第90回 佐久米(静岡県引佐郡三ヶ日町)→豊川御油(愛知県豊川市)
平成16年2月20日 晴れ 30.5q 7時間40分
豊橋のチベット!?
2月とはいえ非常に暖かい一日。静岡中西部巡りの旅を完結すべく、佐久米を出発しました。本坂トンネルを通って豊橋市石巻から自宅へ戻って来ようという計画です。三ヶ日牛とミカンを模した駅のトイレに見送られながらの出立です。
浜名湖はいったん左の奥に去っていきます。この辺りの浜名湖はもっとも奥にあたり、奥浜名湖、あるいはその形状から猪鼻湖(いのはなこ)と呼ばれています。各観光ホテルをはじめ、隠れたレジャー施設が並んでいるのが浜名湖西岸なのです。浜名湖の中央部にある舘山寺温泉などの温泉街も素敵ですが、三ヶ日のひなびた温泉街もぜひお薦めです。日帰り温泉の入泉料も舘山寺より少し安いはずです。さらに猪鼻湖岸にある入河屋のミカン最中も絶品です! ついでに言えば、三ヶ日の中央(?)商店街の街路灯にはミカンのモニュメントが付けられており、JAの屋根にはミカンの親分が鎮座しています。
三ヶ日インターチェンジを右手に見ながら小高い丘を下っていくと、ようやく天竜浜名湖鉄道の三ヶ日駅へ到着します。かつて昭和11年、天竜浜名湖鉄道の前身である二俣西線が最初に開通したとき、この三ヶ日駅は新所原からの終着駅でした。その後、平成13年に二俣線が金指駅まで延伸すると「終着駅」ではなくなりましたが、最近でもこの三ヶ日駅はある理由で少し有名になりました。
覚えている方もいるでしょう。サザンオ−ルスターズの桑田佳祐さんが「白い恋人達」を歌うコカコーラのCMを。あの撮影が行われたホーム(ホーム上で歌っていましたね)は、ここ三ヶ日駅のものでした。ただ本来は屋根のないホームなんですが、撮影時は屋根を付けていました。
三ヶ日駅を過ぎると天竜浜名湖鉄道は大きく南へ曲がっていき、僕の進む道筋とは離れていきます。姫街道は急激に寂しくなり、峠が近づいていることを実感します。三ヶ日町役場を過ぎると目の前に山も迫ってきて、いよいよ坂を上り始めます。この坂を上りきった所が本坂峠です。
坂の途中にある公衆トイレで小用を済ませ、僕も峠越えの準備をします。この日はとにかく季節はずれに暖かく、坂を上っていると暑くなってきてコートを脱いでしまいました。この本坂峠は左手に雄大なる茶畑が広がり、ほどよい閉塞感も感じられ、僕の大好きな峠の一つです。今回のルートとは逆に豊橋方面からこの峠を通ると、直前に迫っていたものすごい閉塞感がトンネルを抜けるとパッと消えてしまう、その対照景観をじっくりと堪能できます。
トンネルの向こうは豊橋市石巻町の嵩山(すせ)。第75回(この静岡中西部巡りの旅の初回)以来長々と旅を続けてきた静岡県に別れを告げ、再び愛知県に戻ってきました。石巻町は「豊橋市のチベット」と僕が勝手に呼んでいる地域で、愛知県第二の都市である豊橋市の最北の果てになります。冬は雪深く(まぁ愛知県ですから積雪何p…というほどではありませんが)、大自然に囲まれた秘境です。民家はありますけどね。
ところで現在はこの本坂トンネルは無料化されています。かつて有料であった頃は、よくトンネルの上にある旧姫街道(旧本坂峠)を車で走っていましたが、無料になったことで最近は僕もトンネルの方を走ります。もし怖いもの好きの方がいたら、上の本坂峠へ行ってみて下さい。特に夜。さまざまな「恐怖」が待ち受けていることと思います。ただし何があっても責任はいっさいもてません。
和田辻交差点まで来るとようやく「里」を抜けた感じがして、人間臭がします。ここから少しだけ姫街道をはずれ(ここからしばらくは姫街道に歩道がなくなるのです)、脇道を通って豊川河畔の三上橋に出ます。かつて橋のたもとに「らんぷ屋」という眺めのよい喫茶店があった所です。この三上橋を渡ると、ここからが豊川市です。
この日は、ウォーキングルート沿線の豊川高校の卒業式で(近くを通るまでまったく知りませんでした)、立ち番の先生方と話を交わしながら豊川市中心部へ戻ってきました。ちょうど昼過ぎだったので、東三河運転免許センターの隣にあるカレー屋さん(今はなくなってしまっています)でカレーを食べ、再び姫街道に合流して自宅へたどり着きました。
静岡中西部巡りの旅へ出発して約1年弱。御前崎の海の景観、奥大井の山と湖の景観を堪能して、予定通り豊川へ戻ってきました。4月から公立高校へ勤めることになるので、次の旅は4月からの赴任先を聞いてから方向性を決めたいと思っていました(結局その後、赴任先は尾張になり、再び西へ向かう旅を始めることになるのですが…)。とりあえず2ヶ月ほどはゆっくりしようと決意した、今回の旅の終わりでした。