第83回 阿倍口(静岡県静岡市)→横沢(静岡県静岡市)

平成15年10月29日 晴れ 24.6q 5時間40分

沢ガニ横断中!

 さぁ今回は気合いを入れて出発です。なぜならいよいよ人の気配のない静岡市北部の山の中に踏み入っていくことになるからです(本当の意味で「踏み入る」ことになるのは次回なのですが…)。

 阿倍口バス停からさらに北上すると、いったん寂しい様子になりますが、その後再び集落が現れます。ここはどちらかと言えば「新興住宅地」という感じで、小学校低学年くらいの子供たちが集合場所で通学時間を待っていました。余談ですが、小学校低学年の子供たちが多い地域というのは、住宅地となって10年くらいの地域だと思って間違いないというのが僕の理論です。新婚でその住宅地に引っ越してきて子供ができる、という単純な理由ですが、僕の住んでいる御油町の東山地域も僕と同年代の子供たちがたくさんいたので、間違いない考え方だと思います。

 この集落を過ぎると民家はいったん見えなくなり、左手には林、右手には安倍川というシチュエーションになります。この日は雨が上がったばかりの朝ということもあり、道路はしっかり濡れていました。そして足下には…沢ガニの行列(といっても10匹くらいでしたが)。朝の散歩か何かでしょうか。林から川に向かって帰っていくところでした。車が通らないかどうか心配だったので、無事に横断が完了するまで見届けました。このコースはこの後も何匹か散歩中の沢ガニに出くわしました。きれいな自然が残っている地域なのですね。

 いったん安倍川を渡り、幹線道路に出ます。ぽっかりと口を開けているのは北賤機(きたしずはた)トンネル。あまり長いトンネルではありませんが、この賤機山というのは「静岡県」の語源になった山です。静岡市からはだいぶ北に動いた所にある山のような気がしますが、地図上で見ると確かにこの山は静岡県の中心辺りに位置していることが分かります。

 道は時々歩道がなくなったりするのであまり歩きやすいというわけではないのですが、その度ごとに脇道に入りながら何とか油島交差点までたどり着きました。この交差点は三叉路になっていて、ここから先の大きな分岐点になる所です。直進しても左折しても山の中に向かっていくことは間違いないのですが、直進は静岡市最北端の梅ヶ島温泉に向かいます。前回の旅日記にも書きましたが、この温泉は「静岡の奥座敷」と呼ばれ、隠れた秘湯と言われています。僕は一度も行ったことはないのですが、ここから山梨県の身延方面に抜ける道もあるようで(地図上には確かにあります)、天気が良く体調もいい時に一度意を決して通り抜けてみたいコースです。

 今回のウォーキングはここから左折し、安倍川を渡って奥大井の方へ向かいました。橋の上に「ただいま路面不良」「大型車通行困難」「自動車通行注意」などの看板が並んでいましたが、「歩行者通行不能」とはなかったのでかまわず進んでいきました。まぁこんな道を歩く奴なんて最初から眼中にないのかも知れませんが…。

 橋を渡りきるとまたまた道は二手に分かれ、左側を進んでいくことになります。ちなみに右手を進んでも、口坂本温泉を経由して峠の上で合流するらしい(地図上では)のですが、こちらは完全に「自動車通行不能」と書かれていたし、バス停がこの後なくなってしまうので敬遠したのでした。

 さぁここからは一本道です。道に迷う心配はありません。山は両側からアッという間に迫ってきて、前方にも南アルプスの南端が立ちはだかり、「果たして本当にこの山々を越えられるのか?」という心配が胸に渦巻きます。このコースにはトンネルはないので、自分の足で峠まで上り、また向こう側を下って行かなくてはなりません。

 ただ安心できるのは、道は非常に細くなっても静岡駅からのバスは走っているということ。定時のバスは今回の終着地である横沢までしか走っていませんが、一日に二本だけはその先も峠を越えた井川ダム・畑薙ロッジまでバスが走っているので、民家はもうまったくなくなってしまうのですが何だか少しは安心です。少なくともバスが走れる道だけはちゃんと存在するということですから…。

 道は一本ですが、ところどころに集落はあります。バス停もほとんど通学の生徒が利用するためのようなもので、通りがかりのバス停の待合室(ほったて小屋のようなものですが)をのぞいてみましたが、待ち時間に小学生が読むための「バス停文庫」も設置されていました。民家はあるものの非常に静かで、大自然をまさに四方に感じながら思索にふけって歩いていました。

 だんだんと終着の横沢地区が近付いてきて、平坦な道路はとうとう終わってしまいました。そこに横沢バス停がポツンと置かれ、小さな公衆トイレが設置されていました。でも周囲に民家はもちろんなく、もしクマやイノシシが出てきたら僕はきっと「終わり」です。ここから先の道路は急な上り坂が始まっており、いよいよ南アルプスに踏み込んでいくということを感じさせてくれます。ちなみにほとんどのバスはここ横沢バス停が終点ですが、細い道で転回ができないので、ここからしばらくバスは回送状態で走り続け、だいぶ先のちょっと広くなった場所で向きを変えることになるそうです(バスの運転手さんからお聞きしました)。

 次回、いよいよ坂を上り始め、峠の向こうの井川に到着します。

 



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