第63回 桔梗が丘(三重県名張市)→伊賀上野(三重県上野市)
平成14年7月14日 晴れ 18.3q 4時間10分
別れの言葉を考えつつ…
この旅日記は冒頭に書いてあるように松尾芭蕉の「奥の細道」に多大な影響を受けて始めたものです。その意味で、この第63回は「聖地」を歩く旅です。松尾芭蕉の出生地である「伊賀」を歩くのですから…。
松尾芭蕉は実は忍者なのではないかという説があります。それには一日に50q近くも歩いているということや、奥の細道の旅でわざわざ東北地方を訪ねる目的がないこと(よって公儀隠密ではないか)などいろいろな理由がありますが、芭蕉が伊賀の出身であるということも決して無関係ではありません。実際はどうなんでしょうか。まぁこういった「謎」は、「謎」のまま置いてある方がロマンがあっていいですけどね。
こんな旅日記を残していると、僕もいつか将来(死んだ後)「羽田英生って実は公儀隠密だったんじゃない!?」とか言われてしまうような気がしてきました。だってこんな徒歩旅、一般から見たら意味のないくだらない愚行にしか見えないですから。それでも気にせず、僕は歩き続けますけど!
桔梗が丘駅を出発するとすぐに上野市に入ります。「上野」っていうと先に東京の「上野」を思い起こしますが、「上野市」は意外にも三重県にあったのですね。高速道路は走っていませんが、名阪国道という高速道路並の規格の道路が走っています。ただしこの道路は無料で、制限速度は時速60qです。車で訪ねてみる人はスピード出しすぎに注意して下さい。今回のウォーキングはこの名阪国道の上野インターチェンジを間近に見ながら通過しました。
この日はずっと平坦な道を歩いていたということもあって、様々なことを考えながら歩いていました。生徒たちにはまだ言っていませんでしたが、この年に卒業生を送り出して当時勤めていた学校を退職することがこの頃すでに決まっていました。何だかこの日はそれが無性に寂しくて、卒業式にどんな言葉を話そうかとか、そんな事を頭の中で考えながらいつの間にか伊賀上野駅に到着してしまっていました。
伊賀上野駅は近鉄伊賀線とJR関西本線の併存駅です。特に関西本線は西に向かうと、三重県から直接京都府へ入ります(三重県と京都府が接しているという話については第58回の旅日記に書きました)。この路線には、梅で有名な月ヶ瀬(駅名は月ヶ瀬口)や桜で有名な笠置などの町があり、特に春頃には趣深いルートです。本当はここを歩いて京都入りすることも考えたのですが、残念ながらこの国道は歩道がないうえに交通量がものすごく(トラックも多いし)、断念せざるを得ませんでした。
それにしてもこの関西本線は素晴らしい! 「本線」という名前が付いていながら実際は素敵なローカル線です。もとは関西鉄道という私鉄だったのですが(名古屋と大阪を結ぶという意味でも、国鉄の東海道本線ともがっぷり四つに組んで競合していました)、鉄道国有法というルールに基づいて国鉄路線に変わってしまってからはまるで飼い殺しのように不便な路線のまま放って置かれているのです。沿線の街があまり大きくないという理由もありますが、しっかりした線路が走り、全ての駅が列車の行き違いが可能な設備を持ってるだけに、何だかもったいない気がします。まぁ、秘境駅好きな僕にとってはこのままでいてもらった方がありがたいですけどね。
次回はこの関西本線沿いに少しだけ東に歩いた後、山奥の信楽高原に向かって進んで行きます。