第8回 尼子(滋賀県犬上郡甲良町)→安土(滋賀県蒲生郡安土町)

平成11年2月23日 晴れ 21.8q 5時間0分

浮気を生産!?

 前回の雪による強制終了がよほど悔しかったと見えて(他人事のような言い方ですが、自分のことです)、またまた10日も経たないうちに滋賀県へやって来ました。しかも今回はまたまた距離を伸ばすために早朝の出発。まだ暗い冬の朝6時ジャストに尼子駅を出発しました。当然といえば当然ですが、前回(9日前)に作った雪だるま(前回の旅日記参照)はすでに融けてなくなってしまっていました。まぁ残ってたら逆に怖いですけどね。

 暗い内に歩き始めるってのはいいものですね。夕方日が暮れてからとは違って、「これから明るくなってくるんだ」と思うと、暗さに対する恐怖感もありません。そしてようやく明るくなってきた頃には素直に感動できます。「太陽ばんざい!」って。その昔、清少納言さんは「春は曙」と言っていましたが、「冬こそ曙」です!

 これが気ままな旅のいい所なのですが、前回とは大きく進路を変えて旧中山道からは少し外れてみました。国道8号線を軽く横切り(早朝出発のためここでコンビニのおにぎりを摂取)、琵琶湖方面へと進んでいきました。

 宇曽川という(正直あまり知らない川です)川を渡り、今回は順調に歩を進め…と思ったら今回もとんだ強敵にぶつかりました。前回の豪雪と同じくらい、いやいやそれ以上かもと思わせるような強敵。それは…

 慣れない早朝からの運動による身体の異常、そうアノ腹痛。これは歩く時にはきつい。一説によると走る時にはこの腹痛ってやつはあまりきつくない(意識から忘れられる)らしいですが。本当ですかね…。まぁしかし実際にはこの時にこんなに余裕のある思考ができたわけでもなく、必死に公園のトイレを探しました。でもこの辺り、公園らしきものはありません。ありそうな雰囲気すらない。これはヤバイ。草むら&葉っぱか!?(汚い話で申し訳ない) 「旅の恥はかき捨て」ってことわざが頭に浮かぶ…。

 神様はいました! 道路の脇に工事現場があったのです。そこには何と仮設トイレが! まさに「地獄で仏」(今回はことわざが多いなぁ)。しかも早朝のため、まだ工事のおじさんたちもいなかったので、ゆっくり用を済ませました。もしあの日あそこで工事をしていなかったら、今頃地球の環境は今よりもう少し汚れていたかも知れません…。

 そんなこんなで見事強敵を退治した後は、再び順調に…いくはずだったのですが、今度は迷子。もちろん見つけたのではなく、僕が迷子になったのです。この辺りには愛知川(えちがわ)という川が流れています。もちろん琵琶湖に注ぎ込んでいます。我々愛知県民は「あいちがわ」と読んでしまいそうな川ですが、まぎれもなく「えちがわ」と読みます。ここら辺りは地名も愛知郡(えちぐん)愛知川町(えちがわちょう)です。この愛知川の堤防沿いがこれまた舗装もされていないスーパー悪路。そんな悪路に迷い込んでしまい、左手には愛知川、右手にはヤブという砂利道を延々と歩くことになったのでした…。河原に捨てられたゴミを不気味なカラスが突っついているし、自分は独りぼっちで周囲に人影はまったくないし。これでは誰でも不安が募りますよね。

 何とかここから脱出するヤブの小径を見付け、広々とした田んぼ道に出ることができました。しかし何だかどっと疲れた気分。さらに今回は次々と魔物が襲ってくるのです…。

 この地域は琵琶湖に注ぎ込む川の名前がそのまま町名になることが多いらしく、愛知川町の隣は能登川町(のとがわちょう)と言います。JR東海道本線にも能登川駅があり、駅のすぐそばに県立能登川高等学校があります。せっかくなのでどんな高校なのかのぞいていこうと(結局見た目は非常に平凡な高校でした)そちらへ向かう道を歩いてみたのですが…。

 道がない! もちろん崖になって道が途切れているわけではないのですが、俗にいう「行き止まり」ってヤツ。JRの線路にぶつかってそこでおしまい。今来た道を延々と(600mくらいですが)戻るか、危険を承知で線路を横断するか。2つに1つ。今ならきっと線路をまたいでしまうでしょうが、まだ旅慣れしていなかった当時は、泣く泣くもとの道へ引き返しました。往復1.2qのロス(もちろん歩行距離にはこれも含まれています)!

   

 能登川駅を過ぎると県道沿いは再び民家が見えなくなります。でも「民家がなくなる=歩道がなくなる」という法則により、歩き旅は脇道への迂回を余儀なくされます。県道脇の田んぼ道をとぼとぼと歩いていると…! 何だあれは!?

 遠くから眺めるだけではただの工場か倉庫。しかし近くからゆっくり眺めると、その壁には何とも理解不能な単語が…「浮気工場」!

 何度見直しても、やはり「浮気工場」。そうか、ここだったのか。世の中の不仲な夫婦の原因を作り出しているのは。この工場で「浮気」は生産されているのか。それにしても内部は一体どうなっているのだろうか…?

 後から調べてみると、この辺りは「浮気(ふけ)」っていう地名だったのですね。浮気地区にある工場だから「浮気工場(ふけこうじょう)」。な〜んだ。名前に関する謎は解けたものの、結局この工場で何が作られているのかは分かりませんでした(未だに不明です。誰か情報を下さい)。

 この後、安土城考古博物館を見学し、再び腹痛に襲われながらも(さっき仮設トイレで済ませたのに)、無事安土駅に到着しました。今回は大変な旅だったなぁ。皆さんも旅行中の便意には気を付けて下さい。次回はさらに琵琶湖沿いに南下して、交通の要所守山市に向かいます。

   

 ところで、安土を舞台にした「幻の舟」っていう阿刀田高の小説をご存じですか。神秘的でなかなかな小説です。この小説を読んでから、僕の中で琵琶湖は非常に神秘的な湖というイメージになっています。まぁもともと琵琶湖にはいろいろな「いわく」があるみたいですが…。ここには「幻の舟」のあらすじは書きませんが、興味のある人は是非読んでみて下さい。


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