕のマネをして長距離ウォーキングしようとする人がいたら(もしいれば…ですが)、その点は十分にご注意下さい。
次回は醒ヶ井から南下して彦根方面に向かいます。