第95回 祖父江(愛知県中島郡祖父江町)→柳津(岐阜県羽島郡柳津町)

平成16年7月11日 快晴 21.2q 4時間50分

空腹は最高の調味料であり、食べ過ぎは腹痛を招く…

 さぁ今回から日本海に向けて長旅に出ます! 自分の住んでいる家(下宿)を出発するので、スタートは少し遅めの昼12時。愛知県の最西部に位置しているということもあって、少し歩けばすぐに岐阜県に入ってしまいます。 

 まずは愛知県立祖父江高校を右手に見ながら、濃尾平野の田園の中を歩いていきます。この辺りの水田には「かかし」の代わりに、「首」がぶら下がっています。しかもデパートのマネキンから取ってきたような、かなりリアルな「首」。これが風に揺られているのを見ると、昼間でも一瞬ビックリします。夜間は、はた言うべきにあらず。

 さてこのルートで岐阜県に入るには馬飼大橋(まかいおおはし)を通ります。木曽川にかかる愛知・岐阜県境の橋は数が少なく、ほとんどの橋は慢性的に渋滞しているのですが、この馬飼大橋はゴールデンウィークであってもまず渋滞しません。ある意味で「隠れたいい道」なのです。この日ももちろんまったく渋滞していませんでした。広い濃尾平野と、木曽川の水の音。そしてはるか遠くには夏の養老山脈と、岐阜の山々…。そして空は青、快晴。

 ここから岐阜県は羽島市に入ります。岐阜県に入ったこの辺りも同じく濃尾平野の一端を担っているので、相変わらずの田園風景が続きます。かつては名鉄竹鼻(たけはな)線も田園の真ん中を走っていました。竹鼻線は名鉄本線の笠松駅から分岐し、羽島市役所前駅などを通って、江吉良(えぎら)駅でさらに羽島線と分岐。竹鼻線はさらに6駅走って長良川沿いの大須へ。羽島線は1駅分のみ走って、新羽島駅へ到着します。この新羽島駅はJR新幹線の岐阜羽島駅との乗換駅になりますが、何とこのJR新幹線の岐阜羽島駅には在来線であるJR東海道本線の駅がないので、この名鉄羽島線が新幹線からの唯一の乗換線となるのです。

 現在は江吉良駅から先の竹鼻線のみ廃線となっています(廃線は平成13年)。しかしこの当時、線路はそのまま残っていて、今回はその廃線横を走る小さな県道をゆったりと歩きました。非常に細い生活道路で、とても小さい集落がポツポツと存在しているのを見ると、そこにかつて駅があったことが偲ばれます。

 真夏の真昼。太陽はやはりとても元気で、この辺りから体力も消耗してきました。羽島の中心地、正木(まさぎ)交差点で、第71回の旅で歩いた道路と直角に出会いました。あの時は西から東へ。今回は南から北へ。あの頃はまだ尾張地方に住むことになるとは夢にも思っていなくて、こんなに早くまた岐阜の地に戻ってくることになるとは思ってもいなかったなぁ。あれからまだ1年半しか経っていないとは…。

 あまりの暑さに、この交差点にある小さな喫茶店でかき氷を口にして休憩しました。空腹は最高の調味料といいますが、この日にここで食べたかき氷は最高だった。何が最高だったのかと聞かれても困りますが、氷の「かき方」なのか、シロップなのかは分かりません。とにかくいくらでも食べられそうなほどのおいしさだった!

 氷のおかげで少しだけ体力が回復し、まただんだんと夕刻にもなってきたので少し涼しくなってきました。羽島市から笠松町を少しだけかすめて柳津(やないづ)町へ。この先に名鉄竹鼻線の柳津駅があるはずなので、今回はここを終着地にしようということになりました。…がなかなか見つかりません。線路はすぐそこにあるのに、用水路で道が途中で行き止まりになってしまったりして、右往左往してしまいました。

 そういえばここの用水路の側壁にピンク色の虫がいっぱい付いていたなぁ。何だか「小さいナマコ」のような形をした生き物でしたが、動きはほとんどなかったような気がします。あの辺りには普通にいる生物なんですかね。それにしても「ピンク色」の生き物って普段はあまり目にしないですよね…。

 ここで駅探しに異変が!! 先ほどいい気になって食べたかき氷がお腹の中でうずき始めました。腹痛は高波となって襲ってきて…。まぁ結局は何とか駅を見つけました。先ほど紹介した用水路の所からはまだまだかなり距離がありました。駅のホームに設置されているトイレで何とか大人の対処ができ、ホッと一息。やはり冷たい物の食べ過ぎは、腹痛の種ですね。気を付けなくては…。

 ところで今回、名鉄竹鼻線の廃線跡を歩いている時に、円空仏の像を見かけました。円空は江戸時代の天台宗の僧侶で、一刀彫の仏像彫り師として有名です。生まれは岐阜県(羽島市という説と郡上市という説がある)で、その作品には野性的な雰囲気の彫刻の中にも微笑を含んでいるという特徴があります。これから僕の旅は第104回までかけて長い岐阜県を延々と北上していきますが、この円空仏とは幾度となく出会うことになります。今回は円空仏との初対面ということになりました。

 次回は岐阜市の中心部を通過して、関市へ向かいます。



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