第85回 井川(静岡県静岡市)→本川根千頭(静岡県榛原郡本川根町)

平成15年11月21日 晴れ 21.8q 4時間30分

これぞ秘境の鉄道!

 おまたせ致しました、鉄道ファンならば誰もが知っている、大井川鉄道沿線ウォーキングの始まり始まり!!

 ではまず、これから約3回かけて沿線を旅することになる大井川鉄道について、鉄道ファン以外の方のために簡単にご紹介しましょう。大井川鉄道はJR東海道本線の金谷駅を起点として、静岡県最奥の井川駅まで走っています。この路線は前半部と後半部に大きく分かれ、まず金谷〜千頭までは、大井川の雄大な景観をバックにゆったりと走る路線です(こちらを大井川鉄道本線と言います)。ここはSL機関車が引く列車が走っていることでも有名であり、路線自体も集落の間をぬって走るため、ローカル線とはいうものの「秘境駅のプロ(!?)」にとってはそれほどワクワク感があるわけではありません。ま、でももちろんそれなりに素敵な路線ではあります。

 そして後半は千頭〜井川を走る大井川鉄道井川線。これに乗るには千頭駅で必ず乗り換えが必要となり、列車もかなり小さな「大丈夫か?」と思ってしまうものになります。もともとこの路線は木材の運搬など工業目的で建設された路線なので、その沿線には集落はほとんどなく、奥泉駅・接阻峡温泉駅にほんの少しの民家が点在するくらいです。現在は水力発電のためのダムがあり、中部電力の受託により営業されているようで、赤字分は中部電力が補填しています。路線の約30%はトンネルか橋梁であり、JRではないのであまりクローズアップされませんが、飯田線にも勝るとも劣らない素晴らしい(玄人好みの)路線です。青春18切符が利用できないのが残念でなりません。

 この日は途中にある田野口(たのくち)駅に車を置き、井川駅まで再び大井川鉄道の旅を満喫しました。最後の区間(閑蔵〜井川)にある関の沢鉄橋は川底から100mの高さにある、日本で営業中の私鉄の中ではもっとも高い鉄橋になります。ご丁寧にもこの鉄橋を渡っている際には列車の速度をゆるめてゆっくり観光させてくれます。高所恐怖症の僕に対する素敵な心遣い、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

 井川駅に到着して歩き始めたのは10時50分。前回歩いてきたダム方面とは反対側に歩き始めます。実はこちらのルートの方が道は細く、峠道ではないもののバスは走っておらず、断崖にへばりつくような離合できない道になっています。当然民家はゼロ。左は足を踏み外したらそのまま谷底。後日ここを車で距離測定するのを考えると背筋が冷たくなります…。

 約8q(2時間)ほどそのような道を歩き続けると、ようやく1つ目の駅、閑蔵(かんぞう)駅に到着します。列車はもう少し直線に近い距離を走るので5qほどらしいです。そしてこの駅から先の道は快走路になります。つまりこの1駅分のみが「道が酷い」のです。そしてもう1つ付け加えるのならば、ここまでが「静岡市」になります。第82回の旅で宇津ノ谷トンネルから静岡市入りして以来の、広い広い静岡市ウォークでした。

 閑蔵駅を過ぎると道は新しいトンネルに入り、駅を1つ飛ばして接阻峡温泉駅に到達します。「1駅とばして」と書きましたが、このとばした駅は山向こうに存在する尾盛(おもり)駅です。この駅は正真正銘、「自転車でも徒歩でも、もちろん車でも到達する道が無い」駅で、全国の駅の中でもっとも乗降客数が少ない駅と言われています。秘境駅ナンバーワンと名高い飯田線の小和田(こわだ)駅も、とりあえず徒歩で到達する道はありますから、この尾盛駅こそ「本当のナンバーワン」かも知れません。でも列車本数はそこそこあるので、駅に降り立つこと自体はさほど難しくないのです。

                    

 接阻峡温泉駅からは大井川の流れを眺めながら進むことになります。人工物がいっさい見えない景色は本当に素敵です! ただ、ここから先はアップダウンが結構激しい。この日は11月下旬だというのに汗もいっぱいかき、また上り下りの連続のために足も少し傷めてしまいました。余談(というか言い訳ですが)この2日後に大型バイク免許の試験が控えていたのですが、この日に足を傷めてしまったためか(もちろんそれだけではないでしょうが)1回目の試験は不合格となってしまいました。

 左手に長島ダムが見えてくると、右手にも長島ダム駅が見えてきます。ここら辺りの路線は旧線がダムの底に沈んでしまったため、新しく付け替えられた路線です。よってものすごい急勾配になってしまい、現在では全国で唯一のアプト式区間になっています。「アプト式って?」という声が聞こえてきそうなので簡単に説明しておくと、勾配が急すぎて上ることができない(または下るのが危険である)ので、線路と車輪に歯車を付けてそれをかみ合わせながら走行する形式のことを「アプト式」と言います。この区間の両端の駅(長島ダム駅とアプトいちしろ駅)では歯車をかませた牽引車両を連結・解放させることになり、実際に列車に乗ってみるとその様子を間近で見ることもできます。また歩いていても(車で走っていても)、線路が急勾配であることは真横から実感することができます。

     

 さらに寸又峡(すまたきょう)温泉への降車駅となる奥泉駅は縄文時代を彷彿とさせるトイレがあり、駅前ロータリーには縄文時代のオブジェ(?)。ここを通り過ぎると、ほんの少しですが雨がぱらぱらとしてきました。しかし目の前には長いトンネル。ラッキー! トンネルの内部は雨は降っておらず(当たり前か!)、トンネルの向こう側へ出る頃(約15分ほどかかりました)には雨は完全に上がっていました。もしかするとトンネルの向こう側では最初から雨が降っていなかったのかも知れません。

     

 脇を通る車が停車し「乗せていってあげようか?」の声。もちろん丁寧にウォーキングの趣旨を説明してお断りいたしましたが、以前にもこんなことがあったなぁ、と思って思い出してみると、前回も今回も共通項は「静岡県」。やはり静岡県民は優しいんですねぇ(第21回の旅日記参照)。

 足を傷めながら、また初冬なのに汗をかきながら、千頭駅に到着。最初に紹介した「大井川鉄道井川線」の部分を歩ききったことになります。到着直前に自動販売機でレモン水を買って、千頭駅でゆっくり喉を潤しながらウォーキングの疲れをいやしました。千頭駅の隣には「道の駅、音戯(おとぎ)の里」が併設されているし、ここからはSLも走ります。今は珍しくなったSLの転車台も残っている(というか使われている)ので、ぜひ訪れる価値のある駅だと思います。

                    

 次回、今度は大井川鉄道本線とともに、さらに金谷に向けて南下します。

 



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