第64回 伊賀上野(三重県上野市)→信楽(滋賀県甲賀郡信楽町)
平成14年9月14日 曇り 23.6q 5時間10分
巨大タヌキの出迎え
前回、伊賀上野まで歩いたのは7月14日でした。実はこの徒歩旅「僕の細道」は「前回の旅から2ヶ月以内に次の旅を実施する」という暗黙のマイルールがありました。このルールは第2回の旅から適用され、結局第100回の旅まで継続しました(第101回目以降は諸事情によりこのルールを遵守することができなくなってしまいました。それについては第101回目の旅日記で記述します)。
…で、今回のウォーキングは9月14日。前回歩いた日からちょうど2ヶ月です。実を言うとこの一週間前、一度このコースを歩き始めたのです。しかし、その日は帽子を忘れた上にものすごい湿度で、たった20分程で衣服が汗でずぶぬれになってしまったのです。まるでプールにでも飛び込んだかのよう。経験したことがある人は分かると思いますが、衣服は濡れると非常に重くなります。まるで鎧を着て歩いているかのようで、これではとても信楽高原までたどりつけないなと判断して歩行を断念し、一週間後のこの日、再び歩きに来たのです。
そんなわけで、伊賀上野を出発してから最初の佐那具駅までは二度目のウォーキングコースとなりました。しかしこの区間の景色は(ずっと線路沿いですが)秋の散歩には非常に適したコースです。左には山が迫っていますがすぐ間の前までガケが切り立っているわけではなく、右手には伊賀の平野が広がっている。そして関西本線は架線がないため、空を見上げるとそこには青い色以外は何もなく、まさに「空の広さ」を感じられます。一週間前とはうって変わって秋晴れの涼しい気候でもあったので、いわし雲のうっすらと広がる青空を十分に堪能しました。
佐那具駅を過ぎると上野市から阿山町に入り、関西本線と別れていよいよ信楽高原に向けて山の中に入り込んでいきます。とは言っても特に急坂もなく、平野からいつの間にか山の中に吸収されてしまったかのような道でした。両側を山(森林)に囲まれたいかにも「山の中」といったルートなのですが、車の通りは意外にも多く、視界さえ遮られていなければ「市街地」と言ってもおかしくないような、僕としてはあまり好きではないタイプの道だったのが少し残念でした。
さらに阿山町から信楽町に入る桜峠では(峠と言ってもやはり坂はほとんどありません)、道路の工事中のため片側交互通行になっていました。そのせいで長時間待たされていたからなのかトラックの運転手と交通誘導員とが何やら口論をしていて、旅の雰囲気もますます興ざめしてしまいました。しかもトラックの運転手は、トラックに取り付けられているスピーカーを使って何やら「吠えて」おり、僕は見て見ぬふりをしてさっさと通り過ぎました。
信楽町に入ると信楽駅はもうすぐで、何やら高校もあるらしく(きっと信楽高校という高校なのだと思いますが、調べたわけではないので確信はありません)、学校帰りの高校生カップルが道端で話し込んでいました。…と思ったら男子の方がいきなりギターを取り出し、女子に向かって何やら(たぶん)自作のフォークソングを歌い出しました。いやぁ、何だかここだけ時間が昭和のまま止まっているのかと思いましたよ。
信楽町は信楽焼(しがらきやき)で有名な滋賀県の町です。信楽焼はもちろん「焼き物」なのですが、思い浮かべられるのは壺ではなく恐らく「タヌキ」だろうと思います。信楽高原鉄道の信楽駅の駅前通にはタヌキの置物を並べた店がずらりと並び、駅前ロータリーには4mほどのタヌキが鎮座していました(もちろんこれも作り物です)。何かと思って巨大タヌキの後ろに回ってみると、やはり想像通りそれはトイレでした。しかも「電話ボックス」付きの…。
ちなみに信楽鉄道はJR草津線の貴生川駅から信楽駅までをつなぐミニ路線です。数十年前、「信楽高原鉄道正面衝突事故」という鉄道史上最悪と言ってもいい事故が起き、多くの人が命を落としました。信楽駅構内にはその時の資料が展示してあり、二度とこのような事故が起きないようにとの願いが込められています。僕も鉄道愛好家として、こういった事故のニュースは二度と耳にしたくありません(残念ながらこのウォーキング後にも福知山線脱線事故などの列車事故は後を絶ちませんが…)。
今回歩いたコースは、この信楽高原鉄道とは逆の方向から信楽高原を上ってきたことになります。よって次回はこの鉄道路線に沿って信楽高原を下っていき、お月見の名所として知られる滋賀県の石山まで到着します。